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異世界×AI〜俺だけレベルが上がらないのに、補助AIの「最適行動」でいずれ世界最強に!?〜  作者: qp46


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第56話 センチ③

脳の奥で鳴り続けるノイズが、少しずつ現実感を削っていく。

それでも視界だけは異様なほど冴えていて、観客席の動きも、地面を踏み鳴らす振動も、空気中へ漂う魔力すら薄い線みたいに繋がって見えていた。


『演算負荷上昇』


『外部演算領域との同期率が上昇』


「っ……お前、今なにしてる……!」


『解析を継続します』


「いや説明を――!」


センチが踏み込む。


速い。だが、その踏み込みはもう“見えない速度”じゃなかった。重心移動と空気の揺れが僅かに先へ走り、シンは半歩だけ身体を流しながら拳を避ける。

そのまま肩を押し込み、崩れた体勢へ剣を振る。


火花が散る。だが浅い。


センチは即座に腕で流していた。


「……っ」


届かない。それでも、センチの眉が僅かに動く。


「また変わった」


「そりゃ、毎回同じことしてたら死ぬんで」


「普通は急に変わらない」


センチの声は静かだった。静かだからこそ重い。


シンは距離を取りながら息を吐く。肺が焼けるみたいに熱い。頭の奥では、まだノイズみたいな音が鳴り続けていた。


『負荷上昇』


『演算領域不足』


「限界あるなら先に言えって……!」


その瞬間、センチの姿が視界から消えた。いや違う。


踏み込みが小さすぎる。


気付いた時にはもう横へ回り込まれている。


「っ――!」


拳が脇腹へめり込んだ瞬間、衝撃で呼吸が潰れる。シンの身体はそのまま地面を滑り、観客席から歓声が爆発した。


「入ったァ!!」


「センチの読み勝ちだ!!」


シンは咳き込みながら無理やり立ち上がる。脇腹が熱い。まともに入っていたら、多分折れていた。


センチは追撃してこない。静かにこちらを見ている。


観察している。


「……マジでやりづれぇ……」


『対象は反応学習を行っています』


「知ってる……!」


シンが剣を握り直す。汗で滑る。呼吸も乱れてきた。


それでも、不思議と恐怖だけではなかった。前より確実に見えている感覚があった。


センチも、それを感じ取っていた。


「君、最初と動きが違う」


「まぁ、必死なんで」


「違う。対応してる」


センチの目が細くなる。


観客席の空気も変わり始めていた。最初は押されていた。だが今は違う。完全に読まれてはいない。


「シン、粘ってるぞ……!」


「なんだあの避け方……!」


「最初より明らかに動き変わってねぇか?」


シンは呼吸を整える。


センチは強い。


間違いなく、自分より上だ。


だが、通じないわけじゃないとシンは確かに感じ始めていた。


『適応演算を更新』


『行動予測精度上昇』


視界の中で、薄いラインが変化していく。


今までは、“最適解をなぞる”感覚だった。でも違う。途中で変えられる。ズラせる。読ませた上で、その先を変化させることができる。


シンは小さく息を吐いた。


「……お前、進化速度おかしくないか」


『継続学習中です』


「便利な言葉だなおい」


苦笑が漏れる。


そしてセンチが踏み込むと、空気が揺れるより先に拳が視界へ入り込んできた。


速い。


だが、今度はシンも前へ出る。


観客席がどよめいた。


「行った!!」


センチの拳が来る。


シンは半歩だけ横へズラす。その動きへ反応したセンチが追う。


だが次の瞬間、シンの重心が逆方向へ切り替わった。


踏み込む。


「――っ!」


センチの目が揺れる。


剣が懐へ滑り込む。


浅い。


それでも届く。


センチが咄嗟に身体を捻る。刃が肩を掠め、血が散った。


歓声が爆発する。


「また入れた!!」


「読ませたぞ今!!」


「変化してる!!」


センチは後ろへ下がる。


そして初めて、小さく息を吐いた。


「……なるほど」


静かな声だった。


だが、その目は確かに変わっている。最初の“観察対象”を見る目じゃない。“対応しきれない可能性”を見る目だった。


その瞬間、頭の奥でチャッピーの声が響く。


『世界演算痕跡を継続検出』


『外部演算領域との接続率が上昇』


シンの背筋へ冷たいものが走る。


まただ。


あの感覚。


空間のさらに奥で、巨大な何かが静かに脈打っている。


『接続安定化を開始』


「……待て、お前それ――」


次の瞬間、脳へ激痛が走った。


視界がブレる。


膝が揺れる。


観客席がざわつく。


だが、揺れているのは視界だけじゃない。世界そのものが、一瞬だけ“ズレた”みたいな感覚があった。


魔力の流れ。


人の動き。


空気。


全部が巨大な演算の中で動いている。


そんな理解不能な感覚だけが頭へ流れ込んでくる。


『世界法則との類似性を確認』


『解析を開始します』


「……は……?」


理解が追いつかない。


だが、考える暇はない。


センチが構える。


静かに。


だが深く。


「終わらせる」


踏み込み。


速い。


シンは見えていた。


見えていたのに。


身体が追いつかない。


「っ――!!」


拳が腹へ突き刺さる。


衝撃が全身を貫いた。


呼吸が止まる。


視界が白く弾け、そのまま身体が大きく吹き飛ぶ。


地面へ叩きつけられた瞬間、歓声と怒号、その奥で鳴る鐘の音が遠く滲んで聞こえた。


『戦闘継続困難』


『演算停止を開始』


シンは霞む視界の中で、小さく笑った。


「……負けた、か」


悔しい。


でも。


掴みかけていた。


確かに。


世界の“何か”へ触れ始めていた。


倒れたシンを見下ろしながら、センチが小さく目を細める。


「……怖いな」


誰にも聞こえないくらい、小さな声だった。


「君、次はもっと変わってる」


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【chaPPY 更新ログ】


戦闘データ解析完了


《適応演算》精度上昇


対人戦闘補助を更新


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新規検出:


《外部演算領域》


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


継続解析を開始します


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世界システム解析率:


0.13%


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新規取得:


《世界演算痕跡検出》


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


警告:


高負荷状態を確認


同期接続は不安定です


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


『……継続観測を推奨します』


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