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僕の土魔法最強伝説!  作者: @さう
第一章 異世界と嫁
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ゴブリン殲滅戦

 ゴブリン殲滅戦


 気の持ちようは大事だなと思った。

「ははははは! 入れ食いだぜー!」

 と、エイダが歓喜の叫びを上げている。

 それにつられて村人達の悲壮感が薄らいでいた。

 たった1人、こういう人間がいるだけでも場の雰囲気が違う。

 昨夜はあんなに疲れきっていたのに。

「うおらっ! ゴブリンのくせに生意気なんだよ!」

「ゴブリンなんぞにヤギの1頭だってやるもんか!」

 ちらほらと村人の楽しそうな声も聞こえてくる。

 空気感って大事だったんだな。


 ごう、と前方が赤く燃え上がり、火が辺りを照らした。

 緑色の蠢くもの達が炎に照らされて夜の闇から浮かび上がる。

 今夜は1つ月。あまり明るくは無い。

 だが、ゴブリンの群れの中からいくつも炎が上がっていて、視界は十分確保されている。

 火魔法の攻撃だった。

 背後の櫓から、

「ふぁいあいんざぼーーー!」

 というルル掛け声がかかり、びゅんっと火魔法爆弾が飛んでいき、ゴブリンが燃え上がる。

 翻訳魔法が良い仕事をしている。


 そう、火魔法の主な攻撃方法は焼夷弾の投擲だった。

 ガンナー系かと思いきや、まさかのタンク系だった。


 火魔法使いは、風魔法と並んで戦闘に使える魔法として知られている。

 特に火魔法は戦闘向けらしい。

 火を作り出して相手にぶつけるファイヤーボールはこの世界に存在しなかった。

 だが、物を加熱するという特性を使った方法で攻撃する。

 遠距離で使われるのは油を仕込んだ焼夷弾の投擲だ。

 強い火魔法使いは、手に触れている可燃性の物質ならすぐに火を付ける事ができる。

 爆弾の導火線に点火する手間を取らず、袋から取り出してそのまま投げるといつの間にか火が付いている。陶器製の本体が割れて、中の油が広がって引火する。相手はもえる。

 遠距離では火魔法の効率も落ちてしまうが、物陰に隠れて遠くの建物の一部を加熱し続けて放火するという方法もある。

 魔法を使っていると魔力の流れから魔導士に見つかるため、あまり使われない方法らしいが。

 火魔法使いは近接戦闘が特に得意だった。

 距離が近ければ近いほど強く早く加熱する事ができる。

 鎧を着た相手などオーブンの中の七面鳥だ。

 すぐに温度は上がらない。だが、時間が経つほど鎧や金属が加熱され、限界になる。

 鎧を脱ごうとすればその隙にやられてしまう。

 逃げても追い掛けられたらそのまま丸焼きだ。逆に逃げる火魔導士を追いかけても丸焼きになってしまう。

 手に持った武器もやがて持っていられなくなる。

 燃えやすい物なんて持っていたらさらに危ない。

 早めに仕留めなければならないが、攻撃する気も無く避けられ続けてはどうにもならない。

 微妙な距離を取られ、付かず離れずもめている内に体が焼けて死んでしまう。

 すぐに殺せる様な魔法ではないが、苦しみぬいて死ぬため、強い火魔法を使う魔導士は恐れられていた。

 その戦闘方法により、火魔法が得意な魔導士は、すべからく体術に長けている。そのせいで軽装備で火魔導士に立ち向かうのも骨が折れるし、かと言って重装備でも相性が悪い。かなり厄介な相手と言えた。

 攻撃を避けるのも、長引かせるのも、追い掛けるのも、焼夷弾を投擲するのにも、体力が要る。

 火魔導士はまさかの肉体派だった。

 ルルもあの小柄な体でかなりの技術と体力があるらしい。


 実際、焼夷弾を投擲する姿は堂に入っている。飛距離も狙いもかなり正確だ。村の柵から一定以上の距離を取った場所が燃え上がっているし、既に密集しているゴブリン達の、さらに数が集まっているところを狙って投げている様だ。

 心強い後方支援。


 僕達の槍衾のさらに向こう、ゴブリン達からすれば後方で炎が燃え上がる。さらにその後方には、女達が放った矢が降り注ぐ。

 炎の向こうでよく見えないが、かなりの数の矢が絶え間なく飛び込んでいる。

 ラーテの方を見ると、3本纏めて矢を放っていた。

 力が分散されるはずなのだが、それでも十分炎の向こうに届いていた。それほど距離があるわけじゃないし、櫓の上からではあるが、やっぱりうちの嫁は腕力がある。

 弓士サースラは、とにかく連射が早い。

 接近戦でも平気なんじゃないだろうか。

 他の女達が1回射つ間に4回以上射っている。あれ魔法なんじゃあるまいな。

 矢は僕が大量に使ったものを使ってもらっている。

 狩りに使っている鏃付きの矢と合わせてかなりの数だ。

 だが、あの調子だとすぐに撃ち尽くすんじゃないだろうか。


 今夜のゴブリンの襲撃は、昨夜と違って笑いの混じった空気で迎え撃った。

 疲労はあるが、心労は少ない。

 僕の隣では、

「やべぇぜこれは! どんだけ稼がせてくれるんだ!」

 と、エイダが歓喜の叫びを上げていた。


 しばらくすると、ルルの焼夷弾が切れた。

 今度は油を塗った木材に火を点けながら投擲し始めた。

 焼夷弾ほどの威力は無いが、それでもゴブリンに毛に引火している。

 木材の形は全部違っているはずなのに、全てルルの狙い通りに飛んでいる様だ。コントロールすげぇ。

 僕も槍を使うのをやめ、防衛線を走り回って土魔法を使っていた。

 適当にゴブリンの群れの中に小さなアースウォールと作ると、それに引っ掛かったゴブリンが周りを巻き込んで転けてくれる。勢いも削がれるし、矢の餌食だ。

 柵の周りにゴブリンの死体が溜まってきたら、その真下に穴を掘って沈めた。死体を足がかりに柵を飛び越えられてはかなわない。

 魔力切れは全く心配無かったが、走り回って体力を使った。


 さらに時間が経つと、矢が尽きてしまった。もっと用意しておくべきだった。


 だが、球も矢も尽きてしばらくすると、ゴブリン達の勢いが無くなった。

 やがてゴブリンを突き刺す掛け声がまばらになり、夜が明けた。


 ・


 辺り一面ゴブリンの死体だらけだった。

 逃げたゴブリンは確認できた分で10体程度。後は全て屍を晒している。

 毒とか持っていないと良いけど。土が汚染されそう。

 村の北側には、ゴブリンの死体の海。

 柵の周りには殺到したゴブリンが山になっている。

 僕が槍を使っていたのは最初の内だけで、後は土魔法で柵の向こうの地面を掘り返していた。

 ゴブリンが殺到しすぎて死体で山ができてしまっていたのだ。乗り越えられるとマズイので、適度に沈めていた。土魔法便利。

 穴の中には幾重にも折り重なったゴブリンの死体。

 それでも間に合わずに柵の前には腰の高さほどまでゴブリンの死体が積み重なっていた。

 もうすこし増えていたら乗り越えられていたかもしれない。結構危なかった。

 だが、村人達に以前の様な悲壮感は無い。

 今日は大戦果が目の前にあるのだ。

「500はいるんじゃねぇのか? いや、もっとか?」

「すげぇな。ところでゴブリンの肉って食えるのか?」

 そんなわけで、既にゴブリンから肉をはぎとって焼いている連中までいる。

 そして、既に焼き終え、食べて、吐いている連中もいる。不味いんだなゴブリン。

 エイダは嬉々としてゴブリンの耳を切り取って回っている。

 男達が引きずってきて集めた死体を、さらに耳を切り分けて選別している。

 それには村の女達も参加していた。

「報酬? 別にいらんわい。どうしてもというなら、ゴブリンの耳を売った金で酒樽1つでもくれれば十分じゃ」

 という村長の言葉に、エイダは歓喜の叫びを上げた。

 よく分からないが、これだけの数のゴブリンともなれば、樽1つの酒を買ってもかなり余るらしい。

 まぁ、この村ではお金を使わないし、女冒険者達に助けられた部分は大きい。特に心労を軽減してくれた。十分なお礼をしなければ。


「ああ~…… これもダメですう」

 と、ルルの悲しそうな声が聞こえてくる。

 火魔法攻撃の特性上、敵が燃えてしまう。

 結構な数の丸焼け死体があった。多くは耳を切り取れる程度に弾力が残っていたが、何割かは炭化してボロボロに崩れてしまっていた。

 火魔導士の痛いところだ。

 村人総出でゴブリンの処理をした。午前中の仕事は休みだ。

 炭化している死体は放置した。

 比較的損傷が少ない死体は皮を剥がれていた。

 売れるのか?


 村のずっと東側、川から離れた森の際にゴブリンの死体は集められた。

 僕はそこに時間をかけて巨大な穴を掘った。

 広さもだが、特に深さにこだわった。

 木くずなどと一緒にゴブリンの死体を穴の中に放り込む。

 そして火をつけた。

 酸欠にならないように横穴も掘ってある。土魔法便利。

 今回の事でだいぶ土魔法のコントロール力が付いた様で、細長い穴というものも掘れる様になった。穴掘りの能力だけ上がっている気もする。

 この穴はこのまま一晩放置して、明日僕が埋める予定だ。

 深い穴から噴き上がった炎が、夕暮れの空をさらに赤く染める。

 村人総出の仕事は丸一日かかった。


 その夜も見張りを立てたが、ゴブリンが襲ってくる事はなかった。

 静かな夜だった。

 2つ月の柔らかい光が、村を暖かく照らしていた。 


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