41話:こういうのが見たかったんだよ
本日2回目の更新です
ダンジョン入り口近くの日の良く当たる場所で、白猫コアはゴロゴロと機嫌よく喉を鳴らしていた。
何故なら幸せだったからだ。冒険、挑戦、ピンチからの頼れる先輩登場、そして恋愛模様に友情まで。
ああ、なんて幸せなのだろう。白猫コアとしては「皆しあわせになーれ」派なので、是非リリカにもキアラにも頑張ってほしいところではある。
(そりゃあ俺だって恋愛の類は1対1が誠実だってことくらいは知ってるさ。そうあるべきだっていう倫理観もある。でもなあ、全員に幸せになってほしいと思うとハーレムになるのは分かるしグランドエンディングの類がそういう風になるのは理解できるんだよなあ。ただ現実としてそういうのがあんまり幸せじゃないかもってだけで……)
「あの猫、ほんと可愛いよねー」
「今何考えてるのかなー。なんかキリッとして見えない?」
「確かに凛々しい子だけど……猫だしお魚のこととか?」
まさか他人の恋路について考えているとは通りすがった女子生徒たちも思わないだろうが……まあ、白猫コアは見ているのが幸せなタイプなのでそう害はない。
まあ、キリアンが白猫コアが何を考えているか聞けば「ほんと……いや、いいや。はぁ……」と諦めの溜息をつくことは確実だろうけども。
(しかしまあ、アレだなあ。あのキアラって子はモンスター情報に詳しいみたいだけど、やっぱお姫様だから情報へのアクセス手段も多彩なんだろうな。モンスター図鑑とかあるのかな?)
白猫コアが見ていた限りでは、実力のあるリリカと知識のあるキアラは良いコンビだ。今回はミミックに大苦戦してキリアンに助けてもらうことになったが、自分たちの問題点を自覚した以上はそこをどうにかすることに努力するはずだ。たぶん次回ミミックと会う時にはもっと成長した姿を見られるだろう。
(青春だなあ……お?)
白猫コアが視線を向けた先では、ちょっとボロボロのリリカとキアラの姿がある。
疲れ切っているようだが、帰り道でゴブリンに遭遇したのだ。白猫コアはそこも見ていたので知っている。キアラが杖でゴブリンを殴っていたのがとても楽しかった。
「はー……帰ってこれましたわね」
「ロッくんのことは残念でしたね……」
「ゴーレムは直せますわ。それより私も、もっと攻撃手段を考えませんと」
一番簡単なのは、やはりキアラ自身が戦闘力を高めることだ。属性魔法を覚えればそれだけで戦闘の幅が広がる。
(霊的契約であれば私の魔力が続く限り再召喚は出来ますが……やはりそれは時期尚早。アベル先生のところにお願いしに行くのが早いですわよね)
考え込むキアラだが、まあそれは後だ。リリカも疲れ切っているので、早めに解散しないといけない。
その為には売店だと、リリカの手を引っ張って歩き出す。なんだかんだとリリカはもうフラフラだ……そのくらいのサポートは自分がやるべきだと、そうキアラは思うのだ。
「あら、いらっしゃいませ~。ふふふ~、お疲れですねえ。でも帰還おめでとうございますう」
「ありがとうございます。今日は幾つか売却と、両替と……見てもらいたいアイテムがありますわ」
キアラがリリカから受け取った袋からも、自分の袋からもジャラジャラと戦利品やイエンを出していく。
ほとんどが1イエン銅貨なので、結構重たかったのだ。もっと学内通貨に細かく幅をつけてくれてもいいと思うのだけれど、そんなリリカの考えをケイトは見抜いていたし、頑張って帰ってきた学生にちょっとだけサービスをしてあげる気にもなっていた。
「ご挨拶遅れましたが、売店担当のケイトです。よろしくお願いしますねぇ」
「キアラですわ。こっちでぐてっとしてるのはリリカ」
「おす~。リリカですう」
「お疲れなら、そこのソファに寝かせてあげてください~」
「申し訳ありませんわ。ほら、リリカさん」
安全なところに来て緊張が一気に抜けたリリカが限界すぎて、キアラが頑張ってソファまで運ぶとスピー、とリリカは寝息を立てて。
「一応ですねえ、私も此処の教員でして」
「はい。その……それが何か……」
「この1イエン銅貨。たくさんあると重いし邪魔でしょう?」
「正直存在価値を疑いますわ……ですがそれでも大切な学内通貨ですし」
「そこがポイントなんですよお。人間が持てる重さは有限ですし、たくさんあると嵩張りますしねえ」
「……あっ」
「もう分かっちゃいましたあ?」
「ええ。取捨選択、あるいは荷物持ちという選択肢……ですわね? ダンジョン内での両替商だって可能性はありますわね」
此処は学園だ。学ぶだけというのもいいが実践も大切であり、わざと用意されたかのような不備もあり改善ポイントもある。白猫コアがダメなだけかもしれないが、そこを教育に使うのは教師陣の腕の見せ所。だから、そういうことが出来る余地はたくさんあるのだ。そして今、キアラもそれに気付いた。とはいえ、気付くのとやるのとは別問題だが……。
「私としては~、この売店が暇になるくらいで嬉しいですねえ」
「それはないですわ。安定品質はそれだけで武器ですもの」
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