<二十三>
難産だった…。
その割に短め。
荒涼とした荒野。
果てがあるのか無いのか。
それさえ解らない。
そこにただ一人、シィンはいた。
白い銀世界、連なる山脈。
そこは人族を拒絶するような峻厳な頂が並んでいた。
その頂上にカイトはいた。
薄暗く、どこか輪郭が曖昧とした町並み。
どの通りにも人影は見えず、滅びた街か遺跡のよう。
そこにディーはいた。
どこまでも続く暗い坑道のような洞穴。
前を見ても、後ろを見ても終わりが見えない。
何か巨大な魔物の腸の中にでもいるような感覚がする。
そこにグレンはいた。
果てしなく続く草原の中。
草原だというのに、なぜか生命の気配はない。
それはまるで草原の形をした砂漠だった。
そこにシャリーはいた。
鬱蒼と樹木が茂る密林。
太陽の光は差し込まず、暗い樹の影が続く。
通常居るはずの鳥や獣の気配すらしない。
そこにファーサイトはいた。
茫洋と打ち寄せる波が響く海岸。
海岸の果ては見えず、空には太陽もない。
黒いうねりだけが、打ち寄せる。
そこにケイトはいた。
それぞれの場所で目覚めた彼らは一様に困惑していた。
何故、自分が此処にいるのかも解らない。
(迷宮にいたはず…?)
仲間の姿は誰一人見えない。
(じっとしていても仕方がない…)
とりあえず、歩き始めた。
歩いても歩いても景色は変わらず。
やがてその足は止まってしまった。
と、周囲に気配が湧き上がる。
まわりに立ち上る気配は、やがて凝り固まり、一つの影となった。
その影の顔を見て思わず声を上げる。
「おまえは!?」
「あなたは!?」
その瞬間、確かに違う場所にいた全員が同時に声を上げた。
その声は仲間には届かず、目の前の影に吸い込まれていった。
それぞれにとっての悪夢が人の形をして現れていた。




