第30話 異常の収束と対策
森での戦闘の続きになります。
今回は戦いの後処理と、次に備えるための話です。
派手さは少なめですが、
シンとチャッピーの役割が少し分かりやすくなっていると思います。
森を抜けた瞬間、空気が変わる。村の方から人の声が聞こえる。慌ただしいが、悲鳴ではない。
「急ぐぞ」
グリスが足を速める。
入口に着くと、見張りに出ていた村人たちがこちらに気づいた。
「来たぞ!」
張り詰めていた空気が一気に緩む。
「冒険者さん……!」
「助かった……!」
散ったグラッジボアは数体が村の手前まで来ていたらしいが、数が少なかったため村人たちで対処できたようだ。
「被害は?」
グリスが聞く。
「家畜が少しやられただけです……人は無事です」
「そうか」
短く頷く。
レナが周囲を見て、小さく言う。
「……終わった」
(依頼は完了だな)
安堵が広がる中で、ひとつだけ引っかかる。
(また来たらどうする)
その疑問に、チャッピーが応じる。
『提案:防衛対象の限定を推奨』
(限定?)
『分析:対象は人間ではなく食料資源を優先して襲撃』
『最適防衛範囲:畑および家畜エリア』
(……なるほど)
村人たちに向き直る。
「畑と家畜小屋周辺のみ、防御線を貼りましょう。
完全に止めることはできませんが、突進の勢いは確実に落とせます。」
ざわめきが起きる。
「畑だけで……?」
「それで大丈夫なんですか?」
「グラッジボアは人を狙ってるわけじゃなくて、食べれるものに向かってるだけです。だからそこだけ止めればいいんです。」
ダンが低く言う。
「理にかなってる」
グリスも頷く。
「無駄も少ねえな。それでいこう」
マリーが肩をすくめる。
「それなら現実的ね」
チャッピーの情報をなぞるように、頭の中で構造を組み立てる。
「杭を打って、その間に鉄線を張る。その鉄線に棘をつけてください。棘は、そうですね 釘や削った木偏など尖ったものを巻きつけて下さい。これに突っ込んできたときに勢いが落ちるって算段です。」
村人たちが顔を見合わせる。
「それなら……材料はあります」
「すぐ用意できます!」
空気が変わる。不安が、行動に変わる。
「よし、手分けするぞ」
グリスが声を上げる。
ダンはすぐに杭を担ぎ、動き出す。マリーもその後を追う。
レナが短く言う。
「……手伝う」
俺も作業に加わる。
村の外周ではなく、畑の周囲。踏み荒らされた土の外側に線を引くように杭を打ち込む。
その間に鉄線を張る。
守る場所を、絞る。
『評価:防衛成功率上昇』
(ああ)
単純な構造だが、それでいい。完璧じゃなくても、何もないよりは確実に違う。
やがて作業が一段落し、畑と家畜小屋の周囲に簡易的な防護線が張られた。
村人たちがそれを見て、ほっと息をつく。
「これなら……」
「少しは安心できます」
その言葉で、ようやく実感が追いつく。
今回の依頼は終わった。
完全ではないが、結果は出た。
「これで当面は持つだろ」
グリスが言う。
「そうね」
マリーが頷く。
レナは短く言う。
「十分」
ダンは最後の杭を打ち込み、静かに立ち上がった。
俺はその光景を見て、ゆっくりと息を吐く。
(これでいい)
少なくとも、次に来た時の被害は減らせる。
やるべきことはやった。
「戻るぞ」
グリスが言う。
「報告もある」
俺たちは村を後にする。
背後では、村人たちが防護線を確かめながら動き回っていた。
守るために、準備する。
その流れができている。
一つの依頼は、ここで終わりだ。
第30話まで読んでいただきありがとうございます。
これで一つの依頼は一区切りになります。
今回は戦闘だけでなく、対策や準備といった部分も描いてみました。
チャッピーの提案が今後どう活きてくるのか、
そして今回の異常の正体についても、少しずつ触れていく予定です。
ここからは次の展開に入っていきますので、
引き続き読んでいただけると嬉しいです。




