35話:学園ダンジョンには青春が詰まっている
本日2回目の更新です
ゴブリン。汚く、臭く、恐ろしい。人型のある程度以上の知能があり数が多いモンスターというのは、それだけで恐怖の対象になるものだ。
実際、リリカも魔法学園に来る前はゴブリンが恐ろしくて、キリアンに助けてもらって。その姿に憧れて。
(数は……3!)
思ったよりも自分が脅えていないことにリリカは驚き、けれどその理由を理解していた。
自分たちに向かって走り振りかざすのはナイフ、棍棒、粗末な槍。
怖くないのはたぶん、相手の発する威圧……こぼれ出る魔力が、弱いから。
数の有利もほぼ無いこの状況で、こんなもので。恐れていてはキリアンに憧れて此処に来た意味がない!
「せい、やあああああ!」
迎え撃つようにリリカも走る。一番危ないのはたぶん槍だと判断して、繰り出される槍を真正面から体を捻って回避する。
だが、そこで終わりではない。そのまま金属入りの靴……魔力で全身強化したリリカがそれで蹴りを繰り出せば、同質量のハンマーでぶん殴ったのとそう変わりはしない。
ボールか何かのように吹っ飛んだゴブリンをそのままに、仲間のゴブリンたちは弱そうに見えるキアラに向かって走……れない。
一体のゴブリンがリリカに回り込まれ、ガントレットをつけた拳で顔面をぶん殴られて汚い悲鳴をあげながら地面に惨い角度で倒れ込む。そして、もう一体のゴブリンは。
「ゴーレム!」
「GOOOOO!」
ロックゴーレムの、その岩そのものな身体から繰り出したパンチによって全身の骨を無惨に砕かれ絶命する。
確実に全員倒したと、リリカたちがそう確信できたのは、倒したゴブリンたちの身体が消えて……そこにイエンやアイテムが転がってからだった。
「わあ、こうなってるんですね……!」
「幻影だと知ってはいますけど……どれだけ高度な魔法が使われてるのか想像もつきませんわね」
「私、凄いってことしか分からないです!」
改めてこの魔法学園ヤマダの底知れなさにおののくキアラに言いながらリリカはイエンやアイテムを集めていたが……得られたイエンは120イエン。そしてポーション……赤いのは怪我を治すポーションの証だ。
「60イエンずつですね!」
「後で分けましょう。ゴブリン1体で40イエンだとすると先が長いですわ」
「ポーションが100イエンですもんね。3体倒さないと買えない……」
「2人で等分なんだから5体ですわよ」
「あ、そっか! 流石キアラさん!」
持って来た腰の袋にポーションとイエンをひとまず入れておいたリリカは「そういえば!」とキアラのロックゴーレムに視線を向ける。
「ロッくん、凄かったですね! こうズドーンって!」
「ロッくん……?」
「ロックゴーレムだからロッくん……あ、もう名前ありましたか!?」
「ありませんけど……まあ、いいですわ。それに凄いのはリリカさんですわ」
「えへへー」
照れるリリカだが、まだ魔法拳といえるほどのものが出来ているわけでもない。
あくまで身体強化は魔法拳の基礎であり、そこに様々な効果を纏わせてこそ魔法拳はその効果を発揮する。
エダムはまずは派手さよりも基礎を優先する方針なので、リリカの動きの矯正から始めていたので……リリカの戦い方には魔法としての派手さはない。ただ、固めた基礎から繰り出される動きと、その結果があるだけだ。だがそれはキアラにとっては充分すぎるほどに派手に見えるというだけの話だ。
とにかく、ゴブリン程度であれば問題ないことは証明された。リリカとキアラのロックゴーレムの連携も少しずつ滑らかになっていき、それからしばらくの時間がたった頃には、もうゴブリンなど最低限の声かけだけでどうにか出来るレベルになりつつあった。
……なりつつあった、のだが。そんなリリカとキアラの前には、新たな問題が発生していた。
このパワーコンビの力尽くだけではどうにもならないその問題の名前は……宝箱である。
「ねえねえキアラさん、これって開けていいんですかね?」
「ダメに決まってますでしょう? こういうのは罠があるのが定番ですのよ」
ダンジョンの宝箱。他はともかく学園ダンジョンの宝箱も魔法によるものであり、開ければその階で出るに相応しいものが出るようになっている。
しかも幻影だから一度開けたものは同じパーティは開けられないし、けれど違うパーティには未開封の宝箱として開けられるという代物だ。
けれどキアラが言ったように、場合によっては罠が仕掛けられている。これは実際のダンジョンでも同様だ……そういう訓練用でもある。
「罠……やっぱり魔法でしょうか?」
「そうなりますわね……こうなると知ってたらそういう魔法を使える人も探しましたのに」
「でもいませんよ?」
「……ですわね。となると……」
やりたくはない。ないが……それしかないとキアラには分かっている。
「……はあ。どうやら覚悟を決めるしかなさそうですわ」
ブックマークや評価は今後の執筆の励みになります。
まだ入れていないという方も、今回のお話を機にぜひ入れていただけましたら、とても嬉しいです。
☆☆☆☆☆をポチっと押すことで★★★★★になり評価されます!




