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令嬢、もう出会う

ルビレシアが目を覚ますと、覗き込む従者の姿があった。



彼の名前はタザン・ディア。


代々ショグニン侯爵家に使える執事の家系だ。



そんなタザンを見て、ルビレシアは目を見開き、一言。




「イッッケメン」




「……ん?」



戸惑うタザンにさらにルビレシアは畳み掛ける。



「えぇ?ほんっとイケメンね、びっくりしたわ。しまったわ、ヒロインの従者なんて挿し絵に出てこなかったもの。というかなに、従者でこんなにレベルが高いわけ?では王子様や公爵令息の方はどのようなお顔をされていらっしゃるのかしら。まさか現実世界は挿し絵と画素数が違うんですなんて言わないわよね?」



「ええと、お嬢様……?お身体の調子はいかがですか?」



「良いわ。すごく。貴方の顔のおかげよ、感謝するわ」



「そ、そんな、わたくしなどそのような……」



「いいえ、本当よ。視力も抜群に良くなった気がするもの。コンタクトなんて一生いらないくらい」


「…こん、たくと」


(あぁ、そうだったわ。この世界にコンタクトレンズなんてないのよね?)


「いえ、なんでもないわ忘れてちょうだいーー」


「一ーお嬢様、転生者……!?」


「……え」


なんとも粗末なあまりの急展開にルビレシアはついていけなくなりそうになる。



つまり、目の前のタザンという従者も転生者ということか?


(どういうことかしら……。あら、と、いうか……。ティオーツ様、わたくしの他に転生者はいないとおっしゃっていたけれど?)



「どういうこと?お嬢様は転生者なの?」


「え、ええと、タザン、貴方もなの?」


ルビレシアは口調の変わったタザンに少々警戒しながら問い返す。


「ああ!この世界に転生者は僕だけだと思っていたよ!」


「まあ驚いた!いないと言われた転生者にもう出会ってしまったわ!」


「僕も驚いた!まさか【ルビレシアお嬢様】が同じ転生者だなんて……」


「失礼、以前のお名前を伺っても?ああ、わたくしは高松夕夏という者でしたわ」


「え、夕夏さん!?僕、沙理杜(さりと)だよ!渡辺(わたなべ)沙理杜!!」



「……、え!千沙の弟の!?あのわたくしの婚約者に続いて顔の良かった!?」



「うぅん、なんとも喜びがたい誉められ方だね。でも夕夏さんにそう言っていただけるなんて光栄だねと思っておくことにしようか」



「まぁ、久しぶりね。あら、失礼だけれど、貴方もここにいるということは、つまり亡くなったという(そういう)ことなのかしら......?」


「あぁ、うん。ええと、夕夏さんがあんな目にあってしまった3ヶ月後ぐらいに、階段で少年とぶつかって、落ちてしまって。あの少年には悪いことしちゃったね、僕がふらついていた瞬間に当たってしまったんだよ」


「まぁ……、そんなことが。沙理杜さんに言うのが正しいかは分からないけれど、ご愁傷さまです」



「あはは、僕は大丈夫だよ。父さんの仕事も元々従兄(いとこ)が継ぐ予定だったしね。……ただ、姉さんには悪いことをしたかな。夕夏さんを失って()ぐのことだったから……」



そう言ってタザンは顔をうつむかせる。ルビレシアは彼の手を握り、「それで」と少し話を変えた。


「高松家の娘が死んだことで、なにか変わったことはあったかしら?知っているのなら高松家がどうなったのか聞きたいのだけれど」



「ああ、高松家の会社は、引退して会長となられていた夕夏さんのお父様が社長の座に戻られていたよ。聞いた話だと、夕夏さんの弟君が成長されるまで社長としてご尽力されるつもりだとか」




「高松家は世襲制だもの。血筋が大事なのよね。まぁ、実力主義でもあったからこそ女の私が引き継げたのだけれども」




それと、とタザンがルビレシアの目をまっすぐに見つめた。そして、言った。


「夕夏さんの婚約者の男性も、僕が死ぬ前に亡くなられたんだ」、と。

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