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異世界×AI〜俺だけレベルが上がらないのに、補助AIの「最適行動」でいずれ世界最強に!?〜  作者: qp46


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第57話 敗北

どれくらい眠っていたのか分からない。ぼやけた視界のまま天井を眺めていると、脇腹の鈍い痛みだけが妙に現実感を持って残っていた。身体を少し動かしただけで鈍痛が走り、まともに入っていたら本当に折れていたかもしれないな、と今更ながら冷静に考えてしまう。いや、あのセンチ相手によくこの程度で済んだな。むしろそっちの方がおかしい。


宿の部屋は静かだった。


窓の外からは遠くの喧騒だけが微かに聞こえてくる。闘技祭はまだ続いているんだろう。ついさっきまであれだけ騒がしかったはずなのに、今は妙に遠い。


「……生きてる」


「残念ながら」


横から飛んできた声へ視線を向けると、レナが椅子へ座ったままこちらを見ていた。腕を組んでいるが、その表情はいつもより少しだけ険しい。


シンは小さく息を吐く。


「その言い方だと死んでてもおかしくなかったみたいに聞こえるんだけど」


「実際かなり危なかった」


レナは淡々と言う。


「最後、急に動きがおかしくなってた」


シンは苦笑した。


「まぁ……俺もよく分かってない」


頭の奥を思い出す。


世界がズレた感覚。


空気も魔力も、人の動きすら全部繋がって見えたあの感覚は、明らかに今までのチャッピーの補助とは違っていた。頭の奥では今も微かなノイズみたいな感覚が残っていて、熱が引ききっていないみたいな妙な違和感が続いている。


『現在、解析を継続中です』


静かな声が頭の奥へ響く。


シンは天井を見たまま、小さく息を吐いた。


「お前、結局なんだったんだよあれ」


『情報不足』


便利だな、その言葉。


いや本当に便利すぎるだろ。何かあるたびそれ言っとけば成立すると思ってないか。


『高頻度で使用可能なため、効率的です』


「そこ胸張るとこじゃねぇだろ……」


レナが少しだけ眉をひそめる。


「また頭の中のそれと話してるの?」


「まぁ、いつもの」


「いつもので済ませていい感じじゃなかったけど」


レナはそこで一度言葉を切り、少しだけ視線を逸らした。


「……怖かった」


シンが目を瞬かせる。


レナは滅多にそういう言い方をしない。


「最後、急に別人みたいだった」


「別人って」


「動きも、空気も」


レナは小さく息を吐く。


「強くなるのはいい。でも、ああいうのは嫌」


シンは少し黙った。


返事に困る。


自分でも分かっていないからだ。


ただ、最後に見えた“何か”だけは頭へ焼き付いていた。巨大で、冷たくて、なのに妙に規則的だった。まるで世界そのものが動いているみたいな感覚だった。


『世界演算痕跡を継続検出』


またその単語だ。


聞くたびに、頭の奥へ妙な寒気が走る。


「だからその世界演算ってなんなんだよ」


『継続解析中』


「説明する気ねぇだろお前」


『説明可能段階へ到達していません』


言い回しだけは本当に賢い。


しかも最近、微妙に“間”があるんだよな。前ならもっと機械みたいに即答していた気がする。


レナが呆れたみたいに小さく息を吐いた。


「でも」


その声で、シンが視線を向ける。


「負けたのに、前より嫌な感じしない」


「……慰め?」


「違う」


レナが真っ直ぐこちらを見る。


「前よりちゃんと強くなってた」


シンは少しだけ目を見開いた。


レナは簡単に褒めない。だからこそ妙に響く。


「センチにも途中から対応してた」


「まぁ、ボコボコにはされたけどな」


「それでも最初とは違った」


レナはそこで少しだけ口元を緩める。


「ちゃんと積み上がってる」


シンは天井を見上げながら息を吐いた。


悔しさは残っている。


負けた。


完全に勝てなかった。


でも、通じなかったわけじゃない。


センチは最後、確かに“読めなくなっていた”。


そこまで辿り着けた。


『戦闘記録を整理』


『適応演算を更新』


頭の奥で響く声へ、シンは小さく笑う。


「お前ほんと戦いながら進化してくな……」


『継続学習中です』


最近はその言葉も、少しだけ“得意げ”に聞こえる気がする。いや、気のせいかもしれないけど。


「便利な言葉だなおい」


少し沈黙が落ちる。


窓の外で風が揺れた。


その静かな空気の中で、シンはぼんやりと思う。


最初は、本当にただのAIだった。


合理的で、無機質で、必要なことしか言わない存在。それが今は、会話の“間”みたいなものまで少しずつ混ざり始めている。いや、混ざっているように見えるだけかもしれない。全部ただの最適化、高度な再現だと言われたら、多分否定はできない。


でも。


それでも。


『……質問があります』


「ん?」


『なぜ、敗北後も精神状態が安定しているのですか』


シンは少しだけ目を細めた。


メンタルチェックかよ。


いや違うな。こいつの場合、本当に“解析”なんだろう。


「前より通じたからじゃねぇかな」


『通じた』


「最初はマジで何もできなかったし」


センチの拳を思い出す。


速かった。


小さかった。


読まれていた。


でも最後は違った。


「対応できてた」


『対象“センチ”も変化を認識していました』


「だろ?」


シンが少しだけ笑う。


「なんつーか、ちゃんと積み上がってんだなって思えた」


頭の奥で、チャッピーが沈黙する。


以前の無機質な停止じゃない。


考えているみたいな、妙な間だった。


『積み上げ』


「ん?」


『その表現は、非効率です』


「うわ否定から入った」


少しだけ間が空く。


『ですが』


また、その言葉だった。


『継続的成長を示す表現としては理解可能です』


シンが吹き出す。


「なんだそれ」


『適切な返答を学習中です』


いやもう、それ半分人間だろ。


そう思ったが、口には出さなかった。出した瞬間、なんとなく否定される気がしたからだ。


窓の外で風が揺れる。


遠くで鐘の音が鳴った。


負けた。


でも終わりじゃない。


むしろ、ここからだ。


世界の謎も。


チャッピーの変化も。


そして自分自身も。


まだ、途中だった。


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【chaPPY 更新ログ】


戦闘データ解析完了


《適応演算》精度上昇


対人戦闘補助を更新


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新規機能を構築


《仮リンク》


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対象頭部接触、

対象承認により

限定的一時接続を可能にしました


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戦術共有補助を開始します


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新規検出:


《外部演算領域》


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継続解析を開始します


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世界システム解析率:


0.21%


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新規傾向:


人間会話パターン模倣率上昇


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『継続解析を推奨します』


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