31話:召喚士からのアイラブユーってこと?
しかしまあ、教師陣の状況はどうあれ誰に師事しても立派な魔法使いになれることに変わりはない。
要は方向性の問題であるわけだが、白猫コアが歩いていく先は召喚魔法教師たるウル・ヴァーミリオンの研究室近くである。
その魔法の性質上他から隔離された場所にある召喚魔法研究室だが、まあつまるところ座学は最低限で実践を重視しているし実践するものが派手になりがちだから広いスペースが必要なのだ。
(へえ、結構な人数いるなあ)
そんな外のスペースにはそれなり以上の生徒たちが集まっており、1人の子ども……いや、そう見えるだけのウルを前に目を輝かせていた。
その中には、1人の少女がいる。キアラ・オータムレイン。
とある小国の王女であり、魔法学園という場所に強い憧れを持って来た一人だ。
昨日はどの魔法を学ぶかしっかりと考え、色々と見て回るのに時間を使っていたが……そうして今日やってきたのがこの召喚魔法の授業というわけだ。
そしてウルも当然、キアラがこの場所に増えた事には気付いている。昨日も覗きに来ていたのだから。
「さー、皆! 今日は初めて来た子の為にも召喚魔法の凄さを、ちょー分かりやすく説明するからね! 昨日来た子は復習だと思って聞いてね!」
言いながらウルは地面を靴の踵でコン、と叩く。一見すると可愛らしいだけのその動作は地面に光る魔法陣を作り出す。
「来て、フニル!」
その言葉が合図になったのだろうか、魔法陣から何かが飛び出し、大きな白狼がウルを護るようにその場に立つ。
……美しい白狼だ。一般的な狼よりも大分大きく、馬ほどはあるだろうか?
その毛並みの美しさたるや光を受けてキラキラと輝くほどで、その瞳には知性すらも感じさせる。
ましてや、その纏う魔力の大きさたるや魔獣、あるいは霊獣と呼ばれるに相応しいだろう。
「この子はフニル! ボクが契約した召喚獣だけど……召喚獣ってのは二種類いて、契約方法も二種類あるんだ! それが通常契約と霊的契約! その違いは……はい、分かる人?」
「はい! 通常契約は対価が軽く、けれど相手が存在していなければ召喚できません!」
「正解! 平たく言えば、契約した相手が殺されたり死んじゃったりしたら召喚出来ないんだね! なら霊的契約は?」
「霊的契約は相手の状態を問題としません! 契約した時点で召喚獣と魂で繋がり融合するからです!」
「正解! ただし融合する分、魂に変容があるんだね! メリットもすごーく大きいけど、自分の実力を超える召喚獣と霊的契約を結んだら肉体に変化が起こってしまうかもしれない危険な契約だよ!」
ちなみにウルは全ての召喚獣と霊的契約を結んでいる。それで全く問題ないのは、ウルが最初から「そういう風に設定されている」からなのだが……要は才能があり、デフォルトで無数の召喚獣もセットなのだ。しかしまあ、そんな事情は生徒は知らないしウルは新しい契約も幾つか結んで現在進行形で強くなり続けている最中だったりする。
「では……今日初めての君! お名前は!?」
「キアラ・オータムレインですわ。今日からの参加になってしまいましたことには深くお詫びを」
「そんなのいいよー! 聞きたい授業を聞きたいときに! それがこの魔法学園のよいとこでしょー?」
ウルはカラカラと笑うが、まあそういうことも確かに出来る。全部が半端になってしまわないかは心配だが、オールラウンダーにはなれるかもしれない。
「じゃあキアラちゃん! 今の説明を聞いて君はどう思った?」
「どちらの契約をするべきかという話でしょうか?」
「そうだよ! キアラちゃんならどっち?」
「数を厳選し霊的契約を結ぶのが正しいと思いますわ」
「ふーん、理由は? ボクは通常契約で大軍団を作るのも楽しいと思うけど? どわー、と溢れ出し敵を蹂躙する召喚獣軍団! 素敵じゃない?」
どわー、を両手を広げて表現するウルに生徒の数人が頷くが、キアラの表情は真面目そのもので。ウルは少し楽しそうに笑顔を僅かに強くする。
「確かにそうかもしれません。ですが、召喚契約は自分と共に在るパートナーを選ぶもの。であれば、王女たる私は自分の騎士を選ぶが如き責任をもって臨みたいと願うのです」
「それは通常契約でもできるよー?」
「守られるだけであるならば。しかし今のお話を伺う限りでは霊的契約はかりそめの不死を召喚獣に与えることが叶うのでしょう?」
へえ、と。ウルはそこで初めて少女ではなく教師としての顔を見せる。今の話だけでそこまで辿り着くのは流石としか言いようがない。頭の良さ……いや、召喚魔法使いとしての才覚というべきだろうか?
「その通りだよ。召喚魔法における霊的契約とはすなわち誓約。お互いを死の瞬間まで護り合おう、共に歩もう。その証として私は貴方の魂を受け入れよう……そういうモノなんだよ。だから、霊的契約が出来ないものも当然存在するんだけどね。それがどんなものか、今から説明してあげる」
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