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俺だけレベルが上がらないのに、補助AIの「最適行動」で世界最強に!?  作者: qp


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第5話 初報酬と現実

第5話です。


初めての報酬。

それは達成感と同時に、この世界の“現実”を突きつけてきます。


戦えばなんとかなる——

そんな甘いものではなかったと、主人公はようやく理解し始めます。


そしてもう一つ。

一人でいるはずの少女との距離が、少しだけ動き出します。


 倒れたゴブリンを見下ろし、ゆっくり息を吐く。確かに倒したはずなのに実感は薄い。ただ、さっきまで動いていたものが完全に沈黙しているという事実だけが残っていた。


(……終わった、のか)


 少しだけ力を抜きかけた、その時。


『討伐証明を回収してください』


「……は?」


 間の抜けた声が出る。


『対象部位の回収を推奨します』


「対象部位って……」


 嫌な予感がよぎる。


『耳です』


「……マジかよ」


 視線が自然とゴブリンの顔に向く。すでにそれはただの死体だ。


(これを切るのか)


 一瞬だけ手が止まる。だが、やらなければ報酬は出ない。


(……やるしかないか)


 近くに落ちていた石片を拾い、しゃがみ込む。なるべく見ないようにしながら耳に当てる。


 押し込む。


 ぐちゃり、と嫌な感触。


「……っ」


 息を止めながらなんとか切り離し、拾い上げる。ぬるりとした感触が指に残る。


(……キツいな)


『討伐証明の回収を確認しました』


 チャッピーだけがいつも通りだった。


 そのままギルドへ戻る。カウンターに耳を提出すると、女性受付が慣れた様子で確認し、処理を進めた。


「確認しました。F級魔物討伐の報酬になります」


 差し出された袋を受け取る。軽い。


「……いくらですか?」


「500Gになります」


「……」


 少なすぎる。だが文句を言える立場でもない。


「……すみません」


 もう一度声をかける。


「この辺の相場って、どれくらいなんですか?」


 女性受付は少し考えてから答える。


「一番安い宿で、一泊食事付きで500Gほどになりますね」


「……」


 一瞬、思考が止まる。


「それ、今の報酬と同じですよね?」


「はい、そうなります」


 にこやかに言われる。


(……宿代、一日分)


 手の中の袋がやけに軽く感じる。


(これ、生活できなくね?)


 礼だけ言って外に出る。空気を吸った瞬間、現実が一気に押し寄せてくる。


(500Gでどうしろってんだよ)


 武器は即席、宿は未確保、食事もまだ。


(詰んでるだろ、これ)


『提案があります』


 チャッピーの声が響く。


「……なんだよ」


『一部機能の拡張が可能です』


「……は?」


『サブスクリプション契約により、当AIの処理能力を一時的に強化できます』


「サブスク……?」


『日額制です』


「いやいやいや」


 思わず苦笑が漏れる。


「金ないって言ってんだろ」


『短期的な生存率および収益効率の向上が見込まれます』


「その前に金がねえんだよ」


 噛み合わない会話にため息が出る。


(宿もない、武器もまともじゃない、金もない……)


 改めて整理すると笑えない。


(……もう一回依頼受けるしかないか)


 そう結論づけ、踵を返そうとしたその時。


 視界の端に見覚えのある姿が映る。


 壁際、気だるげに寄りかかる少女――レナ。


(……いた)


 自然と足が止まる。


 一瞬だけ迷う。だが、すぐに決める。


(背に腹は代えられないか)


 歩み寄る。


「――あの」


 レナがこちらを見る。鋭い視線は変わらない。


「なに?」


 短い返答。


 一度だけ息を整える。


「やっぱり、一緒に組みませんか?」


 はっきりと言い切る。


 レナはしばらく黙っていたが、小さく息を吐く。


「……しつこいわね」


「すみません」


 素直に頭を下げる。


 少しの沈黙。


 レナは壁から体を離し、ゆっくりとこちらに歩み寄る。


 距離が詰まる。


 その視線が、さっきよりも深くなる。


「名前は?」


「……シンです」


「レナ」


 短く名乗る。


 それだけで終わるはずだった。


 だが、レナはそのまま言葉を続けた。


「パーティは組まない」


「……」


 予想通りの答え。


 だが――


「一緒にいると、ろくなことにならないのよ」


「……え?」


 初めて聞く言葉だった。


 レナは一瞬だけ視線を逸らす。


 ほんのわずかに、表情が揺れた気がした。


「だから、一人でやってる」


 それ以上は語らない。


 だが、それで十分だった。


(……理由、あるんだな)


 納得する。


 踏み込まない方がいいと分かる。


 それでも、引けない。


「それでも、お願いします」


 もう一度言う。


 レナはじっとこちらを見る。


 長い沈黙。


 やがて、小さく息を吐く。


「……一回だけ」


「え?」


「次の依頼。それで判断するわ」


 淡々とした口調。


「足手まといなら、その場で切る」


 視線が鋭くなる。


 冗談じゃない。


「……分かりました」


 即答する。


 選択肢なんて最初からない。


 レナは小さく頷く。


「じゃあ、ついてきなさい」


 そう言って歩き出す。


 その背中を見ながら、息を吐く。


(……とりあえず、繋がったか)


『当該個体との同行を確認しました』


 チャッピーの声が淡々と響く。


(結果オーライ…か)



第5話を読んでいただきありがとうございます。


今回は

・初報酬と生活の厳しさ

・この世界の金銭感覚

・レナが一人でいる理由の“匂わせ”

を中心に描いています。


戦闘自体はうまくいっているはずなのに、状況はむしろ悪化していく。

この“噛み合わなさ”が、主人公の立ち位置をはっきりさせていきます。


そしてレナ。

彼女はただのクールなキャラではなく、「一人でいる理由」を抱えています。

その理由が、主人公とどう噛み合っていくのかも見どころになります。


次回は、いよいよ二人での依頼。

実力差、価値観のズレ、そしてチャッピーの存在——

それぞれがどうぶつかるのか、ぜひ楽しんでいただければと思います。


引き続きよろしくお願いします。

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