18話:自分が杖であるならば、剣であるならば
本日3回目の更新です。
まだ読んでいない方は16話からどうぞ!
悟りを邪魔してはいけない。邪魔させてはいけない。
もしそんな者がいれば、敵だと。エダムと白猫コアは周囲を全力で警戒する。
紙屑一つとして許しはしない。幸いにも周囲に人影はないが……油断などしない。
成長しようとする生徒の安全確保は、教育者としての義務だ。
そんな二人に守られながら、リリカは自分の体外に漏れだす魔力に意思で触れる。
出ていくのを見ているだけでは霧散してしまう。こてはまだリリカ自身の魔力だ。
だから、そこで留まれと念じる。
出来るはずだ。出来なければいけない。自分が杖であるならば、剣であるならば。
(でも、どう動かすの? どう動くのが正しいの?)
エダムからの声はない。自分でどうにかするべきだということなのだろうか。
だからリリカは悩む。どうすればこの魔力を正しく留められるのか?
自分が杖であるならば、剣であるならば。
より良い杖、より良い剣の条件とは?
(強い? どういうのが強いの?)
破壊力、だろうか。リリカの脳裏にキリアンの魔法剣が浮かぶ。
けれど、アレは今は違う気がする。アレはあくまで魔法剣だ。
(そうだ、エダム先生は言ってた。簡単に、安全に……安全……そうだ。杖が壊れたらダメだよね。固いこと、壊れないこと……きっと大事なはずだよね)
だから、固くなれと。リリカは自分の魔力に命じる。
その意志のままに、体内を流れる魔力はリリカの身体をより強靭なものに。
体外に流れ出す魔力はリリカを覆い不可視の膜のようなものを作り出す。
身体を中から、外から武器に、そして防具に作り替える。
まだ初歩の初歩。エダムの拳どころかデコピン一発で壊れるような強度。けれど、それは。
「おめでとう、リリカ君。魔法武技の基本……肉体強化が出来たな」
「へ⁉」
驚きながらも肉体強化は消えてはいない。当然だ、これは新しい筋肉を作り出したのとそう変わらない。今のリリカであれば、先程までのリリカと殴り合いで完全勝利するだろう。
「えっと。あ……なんだか、今なら何でも出来そうな……」
「おっと、現実と理想が乖離してきているぞリリカ君!」
「あっ、おす!」
慌てて気を引き締め直しているリリカにエダムは頷く。この素直さであれば大丈夫そうだが……まあ、それでもしっかり見ていく必要はあるだろう。
「今日はこのくらいにしておこうか、リリカ君」
「え? でもまだこれからってところじゃないですか!」
「いいや、ここまでだ。君の身体は思ったよりも無茶をしている……まずは今の状態に一晩かけてじっくり慣れていかなければならない。これは君を指導する教師としての命令だ。いいね?」
「お、おす!」
「大変よろしい」
ここまで言えばリリカは無理はしないだろうが、ちょっとばかり厳しかったかもしれないと早くもエダムは弟子バカを発動していたが……まあ、無理もない。初日で出した結果としては上等に過ぎる。
エダムの見る限り、リリカは他の魔法を習ってもそれなりに成果を出していたはずだ。こういう生徒ばかりであれば教師冥利に尽きるというものなのだろうけど確実に違うなとエダム自身分かっているから、生徒は今はリリカ1人でいいなあ、などと思ってしまう。
まあ、一応設定上キリアンも自分の生徒ということにはなっているけども。
「寮に行きたまえ。すでに君の部屋は用意されているはずだ」
「おす! 今日はありがとうございました!」
「ああ、しっかり休むんだよ。食事もしっかりとるように……無料だからね」
「そうします!」
頭を下げ走っていき……やがて顔を真っ赤にして武術館の中に荷物を取りに行って、また丁寧に頭を下げて去っていくリリカに、エダムはにんまりと笑う。
ああ、自分は本当に良い生徒を指導できている。そんな気持ちが顔に出てしまったのだ。
「いい生徒だなー。あの子、確かキリアンが最初に招待状渡した子だよな」
「そうですな。キリアンも中々に見る目がある」
「そこは偶然じゃね? 選出基準は憧れだったろ」
「それ含めてですよ。憧れは強い動機だ……ああなりたい、という目標は成長の方向性を明確にします」
「ああ、なるほどな……こりゃ俺の見識が浅かったか」
「ははは! 俺達は教師です。その辺は役割差ですよ」
まあ、その通りかと白猫コアは納得して頷く。
コアは魔法学園ヤマダそのものではあるが、教師ではない。ただそれだけの純然たる事実だ。
「まあ、このままだとエダムだけ一子相伝のリリカ武闘伝みたいになっちまうけど……リリカもあの調子だと一歩抜きんでる感じになりそうだし、生徒がドワッと増えるかもな?」
「うーむ。教師としてはそれを喜ぶべきなんですがなあ」
「ま、いいや。思うようにやってくれ。俺は他の連中のとこを覗いてくるからさ」
言いながら白猫コアが向かったのはアベルの研究室で。
そこで見た予想外の光景に、白猫コアは思わず「はぁー?」と大きく口を開けたのだ。
ブックマークや評価は今後の執筆の励みになります。
まだ入れていないという方も、今回のお話を機にぜひ入れていただけましたら、とても嬉しいです。☆☆☆☆☆をポチっと押すことで★★★★★になり評価されます!




