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Scare Crow  作者: 大藪鴻大
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33/48

雀 11

 ここで突然ですが、読者のみなさんに、お知らせのようなお願いがあります。実は、この物語の最後に、おまけコーナーを設けようと思っています。そこで、あまり呼びかけはしたくはなかったのですが、よろしければ、この物語に関する質問や疑問、意見があれば、どんどん投稿してみてください。なんなら、私自身に関することでもいいです。(ほとんど答えられないと思いますが・・・)

 「少し貢献してやるか」と思ってくださる方、「あの部分はどうなっているのだろう」と疑問を抱いた方、「大藪さんってどんな人?」と探究心の強い方。もし、よろしかったら声を聞かせてください。みなさんの意見が多ければ多いほど、面白くなると思いますので、どうかよろしくお願いします。


 長々と申し訳ありませんが、あとひとつ、物語の内容についてです。雉の「面白い話」にでてくるのは、ゴールディングの『蝿の王』です。興味のある方は、読んでみてはいかがでしょうか。

 「へえー。本当に鸚鵡君だったんだ。久しぶりだねえ。」

 少女がハンドルを右に切りながら、助手席に座っている俺に話しかけてくる。危ないなと思っていると、信号無視をした自転車が、猛スピードで少女の運転するワゴン車の前を横切った。夕暮れが近いのか、窓から差し込む日差しもだいぶ柔らかくなった。

「おまえと鸚鵡君はどこで知り合ったんだ。そして、どうやって恐怖心を植え付けたんだ。」

 少女からの返事を暫く待ったが、返事はなかった。仕方がないので、身体をひねらせ後部座席に座っている鸚鵡を見る。鸚鵡は一言もしゃべることなく、肘をつきながら流れる景色を眺めている。

「それよりさ、本当に君は戦うの?」

 少女は正面を向いたまま、先程と変わらない声色で尋ねてきた。

「ああ。こうなった以上、やるしかない。」

「そんなことしたところで、消されるだけだ。無駄だ。」

 後部座席から声が聞こえる。聞いたことない声だったが、その声はおそらく俺の声だろう。

「そうかもな。」

 正直、俺もなぜこんなことを思いついたのか、よく分からなかった。ただ、ここで戦うことで変われるような予感があった。烏から逃れられるのではないかという淡い期待があった。

「私は、あまり気が進まない。何で君がわざわざ危険な目に会わなきゃいけないのさ。」

 少女の声が微かに震えていた。俺は答えに窮した。俺にもよく分かっていなかったから。もしかしたら、俺が戦うことを決意したことは何者かに、それこそ烏にコントロールされた結果なのかもしれない。

「昔、世界を巻き込んだ戦争で、ある国から疎開をする子供たちを乗せた飛行機が、南太平洋の無人島に不時着した。」

 雉はいきなり話題を変えた。後部座席の鸚鵡は興味を示したのか、バックミラー越しに雉を見ている。

「生き残りは十数人の子供たちだけだった。彼らは救援が来るまで生き延びようと、ルールを決めて、小さな社会を築いた。最初は、それで上手くいっていた。」

「ということは、後々、何か問題が起きたのか?」

 いつの間にか、俺は雉の話に飲まれている。雉が興味深い話をして、俺がそれを聞く。それはいつものことだったが、今回は導入がなかった。雉も、前置きをする余裕がなかったのかもしれない。

「蝿の王でしょ。またの名を、ベルゼバブ。」

 鸚鵡が雉の声で言う。どうやら、鸚鵡はこの話を知っているらしい。

「そう。その島には、蝿の王がいたんだ。蝿の王は、子供たちの作ったルールなんて、もろともしなかった。やがて、蝿の王は子供たちを支配し始め、争いが起き始めた。理性で保たれていた子供たちの小さな社会も、あっという間に崩壊した。それで、その蝿の王には実態がなかった。どこかの誰かさんに似ていると思わない?」

「烏か。」

 烏は姿が見えない。実態がないといってもいい。

「でもね。私は、蝿の王と烏では決定的に違う点があると思うんだ。蝿の王はさ、人の理解出来ないルールに従って人を操るけど、烏はむしろ、そのルールに縛られる人を消している。もしかしたらさ。もしかしたらだけど、烏が本当に消したいのって、人なんかじゃなくて、その得体の知れないルールの方なんじゃないかな。」

 雉が言葉を切る。それと同時に、車の中が静かになった。俺も鸚鵡も、口を開かなかった。雉は本当にいつも、面白い話をしてくれる。俺は、雉の話が好きだった。これからも、ずっと側で聞いていたいくらいだった。

 ワゴンが止まる。俺は扉を開け、飛び降りる。振り返り、少女が座っている運転席の方を見る。少女は不貞腐れた子供のように、そっぽを向いている。

「それじゃあ、後は頼んだぞ。」

 そう言い残し、扉を閉める。黒いワゴンが静かに前に進み、徐々に速度を上げていく。俺は交差点の角を曲がるまで、十字架のネックレスを握りしめたまま、そのワゴン車を見送った。

 夕陽と呼ぶにはまだ早い太陽に向かって、カラスが無言で飛んでいくのが見えた。


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