モンスター
モンスター
「ああすうぅぉおおおおおるっ!」
僕の掛け声とともに、前方から突進してきたモンスターの群れが一斉にコケた。シュールだ。
後ろからびゅんびゅん矢が飛んで、立ち上がる途中のモンスター3体を仕留めた。
なんとか立ち上がって再び突進してきた個体をエイダが槍で突く。槍を引き抜く時に少し捻って内臓を引き裂く動作も忘れない。
火魔導士ルルはお休みだ。
僕は、ドキドキしながらモンスターが頭から矢を生やしたり腹を槍で突き抜かれて死んでいくのを見守っている。接近されたら僕は終わりだ。
5体のモンスターが地に倒れた。
2体は即死だった様だが、まだ生きているのが3体。ひゅうひゅうと弱い呼吸で腕や足で地面を?いている。
そのモンスター達にエイダがトドメを刺していく。
討伐部位を剥ぎ取り、矢を回収する。
その後休憩。
「いやー、いいねこの槍! すげぇいい!」
と満面の笑みのエイダ。
「この矢も…… いいね」
ふひひと笑うサースラ。
どちらも僕が土魔法で整形したものだった。
実は、この槍は槍ではないし、矢も矢じゃなかった。
槍の方は4つの平たい刃が並んでいる。
これは干草を持ち上げたりするときに使うフォークだった。
街に辿り着いて、装備をちゃんと手入れしておこうという事になった。それで武器屋に向かったのだが、そこにフォークが置いてあった。
全長160cm程。ただの棒に鉄の穂先。
ゴブリンの襲撃で精神的に耐えられなくなった農民数家族が農業を辞めたらしい。それで、生活の足しにしようと農機具を売りに来たんだとか。
鉄製品なら溶かして再利用できるという事で、武器屋のおっさんも買ったそうだ。
それを僕達が購入した。
武器屋のおっさんには「冒険者辞めて農業でも始めるのか?」と聞かれたが、特技アルカイックスマイルで返事をしておいた。
針の部分を平たく整形して、刃も付けた。土魔法で刃物を整形しても研ぎがイマイチな出来になる。要練習だ。
ともかく、そうやって作った四叉槍をエイダが使っている。
村の防衛に参加したとき、槍の楽しさに目覚めたらしい。敵の攻撃範囲外からザクザク刺すのが楽しいとかなんとか。こわい。
この四叉槍、特に理由も無く作ったが、殺傷力が凄まじかった。
モンスターに刺して抜くと、傷口からドバっと血が溢れてくる。
血液を大量に失ったら体が動かなくなる。胴体に突き刺して、捻って抜くと、内臓をズタズタに裂き、大量出血する。それだけで相手をほとんど行動不能してしまう。もちろんエイダの技術あっての事だろうが。
ニタニタしながら四叉槍を突き刺すエイダがこわい。
オークでさえこのザマだった。
「どうした? オークにはまだ慣れないか?」
僕の視線の先には、血だまりに倒れているオークの死体がある。
横向きに倒れ、左右の牙が討伐部位として抜かれている。
パーティの装備確認の時にヤットコがあって何に使うのかと思ったが、こういう討伐部位を採る時に使うのか。
牙が抜かれたオークは、なんというか、オークっぽく無かった。
・
数えてはいないけど、見た感じ300人を超える程の冒険者や傭兵、志願兵、衛兵が集まった。
王都へ支援要請に向かった早馬はすれ違う冒険者達皆に声を掛けて回ったらしく、街の外からの増援も多い。ちょうど出発時に城郭前で合流した冒険者達もいた。
時間がなかった。ドラゴンに奇襲されたら街が危ない。王都や周辺の街に応援を要請してあるが、まず先行して道々のモンスターを排除し、ドラゴンに威力偵察、いけそうなら討伐。無理そうなら注意を引きつけて援軍が来るまで耐える。というのが、作戦だ。
ちゃんとした列にはなっていないが、だいたい横5人程。パーティ一組が横に広がって並んでいる。
森に入りながら、列前方のパーティが右に、次のパーティは左に、そしてまた右に、と左右に離れていく。
僕たちは集合が遅かったせいで後の方に並んだ。
その時は先頭集団が危険だと思っていたので気分は少し楽だった。
しかし、森に入ってから前方のパーティがバラけていくのを見て、自分達が結構奥まで進む事を知った。
どうりで一番後ろの方の冒険者達は装備が良いと思った。
女冒険者達以外と一緒に行動するのは初めてだったが、時たま女性蔑視のヤジが飛んできた。
僕のパーティは皆気にしてなかったが、僕は結構凹んだ。悪口よくない。それに、これから命懸けの戦いになるかもしれないのに、身内に暴言を吐く奴がいるというのは不安になる。
野営も挟んで、2日目の午前中に、僕たちは左側、つまり西側に入った。
南に行けば先に別れた冒険者達がいるはずだが、気配は無い。後ろを振り返っても、すでに冒険者の集団は見えなくなっている。森の中に僕達のパーティだけ取り残されたんじゃないかと錯覚してしまう。怖い。
一歩一歩進むたびに、恐怖が溜まっていく。
「よし、この辺でモンスターを足止めするぞ」
というエイダの声に、少しほっとした。
移動はせず、決めた場所で襲ってくるモンスターを撃退する。
待ち受ける形なので、土魔法は役に立った。
モンスターの死体もそのままだ。
血のニオイで逃げてくれるなら良し、逆に襲ってきても良し。
周辺には討伐部位を剥ぎ取られたモンスターの死体がいくつも転がっていた。
死体の前に居るというのは気分が悪くなるし、何か病気があったりしても困るので、襲ってくるモンスターを殺しながら、周辺をフラフラと移動している。
すぐ向こうの草むらに死体が転がっている光景というのはなんだか落ち着かない。起き上がって襲いかかってくるんじゃないかと思ってしまう。
・
サースラが矢をぶんぶん振り回して、矢に溜まった血を抜いていた。
飛び散った血か草木にぱたぱたと跡を付ける。辺りに鉄のニオイが広がった。
これも僕が作った。
モンスターを食い止めるのが目的と聞いたので、ストッピングパワーの強い矢があると便利だと思った。
普通に大口径化とか、鏑矢を2つ組み合わせて正面から見たら十字になる様にしたら傷を大きくできるかなと思った。
でもそれだと上手く刺さるか分からないと言われた。連続して放つ事もあるかもしれない。その際には強く引けないから、重い矢は勢いが付かず、刺さらないかもしれない。当たる範囲が広い矢の場合も威力が分散されて刺さらないかもしれない。
軽量化で思いついたのが穴を開けるという発想だった。
最初は穴あき包丁みたいな鏃を作ったのだが、はっとして、それを巻いた。
斜めに切った中空の鉄パイプに幾つも穴が開いている形状だ。
直径は矢柄にちょうどハメられるぐらい。細いが、これぐらいなら僕の土魔法で作れる。
矢柄を切り詰め、矢の全長の半分ほどをこのパイプ鏃にした。
体の大きなモンスターにこの矢が刺さると、側面の穴からピューピュー血液が吹き出すのだ。かなり恐ろしい光景だった。
重さも結構あるが、サースラが言うには「いい感じ……」らしい。
土魔法が凄く役に立っている。
武器作りだったり、モンスターを転ばせたり、完全に支援系だけど、でも、役に立っているならいいじゃない。土魔法でばったばったとモンスターを倒せてなくてもいいじゃない。
「ミチ、土魔法で竈たのむ」
エイダの言葉に、
「はい」
と応えて、アースウォールを『コ』の字型に作った。
なお、女冒険者のメンバー達は、僕の名前の前半分だけ憶えてくれた。『ザネ』は言い難いのか憶えられないのか。
ともかく、ご覧の通り土魔法は役に立ちますよ。
竈つくるために石を拾い集める必要も穴を掘る必要も無いんですから。
エイダがロングソードでその辺の木の細枝をバキバキと叩き切っている。
本日の初ロングソード攻撃だ。
ルルがキャリーカートから鍋を取り出した。
森の中でもキャリーカートは使えた。
木の根に引っかかりそうなところは持ち上げたりしたが、概ね良好だ。スパイクが長めなのも良かったみたいだ。あれ細かいスパイクとか作れなかったから大雑把に作ったら長くなったってだけなんだけど。
キャリーカートの箱の中には、ルルの道具と、鍋や小道具、討伐部位を入れた袋なんかも入っている。いざというときはこの袋だけ持って逃げると決めてある。
せっかく道具を運ぶ苦労が緩和されたのに、便利だからと運ぶ荷物が増やされてしまった。それで重くなってしまい、僕とルルが交代しながら運んできた。本末転倒気味だ。
木製シャフトで長時間移動は辛かった。摩擦が凄い。村で少し使うだけではあまり感じなかった事だ。
ちくしょう、報酬でいっぱい鉄をゲットするんだ。駆動部分を鉄製にしてベアリングも作ってやる!
エイダは近くのモンスターの死体の所まで行って、一匹持ち上げた。
少し離れた場所で解体をすませ、肉になったモンスターを持って戻ってくる。
あの狐っぽいモンスターは食えるんだな。勉強になる。
「いや、モンスターはだいたい食えるよ? でもニオイがな」
と、エイダの視線がオークの死体へ流れる。
オークの肉って臭いんだな。
「それに毒がある奴もいるし、内臓がよくわからんのもいる。食える奴がいるならそれを食った方がいい。解体が難しいのに手を出すぐらいなら、動物を狩った方がいい」
エイダはちょいちょい冒険者知識を僕に教えてくれる。先輩として、ほぼ新人の僕に気を使ってくれているんだろう。見た目は凄い怖いけど、優しい。
・
森に入って初めて遭遇したのはオークだった。
暗い緑色をした肌で、毛は無い。2mを超える巨体で、口からはイノシシの様な牙が生えている。ゴブリンも牙が生えていたので、モンスターは牙が口からはみ出しているのがデフォなのか? と思った。
体型は人間と同じ感じで二足歩行。しかし、太い。
たっぷり乗った脂肪の下には高密度の筋肉が詰まっているのが分かる。上腕や腿、ふくらはぎなどは、筋肉の盛り上がりがはっきりわかる。
お相撲さんの体みたいだ。お相撲さんに申し訳ないが。
武装しているという事もなく、丸裸だった。武器は手の爪らしい。黒くて太い爪が、丸々しい5本の指から生えている。
左右の下犬歯が口の端から突き出でいて、鼻は豚っぽい。なんとなくハダカデバネズミを思い出した。
襲いかかってきた1体のオークは、腕を振り回してエイダを攻撃する。
エイダは難なく避けたが、傍の木に当たったそれは、バリバリと音を立てて木片を飛び散らせた。一発でも食らったら危ない。
僕は冷や汗が噴き出るのを感じた。
だが、エイダが四叉槍でサクリと胴体を刺し、捻りつつ抜くと、オークの腹が裂け、黒緑の皮膚からどす黒い血がドバっとあふれた。
オークはすぐに体の自由を失い、よろよろと5歩進んで地面に倒れた。
自分の作った武器の威力に僕自身が一番びびった。
「気持ち悪い色してますね」
オークの死体を見ながら言う僕に、
「この肌の色が厄介なんですよ。黒くて緑っぽい色なので、夜の森の中では見つけにくいんです」
と、ルルが説明してくれた。ちゃんと意味があったらしい。
「まぁ、体も大きいので、気を付けていれば見つけられますけどね」
そうだ。
ここで一夜明かさなければならないのだ。
冒険者達と移動している時にも一度野営したが、あの時は100人規模で強さ自慢の男たちが周りにいたのだ。
今は僕達だけしかいない。
一気に不安になってきた。
・
今まで遭遇したモンスターは、ゴブリン、オーク、狐っぽい何か、狼っぽい何か、アリクイっぽい何か、の5種類だ。
ゴブリンやオークはモンスターのイメージそのものだったけど、四足歩行の獣型の方が多かった。
特に狐っぽい何かと狼っぽい何かは怖かった。
素早く、少し思慮深い動きをしていた。
エイダの防衛線をかいぐぐって、今にも僕の喉元に食らいついてきそうだった。実際、何度か目が合った。
どうやら後方の僕やルルが支援系だと気付いていた様だ。こちらから見てエイダの陰に入る様に動いていたからだ。
狐や狼がゴブリンやオークより頭がいいというのはなんだか不思議な感じがしたけど、二足歩行だからって頭がいいとは限らないって事か。
狐型の方はフォックスグレイ。
グレイという名前だけど、毛並みは灰色より黒に近い。耳や四本の足の先は深い青緑色だった。
配色が狐と同じだったら、ただの狐にしか見えない体型をしているが、色が違うだけでまったく狐に見えない。
森に住んでいるモンスターは、とにかく緑や黒い色をしているらしい。同じ種類のモンスターでも砂漠や草原では違う色をしているという。名前も少し違うそうだ。
そういえばゲームでも色違いのモンスターとかいたな。あれは強くなったりしていたけど。
狼型もそうだった。こっちも姿形は狼と変わらないが、全身真っ黒で毛が短かった。体表面の質感は黒豹や雌ライオンの様な感じだった。
狼型はウルフアンダー。
翻訳能力がどう訳したのか良くわからないが、こいつらは近付いて足元から飛び上がる様に攻撃してくるからこの名前らしい。名前で攻撃方法をすぐに思い出せる様にしている。割りと考えて付けられた名前だった。
狐型と狼型は2~3頭で襲ってきたけど、僕の土魔法に転ばされたり気を取られたりして、エイダの四叉槍とサースラのパイプ矢でザクザク仕留められた。
エイダは一度剣を抜きそうになったのだが、そのまま四叉槍を使った。
剣を使うのめんどくさくなったんだろうか。
アリクイの方はマロンダ。
見た瞬間動物園のアリクイを思い出した。全体の大きさとシルエットがアリクイと同じだったからだ。
アリクイよりも頭部が太い。だが、長い舌をちょろちょろ出すのは同じ。アリクイの様な長い爪は無く、体毛は黒。背中の毛が太く硬くなっていてヤマアラシの針の様だった。
僕達に襲いかかってきたものの、動きが鈍かった。他が早すぎるだけなのかもしれないが、どすどすと四本足で迫ってきたマロンダをエイダが四叉槍で難なく仕留めた。アースウォールの必要も無かった。エイダがちょっとつまらなさそうな顔をしていた。楽に仕留められるならそれでいいじゃん。
他にも種類はいるみたいだが、今日はこれだけだ。
「エイダさん、モンスターと獣の違いってなんですか?」
「知らん」
簡潔な答えだった。
モンスターと呼ばれているものがモンスターという事らしい。
「ただ、モンスターは人間を見ると襲いかかって来るのが多い。普通の獣は人間を避ける。襲いかかってくるのは縄張りを侵されたり腹が減った大型のやつらだけだ。でも、モンスターはどんなに弱いやつでも人間に襲い掛かってくる。人間を目の敵にしているみたいだ」
木々の隙間から見える空が僅かに赤みかかっている。
「野営の準備をするぞ」
エイダの声がかかった。
・
パチパチと小枝の爆ぜる音がする。
小さな火は、僕が土魔法で作った穴の中で燃えている。空気取り込み用の横穴まで付けた自信作だ。
野生動物は火を怖がらない。むしろ哺乳類は火に寄ってきてしまう。アフリカで焚き火をするとゾウが消しに来るらしい。こわい。
とはいえ、獣は夜目が利く。聴覚に嗅覚だって鋭い。明るくないと僕たちはそれに対応できない。
煙のニオイも少しは戦力の足しになる。
この世界の夜は明るい。新月の時はともかく、平均して2個の月が夜空に浮いているのだ。
しかし、森の中では木々に阻まれて月明かりもそれほど役には立たない。
遠くから見えない程度で、かつ、周りは見える程度に調整した穴の中の火。それでもそれを見ないようにして、ぼんやり森の闇を見つめて目を慣らしている。
最初は怖かったのだが、何事も慣れる。
既に夜半を回っていた。
僕とルルは先に睡眠をとらせてもらった。というか、僕達2人だけでは突然襲撃を受けても対応仕切れないから役立たずということで体力を温存させてもらっている感じだ。
ルルはさっきまで起きていたけどまた眠った。
現在は、僕とエイダが起きている。
2人で大丈夫かと不安だが、ルルはともかくサースラは何かあればすぐに起きるだろうという事だ。
「僕ら何日ぐらいここに居ればいいんですかね」
「もうそろそろ援軍が来る頃だろう。あと2~3日もすれば抑え役も増えて楽になるはずだ。後は、ドラゴンを倒すまでだが、今回のドラゴンは飛べるみたいだからな。散々苦労した挙句に逃げられてお終いって事もあるかもな」
「働き損ですね」
「こっちに損は無い。モンスターの討伐報酬は出るんだ。ドラゴンが逃げて損するのは山へ行った本隊の方さ」
エイダがニヤリと笑った。視線は討伐部位が詰まった袋に注がれている。
しゅうしゅうと呼吸音が聞こえた。
「エイダさん」
「来てるな」
闇の中にチラチラと光るものがある。目だ。
「暗いが転ばせられるか?」
「やってみます」
囲まれている様だったら2人を起こすが、敵の目の数は4つ。目玉が2つで1セットの魔物なら、2体だ。
その眼光がぬるりと動いて、近付いて来た。
遅い。
エイダさんが、ふん、っと鼻息をふいて、モンスターの方へ歩いていった。
続いて、ザクザクとテンポ良い音が聞こえてくる。
帰ってきたエイダさんの四叉槍は血で濡れていた。小さな焚き火に照らし出されたそれはどす黒くて不気味だった。
「マロンダだった。舌は明るくなってからだな」
マロンダの討伐部位はあの長い舌だった。討伐部位でもあるし、素材でもあるらしい。
それから夜が明けるまでに2度の襲撃があった。
僕が眠っている間にも3回あった。内1回はウルフアンダーで、僕も起こされて一緒に戦った。
昼間と遭遇率があんまり変わらない。
最初は怖かった野営も、朝になってみると、何だこんなものかと思えた。
いや、僕だけだったら今頃モンスターの腹の中だけどね。
「あと2、3日はこんな感じかぁ」
朝日に背伸びしながら呟く僕に、
「後から増援が来るはずですから、日に日に楽になっていきますよ」
と、ルルが笑顔で応えた。スッキリした顔をしている。彼女は一番睡眠をとっていた。
ルルの『魔法』は使うと減るので、温存する方向だ。
すっ、とサースラが山の方を指差した。
3人ともその指先に従って山を見た。
細い煙が上がっている。
「ドラゴンに接触したか」
そういえばドラゴンは火を吹くと聞いていた。
「あの煙はドラゴンブレスですか?」
「どうかな。ドラゴンの火はあまり煙が出ない」
そしてエイダは黙った。
ならば、燃えて煙を出す何かがあるのだ。
木が燃えているだけならいいが、もしかして他のものが……
一番後ろの方にいた冒険者達は凄い装備だった。某狩りゲームのキャラクターみたいな格好だった。
強そうだった。
彼らは今戦っているのだろうか。
説明された作戦では、ドラゴンに接触する本隊は、倒せそうなら倒すとして、無理そうなら小突いて隠れるを繰り返してドラゴンを山から逃がさない様にするのが仕事だったはずだ。
倒そうとして返り討ちにあったのか、隠れたところを見つかって攻撃されたのか。
「落ち着けミチ、顔が青いぞ。煙で分かるのは何か燃えてるって事だけだ。連中がドラゴンを倒したって可能性もある」
そうか。あの煙は戦闘の名残ってだけで、もうドラゴンを倒してしまった可能性だってあるのか。
「どっちにしても、アタシ達の仕事は作戦終了の合図があるまでここでモンスターを食い止めておく事だ」
「……そうですね」
気を取り直して、水を飲む。
・
僕の予想は外れる事が多い。
だけど、悪い予想だけはだいたい当たるのだ。




