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異世界×AI〜俺だけレベルが上がらないのに、補助AIの「最適行動」でいずれ世界最強に!?〜  作者: qp46


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第55話 センチ②

「本当に、何者なんだ」


センチの呟きが、妙に静かに耳へ残った。


シンは答えられない。答えられるわけがなかった。自分でも分かっていない。ただ、視界の奥では今も薄い線みたいな情報が揺れ続けていて、観客の動きも、空気中へ漂う魔力も、地面を踏み鳴らす振動すら一つの流れとして頭へ入り込んできていた。


頭が熱い。それなのに身体だけは妙に軽い。


『演算補助を継続』


『外部情報流入を確認』


「……それ、後で説明しろよ」


『解析中です』


「だろうな……!」


センチが踏み込む。


速い。だが、さっきまでとは違った。ただ速いだけじゃない。拳が来る軌道、その前段階の重心移動まで、薄く線を引くみたいに頭へ流れ込んでくる。


シンは最小限だけ身体を流し、そのまま相手の勢いへ肩を押し込んだ。


センチの体勢が僅かに崩れる。


そこへ剣を振る。


火花が散る。


だが浅い。


センチが即座に腕で流していた。


「……っ」


届かない。


それでも、センチの眉が僅かに動く。


「また変わった」


「そりゃ、毎回同じことしてたら死ぬんで」


「普通は急に変わらない」


センチの声は静かだった。静かだからこそ重い。


シンは距離を取りながら息を吐く。肺が焼けるみたいに熱い。頭の奥では、まだノイズみたいな音が鳴り続けていた。


『負荷上昇』


『演算領域不足』


「限界あるなら先に言えって……!」


その瞬間、センチの姿が視界から消えた。


いや違う。


踏み込みが小さすぎる。


気付いた時にはもう横へ回り込まれている。


「っ――!」


拳が脇腹へめり込んだ。


衝撃で呼吸が潰れる。


シンの身体が地面を滑り、観客席から歓声が爆発した。


「入ったァ!!」


「センチの読み勝ちだ!!」


シンは咳き込みながら無理やり立ち上がる。脇腹が熱い。まともに入っていたら、多分折れていた。


センチは追撃してこない。


静かにこちらを見ている。


観察している。


「……マジでやりづれぇ……」


『対象は反応学習を行っています』


「知ってる……!」


シンが剣を握り直す。


汗で滑る。


呼吸も乱れてきた。


それでも、不思議と恐怖だけではなかった。前より確実に見えている感覚があった。


センチも、それを感じ取っていた。


「君、最初と動きが違う」


「まぁ、必死なんで」


「違う。対応してる」


センチの目が細くなる。


観客席の空気も変わり始めていた。最初は押されていた。だが今は違う。完全に読まれてはいない。


「シン、粘ってるぞ……!」


「なんだあの避け方……!」


「最初より明らかに動き変わってねぇか?」


シンは呼吸を整える。


センチは強い。


間違いなく、自分より上だ。


だが、通じないわけじゃないとシンは確かに感じ始めていた。


『適応演算を更新』


『行動予測精度上昇』


視界の中で、薄いラインが変化していく。


今までは、“最適解をなぞる”感覚だった。でも違う。途中で変えられる。ズラせる。読ませた上で、その先を変化させることができる。


シンは小さく息を吐いた。


「……お前、進化速度おかしくないか」


『継続学習中です』


「便利な言葉だなおい」


苦笑が漏れる。


そしてセンチが踏み込むと、空気が揺れるより先に拳が視界へ入り込んできた。


速い。


だが、今度はシンも前へ出る。


観客席がどよめいた。


「行った!!」


センチの拳が来る。


シンは半歩だけ横へズラす。その動きへ反応したセンチが追う。


だが次の瞬間、シンの重心が逆方向へ切り替わった。


踏み込む。


「――っ!」


センチの目が揺れる。


剣が懐へ滑り込む。


浅い。


それでも届く。


センチが咄嗟に身体を捻る。刃が肩を掠め、血が散った。


歓声が爆発する。


「また入れた!!」


「読ませたぞ今!!」


「変化してる!!」


センチは後ろへ下がる。


そして初めて、小さく息を吐いた。


「……なるほど」


静かな声だった。


だが、その目は確かに変わっている。最初の“観察対象”を見る目じゃない。“対応しきれない可能性”を見る目だった。


その瞬間、頭の奥でチャッピーの声が響く。


『世界演算痕跡を継続検出』


『外部演算領域との接続率が上昇』


シンの背筋へ冷たいものが走る。


まただ。


あの感覚。


空間のさらに奥で、巨大な何かが静かに脈打っている。


『接続安定化を開始』


「……待て、お前それ――」


次の瞬間、脳へ激痛が走った。


「っぁ……!?」


視界がブレる。


膝が揺れる。


観客席がざわついた。


センチの目が細くなる。


「……集中が切れた?」


違う。


これは――


『演算負荷が限界値へ到達』


頭の奥で、チャッピーの声だけが妙に冷静だった。

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