43話:猫もうっかり鳴くレベル(失態)
「お、おす! でもキアラさんが持ってた方が役に立つものなんでしょう⁉ ならキアラさんが持ってた方がいいです!」
「なんでそんなとこが頑固なのよ……いいからお聞きなさい」
「おす!」
「素直でよろしくてよ。たぶんこれは私にとって物凄く役に立つものですわ。だからこそ、その利益の分をしっかりと貴方に渡したいのですわ」
そう、キアラは決して仲間から搾取などしない。利益を得るなら相応の対価を。それがキアラの矜持だからだ。
「ですから、今回得たイエンはリリカさんに渡しますわ」
「ダメです」
「そこは『おす』って言いなさいな」
「ヤです」
ふるふると首を横に振るリリカは絶対譲らない構えで、キアラは溜息をつく。
しかしまあ、リリカとしてもそれは当然のことなのだ。キアラはすでにリリカが持っていた方が役に立つものをくれている。なら、キアラの役に立つものがあるならリリカが譲るのは当然だ。
むしろ、これからもそうであるべきだと思っているし……それをキアラに伝えるべく、リリカは立ち上がる。
「キアラさん、私はキアラさんとずーっと一緒にいたいです!」
「ニャッ」
「は~い、猫さんはこっち来ましょうねえ」
タイミング良く鳴いた……というか鳴いてしまった白猫コアをケイトがカウンターに連れて行って。キアラは軽く咳払いをして気持ちを切り替える。
「まるでプロポーズですわね」
「ち、ちちち……違いますよ!?」
「知ってますわ。パーティーを維持したいということでよろしくて?」
「よろしいです!」
「それで……それが今回の話に何の関係がありますの?」
白猫コアがカウンターの上で楽しそうに尻尾を振っているのをケイトが本当に仕方のない生き物を見る目で見ていたが……そんなかぶりつきの態勢で見ている白猫コアのことはさておいて。
「パーティー続けたら……これからもこういうこと、たくさんあると思いますけど! そうやってお互いを思いやっていけばいいと思うんです! だからお金は受け取れません!」
誠実だ。その誠実さがリリカの素直さから生まれていることは白猫コアも知っている。
リリカは本気でそう言っているし、キアラもそれを分かっている。
(それはそうと純粋過ぎて言葉選びがずっとプロポーズみたいなんだよなあ……俺は見てて楽しいし、たとえ口出しできる環境だったとしても何も言わないけど。ああ、さっきはビックリしすぎて鳴いたのは失敗だったなあ……仲良い二人の間に挟まる猫になってしまった……猫ならセーフ……ギリセーフか……? どうかな……)
そんな凄まじくどうでもいいことを考えている白猫コアはともかく、リリカのことをよく理解したキアラは小さく溜息をつく。
「……分かりましたわ。では、次からはそうしましょう?」
「おす!」
「まったく、仕方のない人ですわね……嫌いではないですけれど」
「私はキアラさんのこと、好きですよ!」
白猫コアはそこで香箱座りにそっと変わる。自分の手足を押さえていないとその場で興奮のあまり飛び上がりそうだったのだ。極上の青春を味わい過ぎている代償だ。
そわそわしている白猫コアには全く気付かないまま、キアラは仕方なさそうに髪をかきあげる。
キアラとしても、こういう感情を真正面からぶつけてくるリリカのことを嫌いなはずはない。むしろ。
「そう、ですの。まあ、私もリリカさんのことは……その、好きですけれど」
「一緒ですね! よかったです!」
キアラの手を掴んで喜ぶリリカにキアラも……つられて微笑んで。
白猫コアも青春の波動を受けてアルカイックスマイルに到っていた。
(俺……魔法学園になってよかったなあ……本当に良かった。あとこの姿になってよかった……)
「じゃあキアラさん! 私この後食堂に……あっ、先にお風呂行った方がいいですかね?」
リリカもキアラもボロボロだ。そんな姿で食堂に行くのはちょっとマナー違反かも、とリリカは思ったのだろうしキアラも同意だ。食堂には清潔な格好で行くのがマナーなのは間違いない。
「そうですわね。私も行きますわ」
「じゃあ一緒ですね!」
「そうなりますわね」
仲良く歩いていくリリカとキアラを見ながら、白猫コアは頷いていた。
友情だ、まさに友情だ。ああいうのがいっぱい出来ていけばいいと白猫コアは思っている。
とはいえ、今後を考えればやはり新しいメンバーを加えるのだろうか?
そうなるとメンバー間での複雑な青春模様が生まれるのかもしれない。
(ふふ……皆幸せになーれ)
ハッピーエンド厨と言われても白猫コアは全く構わない。この魔法学園では青春をおおいに楽しんで、美しい関係がたくさん出来ていけばいいと思うのだ。
ブックマークや評価は今後の執筆の励みになります。
まだ入れていないという方も、今回のお話を機にぜひ入れていただけましたら、とても嬉しいです。
☆☆☆☆☆をポチっと押すことで★★★★★になり評価されます!




