雀鷹12
サブタイトルが、「鳩⇒鷹⇒雀」の規則から外れました。ところで、「このサブタイトル『スズメタカ』でいいの?」と思っている方もいらっしゃると思います。それでも構わないのですが、実は別の読み方があります。それは、この物語を読み続ければ分かるようになっていますので、それで構わない方は、気にせず読み進めてください。
鷹
曲がり角を飛び出すと、喉にナイフを突き立てる。声を上げることなく、肉の塊が静かに崩れていく。いつの間にか、俺の手は黒く染まっていた。もうどれだけナイフを振り回したか、覚えていない。それでも、次から次へと人が溢れてくる。突き立てるナイフにも、もう手ごたえを感じない。何人殺したところで、人は絶滅しないのではないかという錯覚に陥る。
八代のビルがどの方向にあるのかさえも見当がつかなくなった。さっきから俺の目に映るのは、コンクリートの壁とビルで切り取られた空だけだ。同じような風景が、俺を出口のない迷路に迷い込ませる。ナイフを肉の塊から引き抜き、俺はコンクリートの迷路をさらに前に進む。
雀
人の流れに合わせ、目的の場所に歩いていく。女子高生が世間話に花を咲かせているのが聞こえる。その声は少女を思わせるような、温かく優しい声だった。
俺は、先程鸚鵡が入っていた言葉が引っ掛かっていた。蝿の王。ベルゼバブ。ベルゼバブは、確か悪魔の名前だ。もし、蝿の王と烏が、雉の言っていたように対極の存在だどしたら、烏は神じゃないのか。しかし、神がルールを消すというのも、どうもしっくりこない。神は、創造する存在だ。
一体、烏とは何なんだ。
やがて、五階建てのビルに挟まれた狭い通路に辿り着く。その道は迷路のようになっているのか、入口からしばらく直進すると右に曲がっているのが見える。
この道を辿って行けば、八代のビルに辿り着く。あまり時間はない。俺は一歩踏み出し、迷路に足を踏み入れる。
鷹
どこをどんなふうに曲がっても、どんなにナイフを振り回しても、なかなかゴールに辿り着かなかった。躓きながらも、俺は走り続けた。頭の奥でカチカチと金属音がする。頭が締め付けられるように痛んだ。疲労がたまっているのかもしれない。そんな呑気なことを思った自分が笑えた。
雀
建物と建物の壁で作られた道は、本当に迷路のように入り組んでいた。十字路まであり、まるでこの迷路を作るために建物が建てられたのではないかと思ってしまうほどだった。迷路の上空はオレンジ色に染まっている。
「まだ、星は見えないか―」
俺は曲がり角を曲がる。人影とぶつかりそうになったが、その影はぶつかる前に、素早く間合いを取った。




