令嬢、神と話す
輝く銀髪と怜悧な美貌を持つ神は未だにルビレシアの意識に居座っていた。
『しかし、ザマァカイヒとはなんじゃ?』
(この手の物語などでは、よく、何も悪くない令嬢に転生した主人公が周りから「悪役令嬢」と呼ばれ、蔑まれ、婚約者から婚約を破棄される宿命に遭遇してしまうのですが、その何も悪くない令嬢が自身の潔白を証明したり、先に先手を打ったりと、その展開を自ら覆すのを「ざまぁ展開」といい、それをさらに回避するのが「ざまぁ回避」ですわ、ティオーツ様)
『ほほう、なかなか興味深い状況じゃな。……ああ!いずれ蹴落とされる人生の者に生まれ変わってしまったからそなたは怒っとるんじゃな!』
(まあ、怒るだなんてそんな、まさか神ともあろうお相手にそんなたいそうな感情を抱いたりはいたしませんわ。それに安心なさって?わたくしがルビレシアの運命を変えてみせますわよ。そもそも、前世で挿し絵としてですけれど見た「殿下」はそこまでお顔が優勝とは言えませんでしたわ。わたくしの婚約者か、あぁ、貴方様の愛し子の弟もなかなかでしたわね。その2人のお顔はまあ、大優勝でしたけれども、ええと、つまり……。こほん、失礼?そのお2人以外の男性になびかなかったわたくしが、顔の大して良くないものに尻尾振るなんてありえないわ)
『そうか。だがそれは、顔が良ければ。……いや、なんでもない。改めて、すまなかったな、た、たか…。タカギ?』
(惜しい、高松ですわ)
『そうか。タカマツ、……ええと、そなたはチサといったか?』
(それは貴方様の愛し子の名ですわね。わたくしは夕夏ですわ)
『……、そうか。あ、改めてすまなかったぁ!タカマツユウカよっ、けれど、ルビライアとしてしっかり生きるんじゃぞ!』
(……締まりませんわね。わたくしの新たな名はルビレシアですわよ)
『ええい、この際分かれば良いのじゃ!まあ、なんだ、そなたに我が必要になった時は呼びかけてみぃ。きっと力になってやろう』
(まあ、……心強いですわ。ありがとうございます)
『良かろう。その世界にはそなたのようなテンセイシャはいないじゃろうから、困ったらすぐ呼ぶんじゃぞ』
(ええ、そのときは、きっと。頼りにしておりますわね)
『ずっと見守っておるからな!では、またじゃ、タカギユウカ。達者でな』
そう言ってティオーツという神は姿を消した。
一人取り残された夕夏は、そっと呟く。
「あの御方……、最後まで名前を覚えていらっしゃらなかった……。もしかして、記憶力がないのかしら?頼りにできないかもしれないわ、なるべく一人で頑張りましょう」




