第15話 アボパパの心配の種は尽きないのだが、それぞれ育って行き術は無い
酷い火傷のアビをアマズンの老龍の秘薬で直そうと思うアバは、アビを抱えて帰ろうとすると、
「もしかしたら、まだ魔物が現れるかもしれない。僕は帰れない」
と、抵抗したアビ。何だか健気である。だが、アバは、
「こんな火傷で何ができる。言っておくが舞羅は今まで、日の国の龍神達やその子孫に守られて、ここまで育っているんだ。昨日会ったばかりのお前だけで、どうこうできると思うな。思い上がるなよ」
「そうでした。でなければ、舞羅が生きて居られた筈が無かった」
健気なアビが反省しているので、舞羅は、
「そうだ、舞羅も治療してもらったあの薬ね。すごくよく効くわよ、アビ。すっかり治ったら、舞羅の所に来てね」
「うん、治ったらすぐ来るから」
アバは苦笑いしながら、アバを運んで行った。
アボは遠くから、様子を見ていたのだが、
「舞羅はすっかりアビが気に入ったようだが、真奈さんはどう思うかな。英輔さん達から今日話を聞くだろうが、俺のマネなんぞしてもらっても、迷惑なんだが」
ため息をつくアボ。ため息をつきたくなる事はまだある。真太がちび龍のイヅを連れて、半身の魔物達を追いかけて行ったが、深追いしなければ良いのだが。
アボパパの心配は、外れてはいなかったと言えるかもしれないが、成るように成るとも言える。
真太は必死で逃げる半身の魔物三匹を追い詰め、しんがりの一匹をバッサリ切り、二匹目は刀が届きそうだと思い、後ろから御神刀で突き刺し、三匹目に取り掛かろうとすると、そこへ三匹のどれかの親と思しき魔物が現れた。そこそこ、強そうである。
本物の魔物が出てくる可能性はあるとは思っていたので、
「やっと出て来たか、ヘロヘロたちの親の一匹だな」
アバやアボが利口な奴らかも知れないと言っていたので、そういうものかと観察するが、印象としては、見た事の有る他の魔物と比べて、バランス的に頭がかなり大きな感じで、脳みそが入っているのかなと疑問はある。中身が入っていれば重いんじゃないかと言う感じの、頭でっかちの魔物だった。
真太の印象では、噂通りの風体になったつもりのようだったが、と言う事は、こいつは見かけを変えることが出来る能力が有りそうだと思った。とは言え、この風体では利口ではないと見た。
利口ではないと感じた真太であるが、ぶうおぉん攻撃が始まった。真太の持つ御神刀は人間だった前世と同様に、その攻撃の盾となってくれた。しかし、後ろのイヅは危ないので、イヅの前に立つようにした。
ところが、イヅは初めて受けるぶうおぉん攻撃に驚いたらしく、後ろから火を吹きだした。真太に当たっても、影響しない龍神の炎の筈だが、微妙に熱いのを出してきた。真太は、わあっとばかりに避けて思わず後ろを振り返った。
「あれっ、イヅ。今、何出した?」
イヅは人のままだった。と言う事は、龍に変わらずに、火を吹きだしている。おそらく恐怖で混乱しての事だろう。混乱しているのは、魔物もであり、その火を避けながら、逃げ去った。助けに来てくれたと思っていたはずの残り一匹の半身は、置いてけ堀である。そして倒れていた。半身は変な子龍の技を見て、腰を抜かしたのだろうか。真太は観察すると、そいつは体力を使い果たし、動ける状態ではなくなっていた。
真太は難なく、そいつのとどめを刺すことが出来、
「もう大丈夫だよ、イヅ。それにしても、凄い技出したな。魔物が怯えて逃げちまったよ。凄いねイヅ」
そう言って、イヅをねぎらったのだが、イヅは目を開けたまま倒れてしまった。観察すると、目を開けたまま失神している。仕方なくイヅを抱えて、御神刀二振りをズボンのベルトに挟み、帰る事にする真太である。
「重いな。割と遠くまで来てしまったし、ふう」
ふらふら家に戻っていると、アバがアビを似たように抱えて、こっちにやって来た。
真太は、
「おーいアバ、アビはどうしたの。火傷?そう言えばシンは今日、雨を降らしてくれなかったね。この前は、アビがやられたら、雨で火傷を治してくれたのに」
「そう、いつも面倒を見やしないよ。アビは子供じゃないからな。それにこの前は、まともな三匹対アビの人型だったからな。シンは人間の格好だと構う癖がある。それにしてもイヅはまた失神したのか。赤ちゃんだな。次からは連れ回すのはやめておけ。危ないぞ」
「うん、そうだね。それがね、アバ、イヅは人型のまま火を吹いたよ。驚いたな。魔物も驚いて逃げちまった。これはイヅの技かな。それとも混乱して人型のまま吹いたのかな」
「どうかな、まだ幼いから、能力は変化するかも知れない。もう少し大きくなれば、はっきりするだろう。気が付いたら、その技はやめておくように言っておけよ。俺もイダには忠告しておくが、その技で体力が落ちてしまったのだろう。子龍の失神は命取りだ。体力は逃げるのに使わないとな。さっさと家に戻れよ」
「うん、そうしたいけど、イヅ最近重くなった」
真太がひょろひょろ帰っていると、アボパパが険しい顔をして迎えに来た。
「人間界に戻れ、車で帰ろう。ママが車にもバージョンアップの結界を張ったからな」
「うん、今どの辺りかな」
「隣の県の、南のはずれってとこかな。山の頂上付近まで道が通っていたから、そこに車を置いている。さっさと帰ろう」
「へー随分手回しが良いね。速度違反で捕まらなかったの」
「あほう、乗って来るものか。俺でも車よりは自力で飛ぶ方が速い。車はここ迄飛ばしたんだ」
「パパ、その技得意だね」
「それしかないって顔だぞ」
「そんな顔なんかしていないよ。パパ、最近病み上がりで、気難しくなっているね。何とかなるって、気にしないでよ」
久しぶりにパパとドライブで、真太は機嫌よく話した。
「お前みたいに気楽になりたいよ」
真太はパパの気難しい原因は知っていた。最近、真太にもテレパシーのコツが分かって来た。イヅと一緒に居ると能力が移るのだろうか。不思議に思う。パパは、
「段々大人になって、能力が出て来ている。イヅのが移る訳じゃない。お前が持っている能力だよ」
そう言われて、そういうものかと思う真太。
それにしても、アバとアボは日の国の火口の、塞がっている地獄の出入り口を見に行ったのだが。なんと、その塞ぎ方は、人間の人柱を利用したものだった。龍神が同じようにして塞ぐ事など出来ない、おぞましい物だったのだ。アボは、
「あの頃は若くて、そう言う物に気が付かなかったのだが、夢中であれを壊してしまっていたのかと思うと、やりきれないな」
「パパ、すんだことを気にしたらダメだよ。これからの事の方が大事でしょ。あ、もっと気難しくなりそうなの?今のは聞かなかったことにしてよ。無理?」
真太はもう黙っておこうと思った。
それから、パパはアビがパパのマネをしていると思って気にしているが、真太の勘では、舞羅のママ反対すると思っていた。舞羅のママの真奈は、妹である香奈ママのアボとの結婚は、反対する立場では無かったから黙っていたのだが、事が娘となれば、そうはいかないだろう。真太の前世の記憶では、シンとの事は若い子の通る道と思っていたようだが、今回は現実的なのだから、シンの時のようにふわっとした対応はしないと感じている。
実際、アボと真太はどうこう言う立場ではない。ただ、真太の前世、翔の時の記憶から、真太はアビと結婚する舞羅を想像することは出来なかった。舞羅には人間の彼氏が出来て欲しいものだと思う。




