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魔法学園ヤマダ~転生するなら魔法学園とかやりたいって言っただけなのに~  作者: 天野ハザマ


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39話:注意していても避け得ぬものはあるってこと

本日3回目の更新です

「ミミック!?」

「ゴーレム! そいつを捕まえなさい!」


 吹っ飛んだロックゴーレムが起き上がり、気持ち悪い動きで走ってくるミミックを真正面から押さえ込む。多少敏捷性に欠けようとも力強く硬いロックゴーレムだが……そのロックゴーレムがミミックの黒い腕に力負けし始めている。

 これまでの戦いで欠けた場所からわずかではあるがヒビが入り始めているのは、まさにその証だろうか?


「私も行きます!」

「ダメよ! 逃げるの!」

「え……お、おす!」


 此処で無駄に議論するようなことはない。キアラの言うことに考えがあるというのはリリカも充分に分かっていたし、今が危険な状況であるということも分かっている。

 リリカはキアラと併走し……背後の戦闘音を聞きながら地下1階の階段へと向かう。


「で、どうして逃げるんですかキアラさん!」

「ミミックは通称『戦士殺し』! 滅茶苦茶硬いって話、聞いたことありませんの!?」

「ごめんなさい、無いです!」

「構いませんわ! とにかくロックゴーレムで押さえている間に逃げ……」


 何かが砕け散るような、致命的な破砕音。ザカザカと忙しく地面を走る音。それはどんどん近くなってきていて……硬い何かが開け閉めされるガチガチという音が近くから響く。


「……!」


 ほぼ直感的にリリカは身体を回転させ、その勢いで繰り出した蹴りが飛び掛かろうと跳んできたミミックを見事に蹴り抜く。

 ……だが、オークをも蹴倒したその蹴りを受けて尚、ミミックは無傷。黒く長い手足で軽やかに着地すると、一瞬で距離を詰め鋭い爪のついた腕を振りかぶる。


(避け……違う! これ、間合いが伸びて……!)


 見切ったはずの間合い。それを含め余裕を持たせたバックステップ。だというのに、その余裕分を無意味とする、伸びるミミックの腕。それでも身体を捻って回避するリリカを、そこから変形した爪が回避したはずのリリカを襲い切り裂く。


「リリカさん! ロックゴーレム……まだ動けるなら此処に来なさい!」


 キアラがロックゴーレムを召喚しようとするが……応えない。

 知っている。これは召喚獣が死亡したときの現象だ。ロックゴーレムはすでに行動不能にされている。


(どうしよう。どうしたら……!)


 リリカはミミックをどうにかするべく拳や蹴りを繰り出してはいるが、硬すぎるミミックにダメージを与えられてはいない。しかもミミックの伸縮変形自在な腕や脚は確実にリリカにダメージを与えていて。

 どうにかしなければならない。けれど、どうにかする手がない。

 キアラの手にあるのは、初期装備の杖だけ。これで殴り掛かったところでたいして意味はない。

 逃げようにも、背後からミミックに襲われたら、確実にやられてしまう。

 嗚呼、詰みだ。ここでリリカもキアラも死んで、保健室に転送されるだろう。

 もう、それしか未来はない。判断を間違えたのだ。でも、それなら。


「それなら……それでも。此処で詰みなら、最後まで抵抗して次に繋げてみせますわ……!」


 杖を鈍器のように構え走り出そうとしたキアラの肩を、力強い腕が掴んで引き留めて。


「アイスショット」


 一人の少年が杖から放った魔法が、リリカを大上段から切り裂こうとしていたミミックを吹っ飛ばし床に縫い付ける。

 激しい抵抗で拘束を破ろうとするミミックに、氷がひび割れようとしていて。


「手を出す気はなかったんだけどな。そんな根性見せられちゃ、俺も先輩として手伝わない訳にもいかないよな」


 少年は杖を構えたままミミックへと走る。ミミックが氷の拘束を破ったのは、その僅か後で。

 鞭のようにしなり襲い来る腕を、少年は杖でいなし、弾いていく。その動きはリリカよりも鋭く、的確。そして何より、その少年をリリカもキアラも知っている。


「キリアン先輩……!」

「キリアン様……!」

「よう、後輩たち。不運だったな。ミミックは実は全部の階に出るらしいんだけどさ、相当運が悪くないと会わないらしいぜ?」


 思わぬ不運に出会うことはいつでもある。ミミックの配置は、まさにそれを体感させるためのものというわけだ。だから、これはリリカの判断ミスというよりは運が悪かっただけ。まあ、それを含めて判断ミスという者もいるかもしれないが……それは少々厳しすぎるだろう。


「ま、出会って死ぬのも含めて勉強かもしれないがな。お前らならまあ……大丈夫だろ」


 余裕。キリアンとミミックの攻防からリリカたちが分かるのは、そんな単純な事実だった。

 だって、キリアンは剣を抜いてすらいない。魔法を使ってすらいない。短い杖だけでミミックの攻撃をどうにかしてしまっているのだ。

 そしてそれは恐らく、リリカにミミックとの戦い方を教えてくれてもいるのだろう。

 死にかけていたことすら忘れて、リリカはキリアンの動きに魅入っていた。


「さあ、どうする? 俺がこいつを倒してもいいが……今のうちに逃げるのも手だ。好きな方を選んでいいぜ」

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