49話:生徒の交流は大事
「掲示板ですな」
「掲示板? なんでだ? ああ、いや待て。ちょっと考える」
「生徒間の交流を活発化させるためですな」
「考えるって言ったじゃん! なんで言っちゃうんだよ!」
「面倒なので」
「今面倒って言ったか」
「話は早いほうが良いでしょう。夜も遅いのですし」
「そーな。その通りだ」
「分かって頂けて何より」
一通りの茶番が終わったところで、ダリアンの言う掲示板をコアは考える。
なるほど、コアも見たがダンジョン前は賑わっているように見える。しかし、教育という観点で考えたときにどうだろうか?
露店のようなものは幾つか出ているし、売買が成立していたりもする。そこは問題ないように思える、のだが。
「まあ、あんまし良くないよな。露店もいいけど、ずっとそれやってたら本末転倒だし。取引掲示板は必須か」
「あとは仲間募集もですな。足りない仲間を呼び集めるというのは効率が悪いですからな」
「うんうん、その通りだ。となると、掲示板を見て取引相手を探してっていう手順も無駄だな」
学園施設作成メニューには確かに募集掲示板はある。しかし、それでは足りない。
研究メニューを開くと「魔法掲示板。アイテムや学内通貨の預かり、取り出し、取引機能付き」と入力していく。
―学内の取引活性化に関する研究です。掲示板に触れることで疑似メニュー展開、検索、取引の代行を実施する『魔法掲示板』をデザイン、学園施設作成・拡張メニューに追加します。よろしいですか?―
「……あ、いや待った。仲間募集掲示板もいるんだった。名前を魔法式取引掲示板に変更。で、そっちは……えーっと」
追加で入力するのは「魔法式仲間募集掲示板。仲間の募集、マッチング支援」だ。この程度でいいだろうって感じである。
―学内のダンジョン実習活性化に関する研究です。掲示板に触れることで仲間の募集、応募、現在の募集側、応募側の情報などを表示できる『魔法仲間募集掲示板』をデザイン、学園施設作成・拡張メニューに追加します。よろしいですか?―
「おう、2つともやってくれ」
―デザイン実施中……100%。2つの施設を学園施設作成・拡張メニューに追加しましたー
言われてメニューを弄ればなるほど、確かに2つの掲示板が追加されている。
あとはこれを設置するだけだが、そこがまた問題だ。
「とりあえず両方ダンジョン前でいいと思うんだけどさ。他に何処に必要だ?」
こういうのは色々な場所にあっていいとコアは思うのだが、意外に教師陣の反応は「うーん」といった感じのものばかりだ。
「なんだよ。気に入らない感じか?」
「そういうわけではないが……あまり多くの場所に必要な物でもないのではないか、と思ってな」
「そうか? そうかもな……」
アベルに言われてコアは考えるが……如何に学園が広いといっても、確かにあちこちに設置するようなものではないかもしれない。
「じゃあダンジョン前にだけ設置しておくか」
「ああ、それでいいだろう」
仕組みこそ複雑だが、然程大きなものでもない。すぐに設置された2つの掲示板は明日以降、生徒たちを驚かすことだろう。
「これが更なる活性化に繋がればいいんだけどな。どう思う?」
「効果自体はかなりのものがあるだろう。取引の時間短縮については言うまでもないが、仲間募集については自分たちに足りないものをしっかりと考える助けになる。思わぬ学友を作るきっかけにもなるはずだ」
「確かにそうですな。募集掲示板があることで人気の魔法も分かるし、知らない魔法を学んでいる者を見て学習の入り口になるかもしれませんからな」
「それについてだけどさー。もっと色んな魔法を知る機会はあってもいいかもねー。学園案内だけじゃ足りなかった感あるよ。特にエダムちゃんのところか」
ウルに言われてエダムが「うっ」と唸っているが……まあ、武術に関してはコアとしても不人気っぷりは予想外であった。
やはり攻撃系の魔法は人気だというのに、皆武術に関しては家門のものをとっても大事にしているのだ。そこの拘りを崩せなかったのはコアの責任でもある。
「まー、エダムのとこはリリカが活躍するようになれば皆我も我もってなるとは思うけど……いやでもキリアンいるのになあ……」
「ま、そこは色々と解決手段を考えていくとしましょう。ちなみにアベル先生? 確かエピンとかいう子がいたでしょう。あの子は中々やるのではないですかな?」
「辺境伯家の次男だっけ。どうなんだよアベル」
「……まだまだ、だ」
「ああ言ってはおりますがな。かなり熱心に教えておりますぞ。学生は多いですが、カミルという子がライバルになって中々面白い関係を築いておりますぞ」
「マジか。そっちも見に行かないとな」
エピン・オクロック。
カミル・ネイサン。
アベルに属性魔法を教わっているこの二人もまた、リリカたちとは違うタイプの人間関係を築いているのだが……ダリアンが面白いと言うのであれば相当青春しているのだろう。
顔はしっかりと覚えているその二人のことを思いながら、コアは楽しそうに笑う。
「あー……俺、魔法学園で良かった!」
良かった、かどうかは分からないのだけれど。
少なくともコアは心の底から楽しそうで……翌日エピンたちを見に行った白猫コアは「ダリアン……あんにゃろう……」と。自分に負けず劣らず良い性格をしている校長を心の中で罵っていたのだ。
第一章はこれにて終わりです。
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