30話:ヤマダの錬金術師
本日3回目の更新です。
まだの方は28話からどうぞ!
鍛冶魔法を習えば学内通貨も稼げるし、将来的には外で魔法鍛冶屋を開けるだろう。
今後魔法使いが増えていく世の中で、まさにこれから必要になる職業だし学園内でも稼げる。
それは文字通りに素晴らしいことだが……まあ、キリアンたちを見たり聞いたりした者には地味な印象は拭えないのは間違いない。
だが……それは錬金魔法でも同じだろうと白猫コアは思うのだ。同じく地味な印象はある。
とはいえ、だ、各種のポーションを含む薬品類や道具類は錬金魔法によって出来ている。
鍛冶魔法が戦闘を支援するのであれば、錬金魔法は生活も戦闘も支援する。
たとえば畑にまく肥料なども錬金魔法は作れるし、逆に除草剤だって作ることが出来る。
丁度白猫コアが覗いている教室でも、錬金魔法教師のタウゼントが学生たちを前に熱弁を振るっていた。
銀色の髪をオールバックに整え丸眼鏡をかけた神経質そうな印象の細身の男はしかし、その細い身体からでは信じられない程の張りのある声をしている。
「今の説明で理解できたとは思うが、錬金魔法とは可能性だ! 健康的で文化的な生活とはすなわち道具や薬によって作られる。しかし現代薬学のなんと脆弱なことか! ポーション1つで治る傷が高いからと治せず、不治の病気とされるものが多くある!」
貴族はともかく庶民の生徒には覚えがあるのだろうか……ザワつく生徒たちを前にタウゼントは教卓をバン、と強く叩く。
「君たちに万物を癒す神医たれとは言わない。それはまた別の才能であり、むしろ医者と連携して必要な薬を作る者も多いだろう。しかし! 此処で錬金魔法を学ぶのであれば、いずれ新たな魔法薬を作り出すことも、素晴らしい魔法道具を作ることも可能になるだろう! もっと近い話で言えば、ダンジョン実習に向かう生徒に君たちが薬を売りつけることだって可能だろう!」
「先生、質問です!」
「言い給え!」
「そういうのを売ることは学園内で許されているという解釈でよろしいですか!?」
「勿論だ! ただし、君たちの制作能力については資格試験で証明され、販売時には提示義務があることを覚えておくように!」
質問した生徒は横の友人らしき生徒と「すげえな」と囁き合う。
自分で使うだけではなく、それで学内通貨を稼げる。であれば、それは非常にお得なのではないか?
広がっていく希望の声にしかし、タウゼントは軽く咳払いをする。
「ただし! 当然だが君たちが売るモノを作るための材料は自分たちの才覚で入手するように! そしてこれも当然だが、君たちのライバルは売店で売っている魔法道具だ! この! 私が! 手ずから作成しているポーションや魔法道具だ!」
「ええー!?」
「先生、それはズルいです!」
「勝てないですよ、そんなの!」
「フン、私はあくまで一定の品質と一定の価格で供給している! そうだな……客観的に見て『普通』と言える程度だ! 価格に関しても少し割高とは言えるだろう……君たちが商売をする余地は多くある」
確かにそれなら安くしたり、あるいは品質を上げて……出来るかが問題だが……高くすることも可能だろう。安堵の息を吐く生徒たちに、タウゼントが浮かべるのは意地悪そうな笑みだ。
「しかーし! 私はたとえ同じポーションを1000本作ろうと3000本作ろうと品質を狙った段階で揃えることが可能だ! つまり売店の魔法道具や薬品は一定の値段で安定品質ということだ! 当然不良品などゼロ! 君たちはその安心感を超えられるかな……!?」
聞こえてくる「ぎゃー」という悲鳴は絶望か。しかしまあ、タウゼントは散々煽ってはいるけれど、多少品質が悪くても少しでも安く……とか、高くてもいいからもっと品質の良いものを……という需要は常にあるものなのだ。
(まあ、その辺も含めて将来の為の実習ってことなんだろうけどなー)
うんうん、と頷く白猫コアだが……それにしても、と首を傾げてしまう。
(錬金魔法……人、多くね?)
精霊魔法は女子が多かったが、こっちは男女の比率が丁度半々くらいといったところか。
鍛冶魔法はまだイヴァンしかいなかったというのにだ!
何故そんな差が出ているのか。鍛冶魔法になくて錬金魔法にあるもの……となるとやはり汎用性かもしれない。
魔法薬や魔法道具は高い。どういう生活をするにせよ、そういうものを作れるというのは魅力に映っているのかもしれない。実際、生徒たちは騒ぎながらも真剣に授業を聞いているように見える……タウゼントの軽妙な話し方が楽しいのかもしれないけれども。
(うーん……教師としてはタウゼントが優秀だよなー。戦闘系の講師はもっと頑張れって感じだけど)
戦闘魔法使い志望の生徒が増えないと薬も道具も売れないのだ。精霊魔法はともかく、戦闘魔法の担当であるアベルはもっと頑張れ。
白猫コアとしては、そんなアベルが聞いたら眉間にしわを寄せそうなことを考えていたのだ。
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