<二十二>
現在、一行は作戦会議中だった。
「先刻の様子を見ると、一定の距離まで近づくと攻撃されるようだな。」
「ということは、十分補助魔法を掛けることが必要ね。」
「それに、先制攻撃で遠距離から魔法攻撃も有効でしょう。」
「ただ、あの攻撃に移る速さは驚異だぞ。」
「ブレスもかなり強力だから備えが要るのぅ。」
「ディーやシャリーだと一撃で危ないな。」
有効と思われる攻撃手段や、懸念されるポイントを並べながら作戦を立てていく。
大まかながら、作戦が決定するまでに20ピン程が必要だった。
決定した作戦は補助魔法を充分に掛けた後、シャリーとケイトで遠距離攻撃。
ディーは人造生命で牽制、攪乱。
シィン、カイト、ファーサイトが前衛で攻撃。
グレンは回復に徹する。
オーソドックスだが、まず間違いない作戦である。
いよいよ決戦に入る前にシィンが全員に告げる。
「危ないと思ったら退け。」
当然とも思える指示だが、事情を知る「風追い人」にはその裏の意味も伝わった。
(誰かの「死」によって「呪い」を発動させたくない、ということ…)
シィンにとって、誰かの死によって目的を果たしても、それは無意味に近い。
「呪い」を解くために「呪い」の力を借りる。そのような矛盾が許せない。
そんなシィンの心情を「風追い人」のパーティはほぼ正確に把握していた。
ただ一人事情を知らないディーは、急に重くなった雰囲気に、
(…やっぱり足手まといかも。)
と軽く落ち込みそうになっていた。
試練の間と同様に、目一杯の補助魔法で身体能力の向上と、防御力を上げる。
「じゃあ、行くぞ。」
その声と共に全員で広間に飛び込んでいく。
作戦は万全だった。ある1点を除いて。
彼らが失念していたことは、此処が「還らずの迷宮」と呼ばれる場所だったこと。
「何故」そう呼ばれていたのか、その理由をいつの間にか忘れてしまっていた。
精霊王との戦闘が続いた為か。
「鍵」を持っていた為か。
予備知識のあったシィンも、宝物庫のある階層の情報を知らなかった事にも原因があるだろう。
この迷宮で一番危険な物(罠)についての警戒心が下がっていた。
その心の間隙を突くように、罠が発動した。
最初に闇。
周囲が一瞬で闇に包まれた。
次に音が消えた。
最後に身体の感覚が消えた。
彼らに残されたのは意識だけだった。
外側から広間を見ていたら、その光景は次のように見えただろう。
走り込む7人。
次の瞬間、全員が糸が切れたように床に崩れ落ちてしまう。
後には人造生命だけが彼らの上を周回して飛んでいた。
この広間に仕掛けられていたのは「魂の監獄」。
魂のある者を捕らえ、心の傷を刺激し、抉り、精神を破壊しようとする罠である。
それ故に魂を持たぬ人造生命は罠に掛からなかったのが仇になった。
『立てるかな?』
『わからんの。』
『魂の力次第だよね。』
『立って欲しいものよ。』
その様子を見ていたのは精霊王達だった。
制約のため、どのような罠が待っているか告げることはできなかった。
しかし、各々が加護を与える程に気に入った面々である。
罠を切り抜ける事を願う精霊王達であった。




