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Watch ~監視者~  作者:
「精霊の迷宮」
71/98

<三十四>

更新が途切れ途切れになってます。


そのわりに短め。

ごめんなさい。

 宝物庫の中は意外に広かった。

 ただし、周りには何も見えない黒い壁。

 その隙間を縫うように通路が続いている。

 その通路をシィンとディーの二人は並んだまま黙々と歩んでいた。

 振り返ってみると今まで歩いてきた通路は朧にかすんで見える。

 「…どこまで…、っ!?」

 ディーがシィンに話しかけようとした時。

 突然シィンが立ち止まり右手を挙げて、ディーを制した。

 眼でディーがシィンに問いかけると、

 「何か聞こえなかったか?」

 とシィンが逆に問い返した。

 首を横に振ってディーが答えると、シィンは軽く頷くと改めて周囲の気配を探るように集中した。

 つられてディーも耳を澄ます。

 と。

 『……』

 確かに何か聞こえた気がした。

 はっとしてシィンを見上げると、

 シィンはまた軽く頷いた。

 「行くか。」

 「…行く。」

 短い受け答えをした後、二人は先程より心持ち早足になりながら、前へと進んでいった。

 それから7、8ピン程歩いた頃。

 既に入り口からは10ヘロル程も来ただろうか。

 周囲の景色が変わった。

 黒い壁が続くのは変わらず、ただ、通路ではなく丸い小部屋へと辿り着いたのである。

 中央には一振りの剣が安置された台座が一つ。

 細身の剣で、鞘から柄まで漆黒の拵えになっていた。

 (…あれがシィンさんの求めていた剣…。)

 ディーがその剣を見つめていると、シィンが一歩前に出た。

 丹念に台座の周囲に罠がないかどうか調べた後、剣を手にするシィン。

 と、突然、空中に人影が浮かび上がった。

 身長はディーよりも低いが、年齢はおそらく軽く数倍を超えているだろう。

 腰まで髭を伸ばしたノーム族が空中に浮かんでいた。

 思わず身構えるディーにシィンが声を掛ける。

 「魔法で記録された影だ、心配はない。」

 その声が終わるのを待っていたかのように人影が話し始めた。

 『ようこそ、精霊の迷宮の宝物庫へ。ここに来ているのがシィンならばその剣を持って行くが良い。お前さんが必要だと感じたのだろうからな。もし、シィンという名前でないのならば、剣を置いて立ち去るが良い。何もわざわざ魂まで破滅する必要はないじゃろう。何より、剣に拒まれて持つことすらできぬじゃろうが。』

 そこまで話すと人影は一旦、話すのを止めた。

 『迷宮に訪れし者よ。この迷宮には意思があり、宝物庫の中身にもまた意思がある。そのことを忘れるな。MTMS=MNNM=TBRHHRK。求めし者に扉は開く。しかし、それは「彼ら」が求める者…、主等が求めたに非ず。己の力を過信すること無きように。この世には知るべきでないこと、触れるべきではない者が存在する。彼のウムル・アト=タウィルの炎に焼き尽くされた愚か者のようにならんことを我は望んでおる。訪れし者よ、『彼ら』と共に在らんことを。』

 そこで、人影は急に咳き込んだ。

 『ここに来たのがシィンだと信じて、言葉を残しておく。儂は後、数日で死ぬじゃろう。さすがに600年は長かったわい。シィンよ。儂より長く生を繰り返す者よ。できればお主の目的が果たされ、お主に安寧が訪れることを願う。例え叶わぬ願いだとしても。それが儂にできる最後のことじゃ。』

 どうも死ぬ間際の自分の姿を魔法で記録していたらしい。さらに咳き込む人影。

 『どうやら、もう儂の時は残っておらぬ。さらばじゃ、シィン。』

 そこまで話すと人影は急に薄れていった。

 「世話になったな、グルド。」

 そう短く告げると、シィンは消えた人影に頭を下げた。

 それから改めてシィンは手に入れた剣に目を落とし、鞘から剣を抜きはなった。

 その剣は刃まで漆黒。

 全ての光を吸い込むような黒色の刃。まるで剣の形をした闇がそこに切り取られて存在しているようだった。

 (…魂が吸い込まれそう。)

 隣で見ていたディーがそんなことを考えた時。

 『やっと会えた。』

 そんな声が響いた。

 「え!?」

 思わず周囲を見回すディー。

 「どうした?」

 そんなディーの様子をみて不審気に問うシィン。

 「…今、声が…。」

 「何も聞こえなかったが…?」

 鋭敏なシィンが聞いていなかったのなら、きっと空耳なのだろう。

 そう考えて、ディーは自分を納得させようとする。

 しかし、何処か聞き覚えのある女性の声だったのだが…。

 沈黙して自分の考えに没頭するディーにシィンが声を掛ける。

 「カイト達が待っている。帰るぞ。」

 その声で思考の渦から自分を取り戻すディー。

 「…うん。」

 2人は剣のあった部屋を後にした。


 静寂だけが残った部屋に微かな声が響く。

 『出会うたの、剣と欠片が。』

 『ああ。』

 『良かったのか?』

 『分からん。』

 『剣は持ち主へと帰った、今はそれだけ、だな。』

 『彼の者達の運命は我らの手を離れた。せめて願いが叶わんことを。』

 『誰に願うんだい。僕たちが。』

 『…神、かの。』

 『神に何とかなるとは思えんが。』

 『それでも、彼らを待つ運命を思えば願わずに入られんよ。』

 『グルドも案じておったな。』

 『そうだね。』

 それきり声は絶えた。  


※前話でのシャリーの解釈は間違っている。「宝物庫の中身を必要とする者に扉が開く」のではなく、「宝物庫の中身が必要とした者に扉が開く」のが正解。そのためにシィンとディーにのみ扉が開かれた。どちらの条件でもディーとシィンにだけ扉は開くので、シャリーは後になるまでこの間違いに気づかない。

ウムル・アト=タウィル。


知っている人は知っている。

禁断の次元扉の案内人にして番人です。

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