<二>
今回も短め。
アルガの4日。
(誘われているな。)
シィンは宿の一階の酒場でそう思いを巡らせていた。
このところ行く先々で「不死者らしき存在」についての噂話に出会う。現にこの酒場でもそうだった。
「なあ、不死者が出たってよ。」
「おう、聞いたぞ。花屋のカザルが見たってやつだろ?」
「えっ。」
「なんだ違うのか?」
「俺が聞いたのは衛視のギムが見たやつだよ。」
「そいつは初耳だな。」
「だけど本当かねぇ?」
「…まあ、嘘だろうな。」
「嘘じゃないにしても見間違いだろ?」
「だよな。不死者が出て、誰も被害に遭わないなんてよ。」
「違いない。」
「おおかた、何かの影を見間違えたか、良くて盗賊だろう。」
「まあ、出てきたら俺がとっつかまえてやるがな。」
「この前ゴブリンに後れをとったお前が、か?」
「ちょ、ちょっと待て、あれはだなあ…。」
この調子で酒の席の笑い話になっている。
しかし、シィンは2つの理由からこの話が本当だと知っていた。
1つ。
目的に関係しない被害者を出さない不死者を知っていること。
2つ。
シィンがある方面に向かう時に噂に出会うこと。
具体的に言うならカンダス方面に向かう時にだけ、噂に出会うのである。
自分を監視し、あきらかに自分の行き先を誘導している。
(カンザスに来い、ということだな。)
そう結論を出すと、シィンは部屋に引き上げることにした。
そちらが誘うならのってやる、そして必ず斃す。
(今度こそ決着を付けてやる。そのための「力」もある。)
思いながら腰の剣に手を触れる。
数ヶ月前に「還らずの迷宮」で手にした己の愛剣。
それが、自分の想いに応え軽く震えたような気がした。
「斬る。」
決意を込めた呟きが唇から漏れる。
必ず目的は果たす。
そのためにも、明日は早く出発することに決めたのだった。
闇の中。
短い「会話」が交わされる。
=どうやら、うまく誘導できた。=
-ふむ、では儂は一足先に向かうとする。-
=こちらはもう少し観察するとしよう。=
-何かあれば…-
=ニュールカイムへ知らせれば良いな。蝙蝠を飛ばす。=
-頼んだぞ。-
=判った。=
それきり、闇に静寂が戻った。
街の名前の間違い訂正。
ニュールカルム× ニュールカイム○




