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端っこに住むチビ魔女さん。  作者: 夜凪
森の民の村

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5

ふと気づいたら、年が明けて1カ月以上経過しててビックリです。初動が遅れましたが、今年もぼちぼち頑張って進めようと思います。よろしくお願いします。

「すごい。思ったよりたくさんの本があるのね」

 ミーシャは、お気に入りの絵本を紹介してくれる子供達にひとしきり付き合った後、一人で図書室の中を散策していた。


 流石にレッドフォード王国で通っていた王立図書館とは比べるべくもないが、小さな山村の持ち物としては破格の質と量である。

 もっとも、どうしても植物や病に関する本の比率が高いのは気のせいではないだろう。


 子供の読み物や娯楽小説などは手前の方に集中しておかれていて、部屋の奥へ進めば進むほど専門的な本が増えていく。

 中には古い呪いや怪しげな民間療法をまとめた本などもあり、ミーシャは気になる本を手にとってはパラパラとめくって戻すことを繰り返していた。


「あれ?こっちにも扉があるわ?」

 部屋の一番奥に、半分開いた扉があった。

 なにげなく覗いてみると、そこにも本棚が並んでいるのが見える。

 並んでいる本は、紙を紐でまとめているようで厚さもまちまちだった。


「そっちには、子供は入ってはいけないのよ」

 こちら側の本とは違う雰囲気に、ミーシャが何となく気後れして中に入れずに立ち尽くしていると、背後から声が飛んできた。

 振り返るとフワフワと波打つ髪を背中に流したミーシャと同じ年ごろの少女が、手に紙の束を持って立っている。


「あなたは……昨日の……」

そこにいたのは、昨夜歓迎の宴に行く途中で声をかけてきた少女だった。


「そっちにあるのは、この村で行われた研究の結果をまとめたものよ。勝手に持ち出したら叱られてしまうわ」

 キリッとした大きなアーモンド形の瞳は気位の高い猫のようで、ツンッとした表情が良く似合っていた。


 少し声が硬いためきつく聞こえるけれど、言っていることはただの親切な忠告だ。

 ミーシャは目をパチリと瞬いた後、微笑みを浮かべ会釈をした。


「そうなのね。教えてくれてありがとう。私はミーシャ。あなたは確かナディアちゃん……だよね?」

 無邪気にお礼を言われて、一瞬ひるんだ様に息を飲んだ後、ナディアはコクリと頷いた。


「そう。あなた13歳でしょう?年が一つしか違わないんだし、ナディアって呼び捨てでいいわよ」

「じゃあ、私の事もミーシャって呼んで!仲良くしてくれるとうれしいな」

 呼び捨てを許されて喜ぶミーシャに、ナディアも少しだけ口元をほころばせる。


 昨夜、ナディアは久しぶりにあこがれの人に会えた興奮で、少々暴走してしまった自覚があった。

 さらに勢いのままあの場から駆け出してしまったせいで今さら会場にも戻れず、ごちそうを食べそびれたとションボリ眠りについていたのだ。


(だいたいなによ?認めないって!どの立ち位置から話してるのよ私!?)

 おまけに一晩経って冷静になれば、自分の言動があまりにも無茶苦茶だったことに思い至り、ベッドの上で頭を抱える羽目になった。


 部屋で悶々としていたら、暇なら借りていた資料を戻してきてと家を追い出された先で、ミーシャと再会したのだった。

 いい機会だと、気まずさを押し殺し勇気を出して声をかけてみると、予想以上に感じのいい反応が返ってきて、ナディアはほっと胸を撫で下ろす。


「……いいわよ。いろいろ教えてあげる」

それでも、どこか上から口調になってしまうのは、実は緊張している時のナディアの癖だった。


 いじ悪く聞こえるから直せとさんざん周囲からも注意されているのだが、癖というのはすぐ直るものでもない。

 その上、周囲には幼い頃からの顔なじみばかりのため、多少やらかしたとしても「しょうがないなぁ」という空気があり、ナディアもこれまで深刻に感じていなかった。


(昨日も変な事言って後悔してたのに、なんで!)

 結果、今もツルリと口からこぼれ落ちた言葉に内心焦ることになる。


「うん。私、この村の事なんにも知らないから助かるわ。よろしくね」

 しかし、焦るナディアを気にすることなく、ミーシャはその言葉を素直に喜んだ。


(なんか、すごくいい子じゃない?!)

 言葉の裏を読むことのない無邪気なミーシャに、ナディアの肩から力がストンと抜ける。

 そして、ジワリと喜びが湧き上がってきた。


 村の子供の数はそれほど多くないため、年が近い相手は貴重なのだ。

 そして、不幸なことにナディアの世代は男の子は居るけれど女の子がいなくて、一番近い年の子でも四歳下だった。


 この年齢の四歳差は大きい。

 しかも、下の世代には同じ年頃の女の子が複数いるのだ。

 結果、年下に囲まれ過ごす事が増えたナディアの言動が、上から目線になってしまってもしょうがない事だったのかもしれない。


 けれど、これからはミーシャがいる。

 女の子同士の話しもできるし、もっと仲良くなればお泊り会だってできるかもしれないと想像してナディアの心は浮き立つ。


(しかも、ミーシャの家って事はライン様もいるわけで!)

 憧れの人のプライベートが垣間見れるかもしれない現実に思い至り、ナディアの心はさらに弾んだ。


「とりあえず、これを片付けるからちょっと待っててくれる?」

 しかし、ずっしりと腕にかかる資料の重さに、やるべきことを思い出したナディアは、ミーシャの横をすり抜けて扉をくぐる。


「え?そこ、入っていいの?」

 子供は入っていけないと止められた扉の先にあっさりと進んでしまうナディアに、ミーシャは戸惑って声をかけた。


「あぁ、私はもう14で見習いにもついているからいいのよ。ミーシャも本当は入っても大丈夫だとは思うけど、初めての図書室だろうし一応止めたのよ」

 答えながらも、ナディアは資料の背表紙に書かれている番号を確認しながら次々と棚に片づけていく。


「見習い?」

「そう。まだ説明されてない?11歳になると各自の希望を聞いて、お仕事体験みたいなのが始まるの。で、13歳前後で適性を見極めて、本格的に見習いとして仕事につくのよ。とはいっても週の半分くらいだけどね」

 聞きなれない言葉に首を傾げるミーシャに、片づける手を止めないままナディアが軽い口調で教えてくれる。


「という事は、ナディアはもうお仕事しているの?すごい!なにしてるの?」

「私?村の診療所にいるわ。とはいっても、ほとんど開店休業状態で、当番の先生は自分の研究してるから仕事って感じじゃないわね。私も課題貰って、勉強してる時間の方が長いかも」


「ふわぁ~。そんな感じなんだぁ」

 自分と変わらない年の子供たちが将来を見据えて動き始めているという現実に、ミーシャは驚いて目を丸くした。


(あ、でも。前に知り合った街の子たちも、十歳くらいには本格的に働きだすんだって言ってたっけ)

 物心つくころから家の手伝いをするのが当然で、だいたいが親の職業をそのまま継ぐが、中には大きな商家や宿屋などに下働きとして入ることもあると言っていた。

 平民の子でも頭が良ければ学校へ行き役人などを目指すこともあるようだが、それは運のいいひと握りなのだとも。


(レッドフォードでは図書館が学びの場になってたわね。おばあちゃんに名前を書いてあげたら喜ばれたってアナちゃん達が教えてくれたわ)

 大人でも、文字を書けない人がいるのだという事をミーシャはそれまで知らなかった。


 様々な教育を施してくれたのは母親だったし、父親は良くお土産に本を持ってきていくれていたからだ。

 自分の生活がとても恵まれた環境だったのだという事を、ミーシャはこの村にたどり着くまでの旅の中で知った。


 勉強ができるのも自分の将来を自分で決める事ができるのも、贅沢な事なのだ。

 世の中には、明日のパンの心配をしなくてはいけない生活をしている人がたくさんいるのだから。


 それを考えれば、村の子供全員が教育を施され、将来をある程度自分で決める事ができるこの村もまた、恵まれているのだろう。


「ミーシャも、もう13なんでしょう?村の生活に慣れてきたら、どこかの見習いにつくんじゃない?目指すものは決まってるの?」

 無事にすべての資料を片付け終えて戻ってきたナディアに尋ねられて、ミーシャはコクリと頷いた。


「私、母さんみたいな薬師になりたいの。だから、もっといろんな薬をつくれるようになりたい」

「それって、患者さんを診るの?それとも新しい薬作りたい感じ?」

 目を輝かせたミーシャに、ナディアが首を傾げる。


「え?それって違う仕事になるの?」

 思いがけない質問に、ミーシャは目を瞬いた。


 ミーシャにとって薬師とは患者の症状に合わせて薬を調薬する存在だった。

 症状に合う薬がなければ、手持ちの薬草を組み合わせて作り上げるのだが、それが新しい薬をつくっていると言われると違うような気もする。


 少なくとも、教えられた知識の組み合わせから作っているのだから、紅眼病の時のように、ミーシャの知識にない病には対処が難しくなってしまうからだ。


「そっか。言われてみたら違う仕事っぽい?でも、私、どっちもできるようになりたいんだけど駄目なのかな?」

「ダメって事はないと思うけど、時間が足りないんじゃないかな?研究所を見学させてもらったけど、未知の病を収集してる先生って外に出る事も多いし、かと思ったら集めてきた菌を育てたり研究したりで大変そうだったし。それに加えて患者さんの相手もしたいって事よね?」

額を突き合わせて悩む少女達は真剣そのものだ。


「私は、ライン様を目指しているから、とりあえず傷の治療に携わりたくて診療所にいるんだけど、それでも覚える事が多くて目が回りそうだよ?包帯の巻き方だけで何種類もあるし、傷薬ひとつとっても数種類の組み合わせあるし」


 自分の仕事を思い出しながら、ナディアはげんなりとした表情で肩を落とす。

 解けないようにきっちり巻こうとしたら力を入れすぎて血流を止めてしまったり、関節を動かせないほどがちがちに固めてしまったりと、いまだに失敗が多いのだ。


「そうなんだ……。でもここに来たかったのも、知らない知識をたくさん教えてもらえるからだし。大変そうだけど、出来るだけやってみたいなあ」

「まあ、薬も病も知識ならここに嫌って言うほど積み上がってるとは思うけど」

 ナディアが指さした先にはいくつも並んだ本棚一杯に並んだ紙の束だった。


「そっか。これ全部この村の人たちが探して研究してまとめた薬や病の知識なんだ」

 求めていたものの一端があることに改めて気がついたミーシャの目がきらりと輝く。


「ここの中に入るには、どこかの見習いになればいいの?」

「え?とりあえず見たいだけなら、ドリーさんに許可取れば見れるんじゃないかな?さすがに持ち出しはだめかもしれないけど……」

 唐突に詰め寄られて、ナディアは驚きながらもしどろもどろに答える。


「ドリーさんね!分かった!ちょっと行ってくるね~」

「えぇ~??」

 元気に宣言するとくるりと踵を返して走っていくミーシャの背中をナディアはあっけにとられて見送った。


「なんか、いい子そうだけどちょっと変わってる?」

 首を傾げるナディアの元に、困惑顔のドリーを引っ張ってミーシャが戻ってくるのは直ぐだった。









お読みくださり、ありがとうございました。


というわけで、改めてナディアちゃん登場です

今後、ミーシャと切磋琢磨してくれる予定です

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