令嬢、神の愛し子の弟と話す
「……嘘でしょう?何故彼までそんなことに……?」
決して自慢ではないが、高松家も沙理杜の渡辺家も、そして、婚約者の実家の清瀬家も、家柄も歴史も重みのある日本有数の財閥だ。
そんな日本を代表する家の者が3人も次々と亡くなるなんて、正直世界にまで影響が及ぶだろう。
「彼がどうして亡くなられたかは僕も知らないんだけれど、夕夏さんが居なくなってしまってから1週間も経っていなかった。日本中……、いや、世界中が少し混乱して、何かの組織が関わっているんじゃないか、みたいな陰謀論まで出てきてね。それは流石にないだろう、という者たちと、いや、あながちあり得るんじゃないか、という者たちで分かれたり……。影響は大きかったよ」
「な、何でかしら……。わたくしが死んだ…というか殺されたのはある意味自業自得だもの、まだ分かるわ。沙理杜さんは何というか、まあ、残念だったけれど誰かのせいという訳では無いじゃない?」
「う、まあ、僕が勝手にしたことだからね……」
「けれどあの人は人から恨まれるとか無かったはずだけれど……。どちらかというとわたくしが権力を行使して彼の婚約者の座に収まったとか何とかで周囲の女性から恨まれていたもの」
ルビレシアは当時のことを思い出しはぁ…とため息を吐く。
不満や気に食わないことがあったときには正面から文句を言いに行っていた彼女にとって、女性特有の陰でぐちぐち言われるあの感じはどうにも苦手で、かと言って真っ直ぐ言いかえしたところで親に泣きつかれたこともあり、どうにも出来ず辟易していたのだ。
「高松家の跡継ぎには清瀬家の人物じゃないと釣り合わないでしょう。それにあの人のご実家は多方面にパイプがあったのよね、とても助かったわ」
「僕には夕夏さんが彼と結婚できることをとても喜んでいたように見えていたけれど?」
タザンは少し口を尖らせてルビレシアを見つめる。
「まあ、それはそうよ、当たり前じゃない。だって彼、びっくりするほど良いお顔だったじゃない。ああもうっ彼の顔を二度と見ることができないだなんて。もったいないことをしたわ」
それを聞いたタザンは、ははっと乾いた笑いをこぼし独り言をつぶやく。
「夕夏さんがびっくりするほどの面食いなことは知っていたじゃないか……何を期待していたんだ僕は…」
「あら、沙理杜さん、わたくしのことはもとの呼び名でお呼びになって?こちらの世界ではなかなか聞かない名前だもの」
「そっか、たしかに。なら夕夏さんのことは今まで通りお嬢様と呼ぶよ。それに敬語も使わないとだよね」
「人前だけでいいわよ。ルビレシアは貴方のことをなんと呼んでいたのかしら?」
わたくしも呼び方を戻さなくては、と言ったルビレシアの視線から逃れるようにタザンは目を逸らした。
「お嬢様はその…ご自分が愛らしい顔立ちをされているのを充分理解なされていて、ご家族にもとても愛されていて……」
「……?何が言いたいのかしら?」
「……お嬢様に名前で呼ばれたことはないです、一度も」
「まぁ!それじゃあルビレシアは貴方のことを何と呼んでいたの?」
「何とというか、おいそこのお前、とか……?」
「ま、まぁ……」
つまり、ルビレシア・ショグニン侯爵令嬢は家族に甘やかされたわがまま娘だったらしい。
この世界で良い生活を送るためには、まず彼女の印象を変えるところかららしい……とルビレシアはため息を漏らした。
「どうにかして、今度こそ良い人生を送るわよ…!そしてあわよくばイケメンと交流する…!!」
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