令嬢、家族と会う
わがまま娘の印象を変えると決意したものの、ルビレシアは早速行き詰まっていた。
「さ……た、ざん?」
「ふふっ、なぁにお嬢様?」
「その…わたくしはいつも何をしていたのかしら…?この世界の知識がこの子の中に何もないのだけれど」
そう。ルビレシアの知識は驚くほど少ない。
この世界の知識どころか自信の住む国の名前も分からないのだ。
「あーー。お嬢様はいつも遅めの時間に起きて、その後はご家族と交流されたりスイーツを味わったりお買い物を楽しまれたりしていたよ」
「まぁ!勉学などはしていないの…?」
いくらわがまま娘だとしても、仮にも貴族の子なのだから普通はそれなりの学が備わっているものだろう。
このままではいけないわ……もしこの国のイケメンが高位貴族だったら学がないと嫁げないじゃないっ!と思ったが、はて、自分の爵位はなんなのだろうか。
タザンに聞いてみたところ「ショグニン家は侯爵家だよ〜」とのこと。
「あら、侯爵家なのね。なら尚更勉強しなきゃじゃないの」
「うーーん、当主様たちがお嬢様をご覧になったら驚きのあまり言葉を発せなくなりそうだね」
「知らないわよ、そんなこと。それよりわたくしお腹が空いたみたいだわ。食堂はどこかしら?」
呑気にぐーーーと空腹を告げた腹の虫をなだめつつルビレシアとタザンは部屋を出た。
どうやら今は朝の七時ぐらいらしいと窓の外を見て判断していたルビレシアを、すれ違ったメイドや執事が目を見開き立ち止まってガン見していた。
(もう…仕事中にそんな姿をさらしたらだめじゃない。ましてや我が家は侯爵家なのでしょう?お客様がいらっしゃっていたらどうするのよ……)
「あ、そうだわタザン。この世界の時間ってどうなっているのかしら?」
「そうですね、我らの知る時間と変わりありません、と答えれば聡明なお嬢様には伝わるでしょうか?」
「え、えぇ伝わったわ…、ありがとう」
「あ、ありがとうだと!?」
「お嬢様がタザンにお礼を言ったぞ!」
「待って、お嬢様、タザンの名前を呼ばれていたわよ!」
「えぇ!あのお嬢様が下の者の名前を呼ばれるなんて…!」
(あのお嬢様ってどのお嬢様よ!なんだか芝居の下手な劇を見ているようだわ…)
「ふふっ、お嬢様、食堂に着きましたよ。……念の為伝えておきますね。当主様のお名前はサーシャ・ショグニン様、奥様はルリラー・ショグニン様です。それと、兄君がお二人おりまして、上のお兄様がライリー様、二番目のお兄様がセレ様です」
耳元に口を近づけて教えてくれたタザンに密かに感謝してルビレシアはタザンが食堂のドアを開けるのを待った。
そこには艶やかな銀髪の長髪をシンプルに結い上げた父親らしき人物と、こちらは柔らかそうな栗色の髪の持ち主の母親らしき人物が目を見開いて立ち尽くしていた。
(まあ、イケオジとスタイルの完璧な美人がいるわ!わたくし、男性だったらあの美人な方に迫っていたかもしれないわ…!)




