54話:仲良くなろうよ。計算もあるけれど
幸いにも、イヴァンのパーティーメンバー募集は「鉱石採掘団」の名前が悪いのか応募者は0人。であれば、エピンがイヴァンと接触できる確率は上がるわけで……そのチャンスを逃さずエピンは応募の為の操作をしていく。
―応募内容送信完了。相手の確認をお待ちください―
これで、イヴァンに伝わる……のだろうが、いっそ直接交渉できればと思ってしまうのは焦り過ぎの証だろうか?
とにかく、あとはしばらく待つしかない。そう考え離れようとした矢先。
―イヴァンさんからメッセージが届いています。確認しますか?―
即座の反応に驚いたエピンだが、その内容に驚き周囲を見回す。
―今丁度近くに居ます。手を振りますので来てくれると嬉しいです―
なるほど、確かに掲示板から離れていない場所でイヴァンと同じくらいの少年が手を振っているのが分かる。重たげな鎧を着込んで、盾と金属製の棒まで背負っている。
重戦士といった風体だが、どの装備も売店で売っている者とは違う。とはいえ、そこまで性能が良いというわけではないようにも見える。むしろ初期装備と似たようなものだろうか?
だからこそ、彼がイヴァンだとエピンにもよく分かる。
「やあ、初めまして。俺はエピン。君がイヴァンですか?」
「ええ、そうです。ああ、良かった。誰も来ないかと思いましたので」
「来ないなんてことはありえませんよ。その為にあれを出品したんでしょう?」
実際、エピンもそれに釣られたのだ。だがイヴァンの表情は恥ずかしいものを見られてしまったとでも言いたげで。
「……そのつもりだったんですけどね。全く来ないから、俺の未熟さを露呈しただけかと後悔していたところです」
「俺は釣られましたよ。自信を持ってください」
皆見る目がないな、とエピンは心の中で溜息をつく。今後のことを思えばイヴァンと仲良くするのにはメリットしかない。今は分かりやすい戦闘力にしか目がいかないだろうが、いずれ武具の問題は出てくるのだ。ダンジョンで余程良いものを出す自信があるか、売店のものを何でも買えるほど稼げるとしても……だ。
「俺の応募で見ていると思いますが、俺は属性魔法を習っています。火力だけならそれなりのものだと思いますよ」
「ええ、だから会ってみたいと思いました。エピンさんさえいいなら、是非組みましょう」
「こちらこそ」
―パーティー『鉱石採掘団』に加入しました!―
なるほど、こうなるのかとエピンは感心しながら「さて」とイヴァンに微笑みかける。
貴族らしい友好的な笑みだ……イヴァンと仲良くなるためなら、エピンのほうから積極的に譲歩する用意はある。最終的な目標はイヴァンをオクロック辺境伯家に連れ帰ることなのだから。
「目標は鉱石系アイテムを手に入れる……ということでいいですか?」
「あ、その前に……普通に喋っていいですよ。なんかこう、同い年くらいだろうにソワソワするので」
「そうか? じゃあお互い気楽に行こう。で、先程の質問だけれども」
「うん、そうだよ。俺は鉱石が欲しいんだ。授業以外で作るものは自腹だからね」
売店でも買えるけど高いんだ、と言うイヴァンに、そんなものも売っていたのかとエピンは驚くが……そんなエピンにイヴァンは「まあ、そんなわけでまずは鉄を集めたいんだ」と返すのだ。
「ゴブリンが持ってる武器を溶かすのもいいんだけど、あいつら鉄鉱石もたまーにドロップするらしいんだ。それが大量に欲しくて」
「らしいって……その情報の出元は?」
「ああ、情報屋をやってる人がいるんだよ。中々目端が効くよね」
「もうそんなのが出たのか……」
確かに今後のことを考えると、そういうのが出てきてもおかしくはない。特に今は稼ぎ時だろう。
「まあ、分かった。それでお前は精錬の勉強をするってわけだ。大事だよな、そういうの」
「うん。それで良かったらなんだけど、エピン君の装備を作ってもいいかな? 今後魔法使いの装備って需要が出るだろうし、練習したいんだ。その時に好みも聞かせてもらえれば」
「実はその辺も期待してた。だから喜んで」
お互いに相手に望むものがある、メリットを期待した取引だ。こういうのは友情とは違うとエピンは分かっているし、けれどそこから始めても構わないだろう。鍛冶魔法使いイヴァンという将来の有望株と一足早く友人になるのは自分なのだから。
「ごめんね、なんか俺ばっかり君に色々させるみたいで」
「気にするなよ。でも君の才能を見抜いたのは俺が最初だってことは覚えといてくれよ」
「なんだい、それ。後が怖いなあ」
「なあに、将来うちに就職してくれる可能性を高めるためさ」
言われて、イヴァンは思わず「ははっ」と笑ってしまう。エピンの言葉があまりにも正直すぎるからだろう。自分を引き抜きに来たと、普通、初対面でこうあからさまに言うだろうか?
「そういうのはもっと仲良くなってから言うものじゃないの?」
「横からかっさらわれたらたまらないし、下心は最初に晒しておいた方が裏切られたって気分にならないだろ?」
「何それ。実体験だったりする?」
「さあね」
ふーん、と。イヴァンはエピンが誤魔化したことに気付き……それ以上は言わないようにしようと決める。人間色々あるものだ、無暗に心の傷かもしれないものに触れるべきではないと思うからだ。
「ま、いいや。それじゃ行こうかエピン。俺が前に立つよ」
「ああ、よろしくイヴァン。君の求める火力は俺が出そう」
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