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異世界×AI〜俺だけレベルが上がらないのに、補助AIの「最適行動」でいずれ世界最強に!?〜  作者: qp46


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第38話 森の主

ギルドの中は昼時らしい賑わいに包まれていた。


酒場スペースでは冒険者達が酒を片手に騒ぎ、受付前では依頼帰りの連中が報酬を受け取っている。武器の擦れる音、笑い声、誰かの怒鳴り声――普段と変わらない光景のはずなのに、その賑わいはどこか落ち着かず、ざわめきの奥に薄い緊張が張り付いていた。


誰かが無意識に武器へ触れ、誰かが何度も入口へ視線を向けている。


理由は分からない。


ただ、全員が“森の件”を気にしていた。


「……広がるの早ぇな」

グリスが周囲を見回しながら低く呟く。


「一週間前に報告した時は、ここまで空気変わってなかっただろ。緑龍が目覚めたってだけでも十分厄介なのによ」


「でも最近ずっと変だったよね」

マリーも落ち着かなさそうに辺りを見渡した。


「魔物の縄張りとか、前と全然違ってたし」


「ああ」

グリスは小さく息を吐く。


「最初は森の異常だけだった。けど日に日にズレがデカくなってったんだよ。普通なら“主”が動けば周囲は静かになる。でも今回は逆だ」


「全部が外へ押し出されてる」

レナが静かに続ける。


「ゴブリンもボアも関係ない。縄張り争いとかじゃなく、何かから逃げてる動きだった」


「外縁部まで影響が出始めていた」

ダンも低く言う。


「ここまで森全体が乱れるのは異常だ」


シンは黙ったまま周囲を見る。


確かに空気がおかしい。


聞こえてくる音は多い。でも、その一つ一つが妙に尖って聞こえる。笑い声すら無理に明るくしているみたいで、普段みたいな気楽さがない。


(みんな分かってるのか)


その時、脳の奥へ静かに情報が流れる。


『ギルド入口方向より接近反応を確認』


(……?)


『対象の呼吸・足音に乱れを確認。緊急性が高い状態と推測します』


次の瞬間だった。


ギルドの扉が勢いよく開く。


鈍い音が響き、何人かの冒険者が反射的にそちらを向いた。


飛び込んできたのは、一人の冒険者だった。


泥だらけだった。


肩で荒く息をし、鎧には深い爪痕が走っている。顔色も悪い。その姿を見た瞬間、ギルドの空気が変わる。


「どうしました!?」

受付嬢が慌てて駆け寄る。


男は息を整える暇もなく叫んだ。


「森の魔物が暴走してる! ついに森の主が動き始めたんだ! 外縁部まで魔物が逃げてきてるぞ!」


ざわめきが止まる。


次の瞬間、ギルド内が爆発したように慌ただしくなる。


「どの辺だ!?」


「外縁まで来てるのか!?」


「被害は!?」


椅子が鳴り、武器を掴む音が重なり、空気が一気に張り詰めていく。


「落ち着いてください、詳細を!」

受付嬢が声を張る。


男は荒い息を吐きながら続けた。


「ゴブリンもボアも関係ねぇ! 縄張りも無視して全部外へ流れてきてる! ただ緑龍から逃げてるって感じじゃねぇんだ!」


その声には、はっきり恐怖が混じっていた。


「森の主そのものが、何かに苛立って暴れてるみてぇだった……!」


空気が変わる。


グリスの表情が険しくなる。


「……は?」


マリーも顔を青くした。


「ちょっと待って、それって……緑龍がおかしいってこと?」


「そこまでは見えてねぇ!」

男は叫ぶ。


「でも空気が変なんだ! 木が倒れてるし地面まで抉れてる! 魔物共もただ逃げてるだけじゃねぇ、何かに追われるみてぇに暴れてやがる!」


脳の奥へ情報が流れ込む。


『高出力エネルギー反応を感知』


『発生源:森深部』


シンの背筋を嫌な汗が流れた。


(チャッピー)


『危険度判定を更新します』


一拍。


『対象:緑龍と推定』


その言葉が妙に重く残る。


周囲ではすでにギルド職員達が慌ただしく動き始めていた。


「警戒依頼を出せ!」


「森周辺の冒険者を集めろ!」


「単独行動は禁止だ!」


飛び交う怒号の中心には、はっきりとした恐怖があった。


そんな中、レナだけは静かに森の方向を見ていた。


「……ありえない」


小さな呟き。


シンがそちらを見る。


レナは目を細めたまま続けた。


「緑龍は縄張りを荒らさない。あれは森を支配する側」


「なのに周囲ごと壊してる……」


ダンも低く続ける。


「何かに反応している可能性がある」


沈黙が落ちる。


シンは無意識に拳を握っていた。


脳の奥で、静かに情報が流れる。


『警告』


『現在戦力では危険度が高いと予測』


(……だろうな)


怖くないわけじゃない。


むしろ逃げるべきなのかもしれない。


それでも、なぜか視線は森の奥へ向いてしまう。


そこに何かがいる。


そんな確信だけがあった。


「どうする?」

レナがこちらを見る。


短い問い。


シンは小さく息を吐いた。


『推奨:調査』


苦笑が漏れる。


「お前、本当に危険なの好きだよな」


『否定します。生存率向上を優先しています』


(同じだろ、それ)


小さく笑ってから、シンは頷いた。


「ああ、行こう」


その瞬間だった。


森の奥から、低い咆哮が響く。


空気そのものが震え、ギルド内の全員が息を呑む。


誰もが理解した。


森の主が、動き始めたのだと。

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