12話:魔法学園ヤマダ、完成する
本日三回目の更新です。
まだ読んでいない方は10話からどうぞ!
そこから更に四日後、学園内では忙しく教師や職員たちが動き回っていた。
システムで完成させたから不備はないはずだが、コアも教師たちも自分の中に届いた「知識」でしか知らない部分も多い。
生徒をこれから迎える以上は「知らない」「驚き」などはあってはならず、ずっと此処で過ごしていたかのように振舞わなければならないのだ。
「まあ、それは分かるけどさ」
「お? なんだよキリアン。呼び戻したのが不満か?」
「いや、そこじゃない。その姿について聞いてるんだ」
どうにもキリアンは校舎の床を尻尾をピンと立てて歩く白猫に不満があるらしい。
真っ白な短毛種の白猫は金色の瞳が美しく、思わず撫でたくなるような可愛さと凛々しさが共存している。
女性陣も思わずメロメロになるほどのあざとさ……もとい可愛さを持っているのはコアがどうこうというより猫という種族の持つパワーであるのかもしれないけども。
「これか? 皆喋るなニャーって言えって言うんだよ。ひどくね?」
「猫だからニャーだろ……練習しとけよ」
「分かったニャー」
「ムカつく」
「なんで⁉」
「ていうかマジな話、普段からやっとかないとしゃべる猫が出たって噂になるからな」
「ニャー」
「すげームカつく」
「どうしろってんだよ……」
さておいて、キリアンが心配しているのはそこではない。
どれだけ姿が変わろうとコアはコアであり、この魔法学園はコアを中心として出来たものでありコアそのものとも言える代物なのだ。
変に可愛い猫などになって、何処かに連れていかれたらどうするつもりなのか?
まあ、そんなことを出来る者がいるとも思えないが全てのことに絶対はない。
「あー、問題ないよ。俺、学園からは出られないから」
だから、そんなコアの言葉にキリアンは「えっ」という驚きの声が漏れてしまう。
てっきり世界を見て回りたいのだと思っていたのに、そんな縛りがあるとは知らなかったのだ。
「お前も知ってることだけど、俺はあくまで学園のエネルギーコアだからな。心臓だけが何処かに飛び出ていくことなんて出来ないだろ? 移動可能なのは学園の範囲内だけだ」
「……そうか。悪いことを言ってしまったな」
「気にするこたぁないさ。俺はこれでいいと思ってる。それに……そろそろだしな」
魔法学園ヤマダが世界にその存在を示す日は近づいている。今やっている職員たちによる全体の確認が済めば……。
「それよりキリアン。どうなんだ?」
「何がだ? 後輩候補たちのことか?」
「ああ、大切なことだろ? ある意味で一期生たちが魔法学園の今後を決めるんだ」
「どうかな……熱意のある奴に招待状は渡したけど、一緒についてくる奴もそうとは限らないからな」
招待状はプレミアムチケット扱いだ、本人はともかく同行者の座を権力でどうにかする者だっているだろう。キリアンとしては、本人だけが来られるという形でもよかったと思っている。
「まあ、最初だからな。魔法学園がどんなものかは広めていかないといけない……本人だけだと、なんだかんだと隠蔽される恐れもある。同行者の席を奪い合うくらいで丁度いいんだよ」
「……なるほど、な」
背後から近寄ってきたウルに抱き上げられているコアに気付かずにキリアンは頷く。
確かに席を取り合うことになれば誰もが情報を広く募る。
魔法学園の招待状を持っている者を囲おうとするかもしれない。
その過程で魔法学園ヤマダの情報は何処までも広がっていくだろう……それこそ魔塔が情報封鎖しようとしてもしきれないほどに。そしてキリアンの知る限り、今はコアの思惑通りになっている。
「これからだよ、キリアン。俺達は……魔法学園ヤマダは世界で一番有名な魔法教育機関になる。たとえ後から魔塔の連中が真似しようとしても遅いと笑えるくらいにはな」
「スゥー……」
キリッとした顔でウルに猫吸いされているコアにキリアンは「そうか……」と一応頷いて。
「ウル先生? 貴方は確か寮の確認に行ったはずでは……?」
「固いこと言わないでよキリアンくーん。お話終わったならコア、持っていってもいーい?」
あくまでコアの腹から顔を離さないウルに思わずキリアンは眉間を押さえてしまう。
まさかコアが猫の姿をとることでこうなるとは思わなかった……いや、それは嘘だ。
魔法学園ヤマダのメンバーは皆コアの魂から分かたれた一族だ。
猫好きはコアの魂に刻まれたものであり、キリアンも猫好きだ。
だからまあ……迷いなく猫吸いを出来るウルがちょっと……かなり羨ましい。
羨ましい、のだが。あれは猫ではなくコアだ。猫だけど。
「吸うのはいいけどさー、キリアンの言ってた寮の確認は終わったのか?」
「えー、じゃあなんでつっかえ棒するのー」
「猫の本能」
ウルの顔に肉球をくっつけググッと腕を伸ばしているコアだが、それでもウルは肉球が嬉しい。
「終わったよー? ていうか、皆大体終わったっぽいよ。そのうち報告来るんじゃない?」
「お、そうか。ならもうアレ、やっちゃうか!」
「え? やるの? わーい!」
「ああ、本気でやるのかあれ……」
「当然だろ?」
コアの瞳がキラリと光ると、学園の存在する島……いや、もはやその全域が学園となった学園島に大きくチャイムが鳴り響く。
『あー、マイクテスマイクテス。マイクないけど。学園内の皆様にお知らせいたしまーす。これまでの準備期間、皆様大変お疲れ様でした。魔法学園ヤマダ、ただいまより浮上開始します!』
地響き、轟音。海の底に縛られた大地がその楔を解き放つ音。
今日、この日。魔法学園ヤマダは空中へとその身を浮かび上がらせたのだ……!
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