表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界×AI〜俺だけレベルが上がらないのに、補助AIの「最適行動」でいずれ世界最強に!?〜  作者: qp46


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
56/63

第54話 センチ①

開始鐘が響いた瞬間、センチの姿が揺れた。


速い。だがミリグみたいな爆発力じゃない。踏み込みは異様に小さく、気付いた時にはもう間合いへ入られている。


シンは反射的に身体を流したが、拳は頬を浅く掠め、遅れて熱みたいな痛みが走った。


「見えねぇ!!」


「もう入ってるぞ!!」


歓声が揺れる。


シンは距離を取りながら小さく息を吐いた。やりづらい。だが、想定通りでもある。


相手を読むタイプ。しかも浅い観察じゃない。癖や重心、反応速度まで含めて固定してくる。昨日の試合を見た時点で、もう理解していた。


センチは追ってこない。


静かに立ったまま、ただこちらを見ている。その視線には焦りも殺気もなく、反応を待っているみたいな静けさだけがあった。


「……胃に悪ぃな、マジで」


前の会社を思い出す。静かな奴ほど怖い。そして大体有能だ。


センチが小さく首を傾げた。


「避けるね」


「まぁ、殴られたい趣味はないんで」


「でも」


センチの目が細くなる。


「君、横へ流れる癖がある」


踏み込みと同時に拳が走る。


速い。


シンは横へ流れる。だが、その先へ拳が先回りしていた。


「っ――!」


無理やり剣で逸らす。重い。衝撃が腕の奥まで響き、痺れみたいな感覚が残った。


観客席がどよめく。


「読んでるぞ!!」


「シン押されてる!!」


シンが呼吸を変える。その瞬間、センチの踏み込みが重なった。


「……やっぱ見てるよな」


『観察精度、高』


『対応型戦闘スタイルを確認』


「だろうな……!」


距離を取る。まだ数合しか打ち合っていない。それなのに妙に疲れる。呼吸のタイミングまで見られている感覚があった。


センチは構えを崩さないまま口を開く。


「君、多分、考えながら戦うタイプだよね」


「力押しできる身体じゃないんで」


「分かる」


即答だった。


「だから動きが丁寧」


センチは視線を落とす。


「でも、丁寧すぎる」


次の瞬間、踏み込みと同時に拳が走った。


シンは反射的に後ろへ下がる。そこへさらに追撃が重なる。


読まれてる。


だが、シンはもう迷わなかった。


読むなら、読ませる。


後ろへ下がると見せる。重心だけ残して、踏み込む。


「――っ!!」


観客席がどよめいた。


センチの目が初めて揺れる。


拳が空を切る。その懐へ、シンの剣が滑り込んだ。


「クロスエッジ!!」


火花が散る。


センチが腕で強引に逸らした。だが完全には流しきれず、刃が浅く腕を裂く。


歓声が爆発した。


「入った!!」


「今読ませたぞ!?」


「避けると思わせた!!」


シンは息を吐く。心臓がうるさい。でも、今のは通じた。


センチは腕を見下ろす。


薄く血が滲んでいた。


そして、少しだけ笑う。


「……変わった」


「まぁ、同じこと繰り返してたら、対応されるんで」


「学習してるんだ」


「そっちが読むなら、こっちも変えるしかないでしょ」


その瞬間、センチの空気が変わった。


踏み込みが深い。さっきまでと明らかに違う速度で拳が視界へ迫ってくる。


「っ――!」


ギリギリで流す。だが止まらない。


二撃目。


三撃目。


小さい動きなのに速い。しかも一切無駄がないせいで、次の拳が来るまでの感覚が異様に短かった。


『演算負荷上昇』


『回避補助を開始』


脳が熱い。情報量が多すぎて視界が揺れる。それでも、不思議と前より見えていた。


チャッピーの補助精度が、戦いながら上がっている。


違う。


こいつ、学習してる。


『外部演算領域との類似性を確認』


「……は?」


頭の中へ、いつもの無機質な声が響く。


『継続解析を推奨』


「今それどころじゃ――!」


センチが踏み込む。


速い。だが、その瞬間だけ拳の軌道が線みたいに頭へ流れ込んできた。


見えた。


シンは最小限だけ半歩ズレる。拳が頬横を通り抜け、遅れて風圧だけが肌を叩いた。


観客席がどよめく。


「また避けた!!」


「今の反応なんだ!?」


センチの目が細くなる。


初めて、“読めない”と感じた顔をしていた。


その瞬間だった。


世界が一瞬だけ止まった気がした。視界の奥、空間のさらに向こう側で何か巨大なものが脈打っている。魔力とも生命とも違う。それでも確かに“何か”が存在していて、冷たい気配だけが空間の奥で静かに揺れていた。


頭の奥へノイズが走る。


『――接続痕跡を確認』


「……っ!?」


耳鳴りが響き、視界が僅かにブレる。だが揺れているのは視界じゃない。情報量そのものが急激に膨れ上がっていた。


観客の歓声も、地面を踏み鳴らす振動も、空気中へ漂う魔力すら薄い線みたいに繋がって見える。


『未知演算領域を検出』


『継続観測を開始』


「おい、待て……なんだそれ……!」


シンの背筋へ冷たいものが走る。


今までの解析とは違う。チャッピー自身も、“見つけてしまった”みたいな声だった。


センチの拳が目前まで迫る。


だが、シンの身体はもう自然に動いていた。最小限だけ半歩ズレる。拳が頬横を通り抜け、遅れて風圧だけが肌を叩いた。


観客席が揺れる。


「避けたァ!!」


「なんだ今の反応!!」


センチは静かにシンを見る。その目に、初めて明確な違和感が浮かんでいた。


「……君」


小さく呟く。


「本当に、何者なんだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ