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僕の土魔法最強伝説!  作者: @さう
第一章 異世界と嫁
9/19

属性魔法の仕組み


 属性魔法の仕組み


ーーーーーー


 この世界の魔法には、ファイヤーボールもウォーターボールも無かった。

 魔法を飛ばす技が無かったのだ。

 火魔法は、物を加熱、発火させる。

 可燃物に火を付けてぶん投げる事は可能だが、炎そのものを飛ばす事はできなかった。

 ウォーターボールもしかり。

 水を作り出す事ができるが、それを宙に浮かせて飛ばす事はできなかった。


 火魔法と水魔法については予想が付いている。


 火魔法は、おそらく物質を振動、加熱する力だ。

 手に持った枝が発火する。

 皆、普通はろうそくの芯や松明など、発火しやすい物に火を付けたり、油を染み込ませた小枝を竈の着火に使ったりしているが、だいたい何でも加熱可能だった。

 石も温められたし、水を温める事も出来た。

 かなり時間が掛かったけど、少量の水を沸騰させる事もできた。火に鍋をかけた方が何倍も早いし、大量の水を沸騰させるとなると僕の火魔法では熱の対流で冷える方が早いんじゃないだろうか。

 多分石も溶かせるとは思うのだが、水を沸騰させるのに掛かった時間を考えると挑戦する気が起きない。


 水魔法は特定の物質を収束させる力なんじゃないだろうかと思う。

 空気中の水分を集めて水にしている。

 根拠はある。

 水を作ると僅かに空気が動くのだ。

 手のひらから水滴が生まれていくのは、なんか手汗みたいでちょっと気持ち悪いけど、生きていくには必須の能力だ。

 試しに、他の物質も集めてみた。

 酸素だ。

 火を点けたろうそくの周りに酸素を集めてみたら、火勢が僅かに強くなった。僕の水魔法ではこの程度だ。

 イメージで酸素を選別できるとは驚いたが、水分だってイメージで集めているわけだから同じか。


 風魔法は今のところ分からない。

 気圧の変化か何かだと思うが僕の起こせるそよ風では確かめるのが難しい。

 例えば手を前に出して、その手から風魔法を発動させると、背後から手の方向へ風が吹く。

 手の周りか、手の向こう、イメージした場所の気圧が下がっているとしたらどうだろうか。

 火魔法が物質の振動加熱なら、風魔法は狙った場所の分子運動を止めて温度を下げているんじゃないだろうか。その気圧差で風が吹いているのでは?

 だが、風が吹くと普通に涼しいので、空間の気温が下がっているかどうかがよくわからなかった。


 さて、問題の土魔法だが、どうもこれは物質の形状を変化させる力だと分かった。

 土だけでなく鉱物や無機物の変化が可能だった。

 でも、木や生物は変化させられなかった。

 村長から「生き物は魔力を呼吸して体内に循環させているから無理なんじゃないかの?」という薄らぼんやりした答えを頂いた。

 呼吸する物は変化させられないという事なんだろうか? しかし、切った木は呼吸していないはずだ。 違いが分からない。というか、魔力自体なんだか分からない。


ーーーーーー


「ミチザネ何書いてるのー?」

「うわ、何これ。模様?」

「綺麗な模様だねー」

 というわけで、木板に魔法についてのメモを書いている僕のところに子供達が寄ってきた。

「これは僕の生まれた国の言葉だよ」

「文字なのー?」

「変な形がいっぱいあるねー」

「ミチザネは変だねー」

 最近、僕のところに来る子供の数が増えた。村のほとんどの子供がいるんじゃないだろうか。

 理由はわからんでもない。

 ゴブリン騒動からこっち、大人たちの雰囲気が少し変わったのを子供達は敏感に感じているのだろう。

 危機を感じた生命の本能なのか、夜は僕の家に預けられる子供が増え、夜中にあちらこちらでアレの声が聞こえる。

 親の方から僕のところの行くよう子供にすすめている家庭も有るようだ。弓矢の練習にな。

 そして、

「うおおお! ウサギだ!」

「次、次はヤマネコつくってー」

 僕は土魔法の練習も兼ねて、子供達が持ってきた石ころでフィギュアを作っていた。

 穂先やナイフの様な単純な形状よりも時間がかかるけど、やって出来ないことはない。

 毛並みを再現とまではいかないが、大まかな形で動物フィギュアを整形して、子供達に渡す。

「わたしイノシシー! 美味しそうなやつ!」

「じゃあおれもー! 美味しそうなヤマネコ!」

 隣では矢がビュンビュン飛んでいる。

 ラーテも混じって、弓の使い方を子供達に教えている。


 ・


 夕食後、月明かりの中、家の前で鏃を作る。

 素材は石だ。川原で拾ってきた丸みを帯びた石。ずっしりと身が詰まって重く、威力は十分。

 なめらかな石に反射した月の光がうねうねと流れ、形状が変化していく。

 指程度の丸い棒になり、端の片方がするすると尖っていく。逆の端は穴を作り、鉛筆キャップの様な形状になった。

 石をこんな風に加工できるなんて便利な力だと思う。

 これを棒の先にはめて膠で固定する。

 練習用のやつは鏃は付いていないが、生物用なら必要だ。

 鉄の方が頑丈だけど、石の鏃が体内で砕けてくれれば矢が抜けても破片は残ってそのうち内臓が傷付いたり出血で死んでくれるかもしれない。

 単純な形なので槍の穂先にも転用できる。


 黙々と作業を続けていると、いつの間にか隣にラーテが居た。

 うちの嫁は気配消すのが得意だな。

「子供達はもう眠った?」

「ああ。皆眠った」

「今日は何家族分だっけ?」

「4家族だ」

「一年後には村の人口一気に増えてるだろうね」

「そうだな」

 ぽつりぽつりと会話をしながら、もうしばらく作業を続けた。

 魔力が減ったかな、という感覚があってから、2人で家に戻って眠った。


 あの夜から一週間。

 あれ以来、たびたび罠に掛かるゴブリンはいるが、数を揃えて襲って来る事は無かった。

 表面上は皆安心しているが、村には不安の陰が広がっている。

 また来るかもしれないと皆警戒している。

 大人たちの空気を感じて、子供達も少し静かになってしまった。

 ゴブリンショックとでも言えばいいだろうか。

 

 なんとかしないと。


 ・

 

 午前中の仕事が終わり、鏃製作に精を出していると、冒険者達が村に来た。

 あの女冒険者3人組だ。

「おーい、……えっと、おーい」

 こいつら、僕の名前憶えてないな。


 冒険者達が来たのは、ギルド、そして国から依頼が出たからだという。

「ゴブリンが増えた理由が分かったぜ」

 ゴブリン達は本来街の北側に生息している。

 村の北側には、たまにはぐれの個体がいるだけで、群れや巣は無い。

 ギルドは原因究明のため、斥候が得意な冒険者達を集めて森の中へ送り込んだ。彼らは全員無事で帰ってきた。全員無事で怪我も無かったが、持ち帰った調査報告を聞いてギルド職員は頭を抱えてしまった。

 本来ゴブリンの生息域だった場所では他の複数種のモンスターが増えていたらしい。本来もっと北側に生息していたはずのモンスター達だった。ゴブリン達はこのモンスター達の南下にともなって住む場所を押し出され、森から溢れた。

 さらに北に進むと、山がある。2日の距離だそうだ。僕だと一週間ぐらいかかりそうだけど。

 その山に近付くにつれ、モンスターも動物も減っていき、山の麓には動物の気配が無くなっていた。

 冒険者達は山に登った。

 山とは言っても、それほど標高が高いわけでもない。村からも見えるが、日本にいた時に富士山を遠くから見た記憶と照らし合わせると、5分の1も無い気がする。

 冒険者達は、山を登り、その頂上付近でモンスター大移動の原因を発見した。

 その山に、ドラゴンがいたらしい。


「ドラゴンっているんですね」

「まぁ珍しいけどな。アタシもあまり見たことないし」

「私は…… 3度見た…… 怖かった」

「ドラゴンには魔法があまり効かないんですよ」

 あの火炎瓶の事か?

「ドラゴンか。西のドラゴンは儂も見たことがないわい。東のドラゴンとは違うという話じゃが。儂も見に行ってみようかの」

 クレイジーな村長さんだった。流石、あての無い旅のリーダーをやってただけの事はある。

 村長宅で冒険者3人と僕と村長、5人で膝を付きあわせての話し合いだ。

「まったく何でこんな辺境にドラゴンなんか…… いや、辺境だからか」

「ドラゴンって飛ぶやつですか?」

「ああ。残念ながら北の山で発見されたのは飛ぶやつだ」

 飛ばないやつもいるって事か。

 飛ばれると僕の土魔法はほぼ無力なんじゃないのか?

 地面に落ちてる石を拾ってぶん投げれば…… 土魔法じゃなくて投擲だな。

「それで、国と冒険者ギルドの共同依頼が出た。ドラゴン討伐依頼だ」

「討伐できるんですか?」

「できますよ。ドラゴンなんかには負けませんよ」

 ドラゴンには魔法が効き難いと言ったルルが一番ドヤ顔ってどうなんだろうか。

「で、お前を誘いに来たわけだ」

「え? ドラゴンは空飛ぶんでしょ? 僕の土魔法じゃ無理ですよ」

「なにもドラゴン倒す必要はねぇよ。それは腕利きの連中にまかせておけばいい」

「私達は…… 露払い」

 ドラゴン討伐を確実に実行するためにはかなりの数の冒険者を纏めて送り込む必要がある。

 だが、山までの道々にもモンスターはいる。

 いちいち森のモンスターにかまっていたら時間がかかるし体力も消耗する。

 かと言って、放置していて背後を突かれるのもまずい。

 そんなわけで、山へそのまま進む本隊とは別に、進みながら左右に散っていき、他のモンスターを抑える役が要る。

 女冒険者達はそっちで稼ぐつもりだ。

 そして、ゴブリンの群れを撃退した時の僕の土魔法を便利だと思ってくれて、こうして僕をスカウトに来たらしい。

 僕の土魔法に目をつけるとは賢いやつらだ。

「集団戦で転ばせるのは結構便利だなと気付いたよ」

「的が転んで体勢を立て直す…… 隙だらけ…… 止まっている間は当て放題」

「発動も早いですしね。えっと…… アナタの土魔法は凄く便利だと思います。」

 やっぱ名前憶えてねぇなこいつら。

 村人達は土魔法を穴掘り魔法だと思っているが、女冒険者達は地面に出っ張りを作って転けさせる魔法だと思っているみたいだ。

 そんなにインパクト強いのか?

「本当は今回も他に組んでいけそうな冒険者が居なかっただけなんじゃないですか?」

 女冒険者達からギクリという音が聞こえた。


 ・


 女冒険者は、基本的に女冒険者としかパーティを組まない。

 やはり女性であるがゆえの問題が色々ある。

 女性冒険者が1人で男性冒険者パーティと一緒に森に入って、何故か女性冒険者だけ行方不明になってしまうという事件もたまにあるそうだ。こわい。

 尻を触られたり叩かれたりするのは日常茶飯事で、女だからという理由で馬鹿にされる事もあるらしい。

「まぁ、こっちじゃあんまりないけどね」

 この辺りはこの国の東辺境で、そもそも女冒険者が少なく、腕っ節がある女冒険者しかいないため、あまりそういった問題は起こらないらしいが、王都や大きな街だと女冒険者の数も多くなり男冒険者と女冒険者の小競り合いも珍しくないのだと言う。


 ・


 お金になるというので承諾した。

 金はともかく、金属製品が欲しい。くず鉄でもいいから、買ったり貰ったりして、土魔法で色々とやってみたい。


 僕が鏃を作っていると、ルルがくいついてきた。

「何してるんですか? これ粘土ですか? 石に見えるんですが」

「その通り。石だよ。土魔法はこんな事もできるんだよ」

 どうだすげぇだろ。褒めてくれてもいいんだぜ?

 だが、ルルの反応はもっと上だった。

 ハトが豆鉄砲食らった顔っていうのはこういう顔なんだろう。

 可愛くてよかったな。可愛いアホに見える。

「つ…… つっ土魔法?」

 やっと言葉が出てきたと思ったらこんな感じだ。

「だって、え? 土魔法ですか? 土魔法って土を操るんじゃないんですか?」

 ふふふ、そう思うだろう?

 ならば語ってあげよう! 『ぼくがかんがえたまほうのしくみ』をな!


 ・


 ルルはやはり魔導士だけあって、僕の話を興味深く、少し質問もしながら熱心に聞いていた。


「なるほど…… 土魔法ってそういう魔法だったんですね…… 火魔法や水魔法の話も驚きました。水以外を集めようと思った事が無かったですし、空気に色んなものが溶けているとは」

「風魔法はまだわからないんだけどね」

「風魔法ならエルフに聞いてみるといいんじゃないですか? エルフは風魔法が得意ですし」

「え? エルフいるの?」

「は? いえ、この辺では見た事ありませんけど。エルフの里は色んなところにありますし……」

 エルフいたのか。

 森の民か? ダークエルフもいたりするのか? 褐色ボンテージの……

 これは是非とも接触しないといけないな。


 ・


 それはキャリーカートだった。

 石を運ぶのがめんどくさくて自分で作った。

 箱を作ってそれに取っ手と車輪を付けるだけの簡単なお仕事だと思ったが、箱までは普通に作れたし、取っ手も簡単にできたけど、車輪で苦戦した。

 スポークがある普通の車輪を作ろうとしたのだが難しくて無理だった。土魔法で石を整形すれば簡単にできるのだが、重いし割れる。結局、板を歯車の様に加工した車輪を付けて、一応完成した。

 草地なので、歯車スパイクが思ったより効果を発揮していた。ただの車輪でも試したが、草の上だと滑ったりして重くなった。スパイクタイヤなんてどれだけ効果あるんだ? と地球では思っていたけど、本当に効果あったんだな。

 整地されたアスファルトの道路も無いし、むしろスパイク付きの方が使える。

 そのキャリーカートの作り置き分を、ルルが持って行った。

 代金はもらっていない。タダであげたわけじゃない。

「すごいです! 私の道具重くていつも大変だったんです! これなら楽に運べます! 欲しいです! 買います! お幾らですか?」

 グイグイくるルルに聞かれて、

「代金って言っても…… ここじゃお金なんて使わないんだよな。街での買い出しも村で作ったものを売ってその場でお金作ってそれで買い物してるし。だからお金は別に……」

「いいんですか? ありがとうございます!」

 という感じで勝手に持って行った。

 物々交換で、というつもりだったんだけど。

 結構試行錯誤を繰り返して頑張って作った感があるキャリーカートが、あっさり持ち逃げされた。

 なかなか切ないものがある。


 まぁ、これから一緒に森で戦うわけだから、パーティの体力を温存できるならいいかな。と、自分を納得させた。


 ・


 村長に装備を頂いた。

 革の胸当て、篭手に脛当て。革の靴。村の男たちが山に入る時に装備しているものだ。

 そして、毛皮の服。フードも付いている。この毛の色と革の色には見覚えがある。

「村長…… これ……」

「うむ。ゴブリンの毛皮じゃ。随分殺したからな。そのまま焼くのは勿体無いと思っての。村の男達の分も作っとる。お前さんのは試しに作ってみたやつじゃ。帰ってきたら感想を聞かせてくれ」

 ゴブリンの毛や皮は迷彩になる。それに、あの程度の体の大きさにしては意外に皮が分厚くて防御力も高そうだった。

「酒の方はラーテが見てますんで。僕が帰ってくる前にできてたら飲んじゃっていいですからね」

「うむ。いのちだいじにな」

 村長に頭を下げる。

「じゃあ、ラーテ、いってきます」

「うん……」

 ラーテは何か言いたそうに口を開いたが、結局言葉が出ずに口を閉じた。

 少しもじもじしている。やっぱりうちの嫁は可愛いぜ


 女冒険者3人とともに、街へ向かった。

 ゴブリンはもうこりごりだけど、他のモンスターはどんな感じだろうか。


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