24話:魔法学園ヤマダは生徒の可能性を提示します
本日3回目の更新です。
まだ読んでいない方は22話からどうぞ!
けれど、誰かはいつか気付くだろう。
好きな魔法を学べる環境で、自分がどう生きていくのかを考えたとき……その全てが「戦闘魔法使いとして戦いの道を選ぶ」とはならないだろう。
何しろ、選べる道は無限にあるのだ……それを示されたとき、「自分は絶対に戦闘魔法使いになるのだ」と思えるのは、エピンのように明確な目的がある者くらいだろう。
勿論、国の為……などという方向性だけはしっかりしている者もいるだろうが。
そういう者の前にも、たとえば魔法道具の作成や錬金魔法など……数多くの選択肢がその前に立ち塞がるはずだ。
「悩むのも青春、とはいいますがな。そうして選択肢を提供するのも学園が学園たる証ではあるでしょうな」
「まー、そうかもな。画一したものを教えてるわけじゃないんだ、無限の方向性を楽しんでほしいよな」
校長室でカレーを食べるダリアン校長の手をぺしっと叩きながら白猫コアはそう頷く。
「魔法の進化っていうのはなにも戦闘魔法の進化だけじゃない。生活の隅々にまで魔法が行き渡ってこそ進化なんだからな」
「仰る通りかと。憧れは派手に、そこから現実の可能性へと繋げていく……まあ、今回の一期生……失礼、二期生だけでは不可能でしょうがな」
「何やってもお抱えになるだろうしな。ま、ゆっくりやっていこうぜ」
一応対外的には一期生はキリアンとクリスなのだ。そのせいか学園内ではあの2人を探してウロウロしている学生もいるようだが……早めに諦めて自分の道を探してほしいと白猫コアは願っている。
とにかく、魔法を使える様々な分野での人材が増えていけば、それはやがて世界中に広がっていく。魔法使いを育てる私塾なんてものが出来るようになれば、もう成功と言っていいだろう。勿論、すぐにそんな結果を求めるわけではない。
「で、どうなんだダリアン。どうせお前も学園内を見て回ったんだろう? そういう将来性のある学生はどのくらい居たんだよ?」
「初日で頭角を現すのは余程の才能ですとも。ま、長い目で……といったところですかな」
「ふーん」
まあ、誰もがリリカのように……というわけにもいかないだろうと白猫コアも思う。
あのエピンとかいう子も真面目ではあるが、実際にどうなるかはこれからの話だ。
案外、ここから調子に乗ってダメになる可能性だってある。
……とはいえ、だ。調子にのっている暇などないのがこの魔法学園ヤマダだ。
成長したければ学園内通貨を稼ぐしかないし、雑用だけで金持ちになれるほど甘くもない。
白猫コアはダリアンのデスクの上に置かれた三枚の硬貨にチラリと視線を向けると、ニヤリと笑う。
イエン。元居た世界の通貨から名前を貰った学園内通貨は金、銀、銅の三色。
それぞれ1万イエン、1000イエン、1イエンとなっているが……嗜好品や性能の低い武具や道具は安く、性能の良いものは高い。
雑用だけをこなしていては、いつまでもダンジョン探索の「基本」に必要なものしか揃わないようになっているのだ。
勿論、魔法道具制作や錬金魔法を学ぶものであれば稼ぎはそれだけではないようになるだろうが……。
「そうだよな、長い目は大事だよな。どうせ皆、学園地下ダンジョンに関わるようになるんだ。安全に厳しく、恐ろしく。そこで自分の可能性と未来ってやつをしっかり考えてもらおうぜ?」
「はっはっは、悪い顔をされておりますな。そんなにあの場所がお好きでしたか?」
「好きとか嫌いとかじゃないけどさー。魔法学園ってのはつまり青春バトルファンタジーなんだよ」
言われてダリアン校長は「ふむ……?」と首を傾げ、やがて合点がいったのか「ああ」と頷くのだ。
「戦いも青春だと言いたいのですな?」
「ある意味ではな。魔法ってのは結局戦闘技術であることは否定できないし、この世界では戦闘技術としての魔法は絶対に必要だ。社会っていうのは、いずれ残酷な現実が待ってるもんだけど……生き死には一回こっきりだ。だからダンジョン実習はそうなる前に諦めるのか、前に進むのか……広い世界に出る前にそれを知る機会になると思ってる」
半端に戦闘魔法使いになってモンスターに挑み死ぬよりは、ダンジョン実習で「俺は向いていない」と諦めるのもいい。そうして魔法道具を作る方向に進んだっていいだろう。
適正も実力もあるとして、それでも1人での限界を思い知り仲間の大切さを知ることもあるだろう。
それは間違いなく青春だ。そして、白猫コアはそうあってほしいと思うのだ。
(まあ、リリカは人気になるだろうなー。エダムも張り切ってるし。他にもどんな青春模様が見られるか……ああ、すっげえ楽しみ……)
「悪い顔ですなあ……猫なのに分かる悪い顔は相当ですぞ……?」
「何言ってんだよ。俺は生徒の青春を陰から見守る系の猫なんだからな」
「形は猫ですがコアでしょうに」
呆れたように肩をすくめるダリアン校長をそのままに、白猫コアは「次は売店見に行くか……?」などと呟いていたのだ。
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