<一>
いよいよスタート。
プロット通りに行けば良いんですが(汗)
アルガの2日。
アズルの街。
今日の「風の止まり木亭」は珍しく静かだった。
残っている冒険者は2人だけ。
2人は先程までは軽く雑談をかわしていたが、今はそれにも飽きたのか1人は魔導書らしきものを開き読書中。
もう1人は自分の弓の手入れをしていた。
「…それ、4度目。」
魔導書から目を上げて指摘をしたのはディー。
数ヶ月前にこの宿の冒険者となった錬金術師だ。
ローブに包まれた身体からはよくわからないが、その顔立ちから、まだ若い少女から成人の女性になりかけの年頃だとわかる。
「え、そうだった?」
声を掛けられたのも若い。
その先が少し尖った耳を見るまでもなく、エルフの女性。
ディーと同じ日にこの宿の冒険者になったフィリアだ。
「ディーも先刻から同じ本を読んでるでしょ。」
そう返すフィリアに、ディーは微かに視線を空に彷徨わせる。
そんな仕草が彼女の動揺を隠す行為だ、ということが判るくらいには、2人の交流は深まっていた。
2人が宿に残っているのは、言うなれば「暇」だから、ということに尽きる。
彼女らが普段行動を共にしている「風追い人」の面々は現在長期の依頼に出かけてしまっている。
難易度が高い、ということで2人は留守番ということになったのだ。
「…暇。」
「暇だね。」
そう言うと2人そろって溜息をつく。
彼女等(水準以上の容姿をしている)なら、こんな時の相手になってくれる異性はそれこそ辺りにゴロゴロしている。
だが、彼女達にその気がないため、結局若い女性が宿で暇をつぶしている、という非生産的な光景が見られる、という訳だ。
かといって2人で依頼を受けるか、というとこれまた厳しいことになる。
2人は基本は後衛職なため、2人だけでできる依頼となると、非常に種類が限られる。
臨時で他のパーティと一緒、ということも考えられたが、そうそう都合の良いパーティもいない。
(ディーを誘って買い物にでも行こうかしら。)
そんなことをフィリアが考えていると、宿の主人ギドが近寄ってきた。
「おい、ディー。お前宛に依頼が来たぞ。」
その声に訝しげな顔をするディー。
この宿の冒険者になってからまだ数ヶ月。
名指しで依頼が入る程有名になった覚えがない。
「レンナントの『鋼鉄の顎』から回ってきたぞ。」
それを聞いてディーも半分納得する。
以前、拠点にしていた宿になら名指しの依頼が来てもおかしくない。
ただし、それでも不審な点があった。
「…どんな依頼?」
暫くザナス王国に戻る気はない。戻るにはつらい記憶が多すぎた。
「カンダスのニュールカイムの『ヒューム・ダグラス』からの依頼だ。」
その名前を聞いてディーは引き受ける決意をした。
「…行く。」
そう言うとさっさと自分の部屋に向かってしまう。
旅に出る準備をするためだ。
思わず呆然とその後ろ姿を見送ったフィリア。
が、はっと気がつくと慌ててディーを追いかける。
それを更に見送ったギドは、
「まだ依頼の説明をしちゃいねえんだが…。」
そう呟いて溜息をついた。
結局、ディーはフィリアと二人で依頼を受けることになった。
依頼の内容が「危険があるかもしれない調査」だったからだ。
依頼書にも「できれば複数人で」という但し書きまで付いていた。
ニュールカイムまではアズルから10日近くかかる。
何故かしら焦るディーに急かされて、フィリアもすぐに旅支度を調える。
「気を付けていってこいよ。」
そのギドの言葉を背にして、ディーとフィリアはその日の内にアズルの街を後にした。




