42話:やんごとなき立場っていうのは理知的であるべきらしい
本日3回目の更新です
そう、安定した品質というものは重要だ。キアラは王女として、それを良く知っている。
この魔法学園の売店ではサンプルと称して武具や魔法道具を飾っているが……それを同じ品質で大量に作るということは物凄く大変だ。何故なら、同じ人物が同じように作ったところで品質には差が出るものだ。
これは白猫コアが元居た世界のように高度な機械化がされていてもエラー品や思わぬ状況が発生したりすることを考えても避け得ぬことであるといっていい。
つまり、問題が発生しないというのは制作、検品の過程が完璧だという証明であり……作っている教師陣の超人っぷりを示す証拠でもあった。
他にも「もっと良いものを作れるのにわざわざ値段相応のものを作っている」というのも凄さの証明ではある。狙ったように作り分けが出来るということなのだから。
「この売店は魔法学園の驚異の技術の見本市……使わないという選択肢はありませんわ」
「ふーん……それを聞いたらみんな喜ぶと思いますよお」
「ふふふ、是非」
お互いに営業スマイルを浮かべ合う二人だが、その間にもケイトの手はイエンの分類を終えている。
「えーと、総額でイエンがこうですから、手数料がこのくらいで……二分割するんでしょうから、切りよくこんな感じでどうですかねえ?」
「端数はリリカさんの分に含めて構いませんわ。ですから……こうで」
基本的に売店での両替は金額に応じて手数料をとられるが、まあ微々たるものだ。それでも塵も積もれば山となる……キアラが妥協せずケイトと交渉していけば、次はアイテムの鑑定の番だ。
手際よくアイテムに何かの魔法をかけていくケイトを見ていれば、アイテムの鑑定魔法が存在することはキアラにもよく分かる。
(鑑定魔法……これを使えるだけで偽造問題も品質問題も完全解決しますわね。是非持ち帰りたい魔法ですけど……ああ、もう。時間が有限なのがこんなにも、もどかしいなんて!)
混ぜ物をされた麦や質の悪い鉄を使った器具、偽造硬貨に各種偽物……世にはびこる悪質な物は多い。
それが鑑定魔法1つで解決するなら、何が何でも欲しい魔法ではある。あるが……学園生活での優先度を考えたときに、今すぐキアラが習得しなければならない魔法なのか?
学ぶべき魔法が多すぎるというのは、この上なく贅沢な悩みであるのは間違いないのだけれども。
「さ、鑑定出来ましたよ~。順番に説明していきますねえ」
そもそも品質は鑑定魔法の基準は最優秀、優秀、上等、普通、下等、最悪の6つに分かれている。稀にそれ以上もそれ以下もあるが、基本的には考えなくていい。そしてキアラたちが手に入れたものはこうだ。
ゴブリンナイフが7本。品質は全部普通、特殊な能力も無し。
回復ポーションが8本。品質は7本は普通で1本は上等。
オークの丸薬が2個。品質は普通と下等。
まあ、どれも「ふーん」程度のものだ。
「一応オークの丸薬は体力がちょっと上がるのでオススメかもですねえ」
「なるほど……ではそれは残しますわ」
「は~い。で、最後にこれですけど……」
ケイトが指で指し示すのは、あのよく分からない青い羽だ。一体何に使うのか?
「ラッキーでしたねえ。これはアイスフェニックスの風切羽。つけていれば水属性に対する多少の耐性を得られますよお。寒さにも強くなれますしねえ」
「属性への耐性……!? そんなものが……」
本当に凄い話だ。水属性限定でも魔法への耐性を得られるのなら、たとえば外の世界でも吹雪を吐くようなモンスターに対する有効な防御手段になる。
「あとは~……うーん。先生たちに聞いてみると、何か面白いことが分かるかもですねえ。どうします? 売りますかあ?」
「……今の台詞を聞いて売れると思いまして?」
「ふふふ~」
売店の人ですら自分を遥かに超える実力者だ。もしかしなくても、この人に学園生活の中で師事することもあるかもしれないと……そうキアラは思う。学園案内に載っていないような学びがまだまだ溢れている可能性は……充分に、ある。
「それと回復ポーションも残しますわ。あとは全部売ります」
「は~い。お値段は……こうで」
「それでお願いしますわ」
そうして金袋とアイテムを受け取ると……両替もしたので袋が大分軽くなったが……すっかり寝ているリリカをキアラは揺すって起こす。
「うーん……お母さん、あともうちょっと……」
「私は貴方のお母さんではなくてよ」
「へっ⁉ あ、おはようございます!? え、どうして私の部屋……あっ」
「此処は売店のソファーでしてよ」
見ていた白猫コアがぶふーっと吹いていたが、近くに居た生徒が「風邪かな……猫もひくんだ……」とか言っていたのでセーフである。
「や……もう……消えたい……」
「はいはい。それよりほら、まずはリリカさんの取り分でしてよ」
リリカに金袋1つとポーション全て、丸薬の全てをキアラが渡せばリリカはキョトンとする。
「あれ? キアラさんの分は?」
「それはリリカさんが持っていた方が役に立ちますわ。それと、これですが……」
「じゃあそれはキアラさんにあげます!」
「おバカ。これから説明しますから、ちゃんと聞いて交渉を始めさせなさい!」
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