20話:真面目は大事。ソースは俺
本日2回目の更新です!
「はい! エピン・オクロックです! イリス帝国、オクロック辺境伯家の次男です!」
「身分は要らん。それでエピン。志望動機は書いてきたんだろうな」
「はい、どうぞ!」
エピンの出してきた紙は10枚ほどで、白猫コアはちょっと感心する。
びっしりと文字が書き込まれていて、相当しっかりした考えがないとこんなには書けないだろう。
アベルがいつ彼を追い出したかは知らないが、恐らく追い出されてすぐに作業に取り掛かったのだと思われた。
「……ふむ。売店で売っている紙とは違うな。持ち込んだのか?」
「はい。座学を想定して持ち込んだのが幸いしました」
そこで白猫コアはソレに気付いて口をパカッと開ける。
(あー、そういえばそうじゃん。売店ってノートとか紙とか有料じゃん。紙が欲しけりゃ買わなきゃだけど、外の通貨は意味ないから……あー。アベル、こいつぅ……それも加味しての『真面目さ』かよ……)
持っていない生徒がアベルの要求に応えようとすれば雑用なりダンジョンなりで学内通貨を稼ぐ必要がある。つまり、アベルの授業を受けたくて必死な者ほどそうやって学内通貨を稼ごうとするだろう。
まさかいきなりダンジョンに挑むアホはいないだろうから、雑用の仕事を探して駆けまわっているだろうし、売店でそういう生徒には紹介しているはずだ。
(そう考えるとこのエピンだっけ? 見込みがあるな……ちゃんと学習の用意をしてる)
魔塔では基本実技だと聞いているが、座学もある。そうして、そこで自分なりにメモして出来たモノが魔法書とか呼ばれてたまに外に流れるらしいが……大体は分からない者が読んでも一生分からない落書きに近いものらしい。だがそれでも座学は座学だ。それを想定して紙を持ち込んだのは偉いとしか言いようがない。
チラリと白猫コアがアベルに視線を向ければ、もう全部読んだようでデスクに置いていた。
「要約すれば、家の為に魔法使いになりたいと。そういうことだな」
「はい!」
それを聞いて白猫コアも紙を覗き込む。
最初の一枚を見る限りモンスター被害が大きい、といったようなことが書いてあるようだ。
「オクロック辺境伯領は魔境に隣接した領です。毎年、冬が近くなると討伐を行わなければなりませんが、魔法使いを雇わなければ被害が大きくなるばかり。ですが魔法使いの雇用は領の財政に多大な負担をかけ続けています……貧乏辺境伯などと言われるのは構いませんが……」
グッと拳を握るエピンをそのままに、白猫コアは読んだ紙をどんどんデスクの下に落としていく。
猫の手ではそれで精一杯なのだ。
(ふむふむ、なるほどね。魔塔の魔法使いがただでさえ高い雇い料を引き上げ続けていて、近代ではもう辺境伯家が傾きかけるほどの金額を要求……魔法使いの婿入りを示唆……乗っ取りかあ? 随分な真似を……)
そのせいで姉の婚約話が危機に陥ったようだが……そこで皇帝が自国にいた招待状持ちの招待枠を一つエピンに渡した、ということらしい。
(学習の意欲はしっかりあり、その為の動機もあり、と。しかも自領のためというよりも姉の為、領民のため、かあ……うーん。オクロック辺境伯領については調査するとして……)
白猫コアがチラリと見ると、アベルは立ち上がりエピンの肩をポンと叩いていた。
了承なのかどうなのか白猫コアは見守っていたが……どうにもアベルは無表情に近いので分かりにくい。
「よろしい。君が私に師事することを認めよう」
「ありがとうございます! 俺頑張ります!」
「早速だが、君に合う魔法を見極めるとしよう。練習場に行く。ついてきなさい」
「はい!」
喜んでアベルの後をついていこうとするエピンに先んじて白猫コアは部屋をするりと出る。
アベルが認めて実技の授業を行う。
それはアベルに教わりたい生徒がいるのであれば千載一遇のチャンス……かどうかは分からないが、少なくともアベルの指導を見るチャンスでもある。たぶん、また凄い数が集まるのだろうが……。
(エピンのことはもう少し見極めておきたいしな。興味あるし)
白猫コアとしては興味の方が強い……というか、ほぼ興味だ。
見極めだとか自分を納得させることを考えてはいるが、面白そうというだけだ。
まあ、それも当然だ……白猫コアは倫理観も正義感も善性もそれなりにあるが、魔法学園である以上は生徒の成長物語を見たいのだ。この絶好のチャンスを逃すわけにはいかないとすら思っている。
「アベル先生、あの猫ついてきてるんですが……」
「気にしなくていい。ただの人懐こい猫だ」
「そ、そうですか……」
受講希望者という名のスカウトたちを追い出したアベルに連れられているエピンと、そんな二人に尻尾をピンとたててついていっている猫。
その思わず見てしまうような組み合わせは自然と人目を引いて。
「あれ? あそこにいるのって、属性魔法のアベル先生と……あの猫……?」
エダムの言うことをしっかり聞いて食堂に向かう途中だったリリカもまた、それを偶然見つけていたのだ。
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