第32話 夜の会話
今回は村での一夜、少しゆったりした回になります。
戦闘から離れて、キャラクター同士のやり取りを中心に描いてみました。
それぞれの距離感や関係の変化も感じてもらえたら嬉しいです。
村の夜は静かだった。
焚き火の明かりと、遠くで鳴く虫の音。それだけで、昼間の慌ただしさが嘘みたいに落ち着いている。
簡単な食事と酒が用意され、自然と輪ができた。
だが、気づけば分かれていた。
男と、女で。
■男子側
グリスが酒を一口飲み、こちらを見る。
「……で、どうだった」
「今日の戦闘のこと?」
「ああ。あの群れ、正直どう見たんだ?」
少し考える。
(チャッピー)
『戦闘ログを整理』
(いらない)
「想定よりは単調だったな。対処自体はそこまで難しくなかったと思う」
グリスが軽く笑う。
「ずいぶん余裕ある言い方するじゃねえか」
「まあ」
ダンが静かに口を開く。
「……無駄がなかった」
少しだけ言葉を足す。
「動きも早い。判断も迷ってない」
「そうなんだ」
グリスが腕を組む。
「連携も悪くなかったしな。正直、最初より全然いい感じだぞ」
「それは助かる」
グリスが少しだけ真面目な顔になる。
「お前、自分で流れ作ってるの分かってるか?」
一瞬だけ間。
「……たまたまだな」
グリスが笑う。
「その“たまたま”便利すぎるだろ」
ダンがこちらを見る。
「……自分で決めてる」
「まあ、そうだな」
「迷ってない。だから早い」
(……チャッピーのおかげだけどな)
グリスが視線を少し落とす。
「まあ今のままでも戦える。ただな」
少し間を置く。
「頼りすぎんなよ」
「何に頼りすぎるなってこと?」
「自分のやり方にだ。便利でも、それに引っ張られすぎると判断鈍るぞ」
(……)
『警告:依存傾向の可能性』
(分かってる)
酒を一口飲む。
さっきより、少しだけ苦く感じた。
■女子側
マリーがにやにやしながらレナを見る。
「ねえ、ちょっといい?」
「……何」
「シンのこと、どう思ってるの?」
レナが一瞬止まる。
「……普通」
即答。
マリーが吹き出す。
「その“普通”、全然普通じゃない顔してるけど?」
レナは少しだけ視線を逸らす。
「……助かる」
「ほら、それよ。それ結構評価高いやつ」
「そう?」
「そうよ。戦闘もそうだし、さっきのもそう。ああいうの普通できないから」
レナは少し考える。
「……無理してない」
「ん?」
「できることをやってるだけ」
マリーが少しだけ真面目な顔になる。
「それができるのがすごいのよ。大体はどっかで無理するか、逆に何もできないかだから」
レナは黙る。
少し間を置いてから、ぽつりと。
「……嫌じゃない」
「何が?」
「一緒にやるの」
マリーがにやっと笑う。
「それ、かなりいい評価よ?」
「違う」
即答。
「はいはい、そういうことにしとく」
レナはそれ以上何も言わなかった。
だが、さっきより少しだけ表情が柔らいでいる。
■合流
やがて、自然とまた一つの輪に戻る。
グリスが立ち上がる。
「そろそろ休むか」
「そうね」
マリーが頷く。
ダンはすでに立っている。
レナも静かに動き出す。
俺もそれに続く。
横に並ぶ。
「……今日は」
レナが小さく言う。
「助かった」
「お互い様だろ」
そう返す。
レナは小さく頷く。
それで終わりだった。
夜は静かに更けていく。
戦いのない時間。
何も起きない時間。
だが――
(悪くない)
こういう時間も。
目を閉じる。
次に備えて、休む。
それだけだ。
第32話まで読んでいただきありがとうございます。
今回は男子組と女子組に分かれての会話回でした。
戦闘では見えにくい部分や、キャラクター同士の距離が少し近づいた回になっています。
こういう時間も大事にしつつ、次はまた動きが出てくる予定です。
引き続きよろしくお願いします。




