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異世界×AI〜俺だけレベルが上がらないのに、補助AIの「最適行動」でいずれ世界最強に!?〜  作者: qp46


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第59話 タッグ戦

タッグ戦当日。


朝からグランゼル闘技祭会場は昨日以上の熱気に包まれていた。個人戦の時も十分騒がしかったはずなのに、今日は観客席がほぼ埋まっている。二人一組で戦うというだけでここまで盛り上がるものなのかと少し不思議だったが、会場のあちこちで飛び交う歓声を聞いていると、この街の連中は強い奴同士が連携する姿を見るのも好きなんだろうなと思えてくる。


「緊張してる?」


隣を歩くレナが聞いてくる。


「少しな。そんなに分かりやすかったか?」


「分かる。それなりの付き合いだし」


見抜かれているみたいで思わずドキッとする。今回はレナもいる。自分から誘った以上、足を引っ張るのは避けたかった。


『心拍数上昇を確認』


(言うな)


『事実です』


(最近お前ちょっと余計なこと覚えたよな)


『継続学習中です』


便利な言葉だな本当に。


会場へ入ると観客席から大きな歓声が響く。昨日も人は多かったが、今日はまた違う。試合前なのに祭りみたいな空気だった。


「レナ」


「何?」


「来てくれてありがとな」


レナが少しだけ視線を逸らす。


「今さら」


「いや、一応。正直あのまま断られるのかと思った」


「気が変わっただけ」


そう言いながらも表情は少し柔らかい。


それだけで十分だった。


試合場へ案内され、待機場所へ向かう。周囲には本戦出場者達が集まっているが、作戦会議を行っている人、他愛もない会話で打ち解けている人達、試合前特有の緊張感を保つ人と様々だった。ただ共通しているのは皆どこか落ち着いていることだ。個人戦を勝ち残った連中だし、場慣れしているのだろう。


「シンさん、レナさん。第一試合が始まりますので準備をお願いします」


スタッフに呼ばれ、シンは顔を上げる。


どうやら出番らしい。


「レナ、頼む」


レナは短く頷いた。


それだけなのに妙な安心感がある。


昨日の反省点は頭へ叩き込んだ。個人戦と違って今日は一人じゃない。タッグ戦だ。


歓声の中を歩く。


試合場へ出た瞬間、観客席から大きな歓声が上がった。


「第一試合! ラン&リン組!」


反対側のゲートが開く。


そこから現れたのは若い二人組だった。


若いな、とシンは思う。年齢で言えば中学から高校の間くらいだろうか。だが本戦まで残っている時点で普通の子供じゃない。むしろ今の俺より場慣れしている可能性すらある。


「シン&レナ組!」


今度は自分達の名前が呼ばれる。


歓声が重なる。


向こうの二人もこちらへ視線を向けた。


「兄さん、あの人だよ」


女の子の方がこちらを指差す。


「ああ」


「昨日の変な人」


「変な人って俺のことか?」


思わず聞き返す。


「そう。変な戦い方する人だから」


心外だな。


「これでも必死だったんだよ」


すると女の子が少し目を丸くする。


「兄ちゃん、この人案外面白い人じゃない?」


「今は敵だから切り替えろよ、リン」


「分かったー。じゃ! いつも通りね!」


兄妹の雰囲気が変わる。


さっきまで年相応の兄妹に見えていたのに、一瞬で戦う顔になった。本戦まで勝ち残ってきただけはあるらしい。


ふとレナを見る。


もう戦闘モードへ入っているらしい。相手から視線を外さない。切り替えが速いな相変わらず。俺も見習うべきかと思うが、多分無理だ。


「それでは――始め!」


「リン! 行くぞ!」


審判の声と同時に、ランが地面を蹴った。


速いな。年齢から勝手に抱いていた印象を叩き壊すような踏み込みだった。中学か高校くらいの年齢でこの動きは反則だろ。俺なんか補正なしだったら今の一歩で終わっている。


慌てて剣を構える。


金属音。


剣を合わせた瞬間、腕へ衝撃が走る。


重い。体格だけなら俺の方が上のはずなのに、剣越しに伝わる衝撃は想像以上だった。この世界の住人は本当に反則だと思う。十五歳くらいの子供ですら俺より強いんだから笑うしかない。


だが次の瞬間には身体が自然と横へ流れていた。最近は難しく考えるのをやめた。ただその場所が危険だと身体が、チャッピーが知っていた。だから任せる。


ランの剣が空を切る。


同時にレナが横を抜けた。俺が受ける。レナが攻める。その流れがあまりにも自然だった。


「っ!?」


ランが慌てて剣を戻す。だがその頃には俺が踏み込んでいる。考えた記憶はない。合図もない。


それでも身体は勝手に最適な場所へ動いていた。昨日までなら驚いていたかもしれない。だが今は違う。気付けばそれが当たり前になっていた。


『連携演算を更新』


頭の奥でチャッピーの声が響く。


(便利だな)


『事実です』


ランが距離を取る。その表情に初めて戸惑いが浮かんでいた。


「なんだ今の……」


「兄ちゃん?」


リンも不思議そうな顔をしている。俺も説明しろと言われたら困る。ただ。上手く言えないが。二人で戦っているという感覚より、身体が勝手に噛み合っている感覚の方が近かった。


だが。


(……なんだ?)


別の違和感も残る。ランだ。踏み込みは速い。力も強い。剣筋も綺麗だ。だが何かが噛み合っていない。


間違いなく俺よりは強い。


少なくとも補助なしの俺なら普通に負ける相手だろう。それなのに引っ掛かる。上手く言葉にできない。そんな感覚だけが残った。


「兄ちゃん集中!」


後方から声が飛び、リンが短剣を掲げる。


「影、絡み付け! シャドーバインド!」


足元から黒い影が伸びる。だが届かない。影は途中まで伸びたところで勢いを失い、地面へ溶けるように消えてしまった。


「あー! また上手くいかなかった!」


リンが頭を抱える。


「リン!」


ランが思わず叫ぶ。


「魔法上手くないんだから無理に使わなくていい!」


「でも使えるし!」


「使えてねぇだろ今!」


「今回はちょっと失敗しただけ!」


「毎回言ってる!」


兄妹喧嘩が始まる。試合中なんだけどな。シンは思わず苦笑した。だが。


(こっちも変だな)


魔法は発動していた。なのに最後だけ上手く繋がらない。失敗している。それは分かる。だが苦手だから失敗しているようには見えなかった。


『対象二名を解析中』


頭の奥でチャッピーが告げる。


(分かるのか?)


『継続解析中です』


それ以上は言わない。まだ確信がないらしい。ランが再び踏み込む。リンも次の魔法を準備している。レナは既に動き始めていた。この二人は十分強いとは思う。だがランもリンもどこか噛み合っていない。その違和感の正体を掴む前に、ランの剣が再び目の前まで迫っていた。

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