<二十一>
今回はディーが活躍します。
冒険者として錬金術がどのように役立つか、少しでも書ければいいなと思います。
隠し通路から階段を下りていく。
階段は長く、100ミトルくらいは降っていく。
周囲は迷宮と同様、壁自体が発光しているため、物を見るのに不都合はない。
しかし、階段を降るに従い、空気も重く、暗く変質していくようだった。
その変化に思わず身震いして、首を竦めるディー。
だが、その空気の変化に相違して、宝物庫までは順調すぎるくらい順調だった。
「というわけで、宝物庫の前まで来たわけだが…。」
「あれは動くわよね。」
「多分…。」
現在、一行は宝物庫へ続く扉がある広間の手前で、中を覗き込んでいる状態となっている。
その部屋の差し渡しはかなり広く、100ミトル以上はあるだろう。天井も高く、どう見ても40ミトル以上はあった。
「大きいな。」
そう呟くファーサイト。
しかし、それは部屋の広さについて述べたものではない。
彼の目はその広間の一点に向けられていた。
扉の前に「ガーディアン」が見えていた。
そう、それは巨大と言っても良い物だった。
全長は15ミトルほど。
その形はドラゴンに似ていた。
ただしその肌は金属。
その瞳は水晶。
その牙や爪は鋼鉄であった。
「ドラゴン型のゴーレムじゃろうな。」
確かめるかのように呟くグレン。
単純にその大きさだけでも強敵だ。
その上、この迷宮の創造者が残したゴーレムである。
どのくらいの強さなのか想像も付かない。
「最低限、中級種のドラゴン並の強さはあるだろう。」
「この迷宮のこと考えれば妥当ね。」
カイトとケイトは過去に対戦した強敵の中でも、最も強い敵を思い浮かべた。
(ちなみに、中級種のドラゴンとは引き分け。)
「ディー、先程の人造生命を飛ばせるか?」
シィンが声を掛けるのにディーが肯く。
「じゃあ、部屋に飛ばしてみてくれ。」
その声に、ディーは自分の懐から2本のガラス瓶を取り出す。
片方には青黒い液体が、もう片方には薄いバラ色の液体が入っていた。
それを床に杯一杯分程ずつ垂らし、杖でかき混ぜながら呪文を唱える。
そのかき混ぜ方は、何か紋様を描いているようでもあった。
-万物の元たる原初の液-混沌-誕生-人造生命-
呪文に合わせ、混ざり合った液体の中から灰色の身体の人造生命が生み出される。全体の形は鳥のような形をしていたがそれに蛇のような尻尾とトカゲのような足がついていた。
「すごいですね、即席でここまでできるとは。」
シャリーが感嘆の声を上げる。知識として錬金術は知っていたが、実際に人造生命作りを見たのはこれで2度目である。
シャリーの声に思わず照れるディー。
数種類の魔法薬に、マナを練り込み、呪文で人造の生命を産み出す。
或いは通常ではあり得ないような効果を持つ薬品を産み出す。
魔法の中でも特に「産み出す」「変化させる」事に特化した魔法。
それがディーの修めた錬金術である。即時的な攻撃呪文は少ないが、このような偵察、隠密行動、行動補助などに優れた効果を現すため、錬金術師は重宝がられることが多い。 ディーの腕はその錬金術師達の中でも上位に位置する物であった。
生まれた人造生命は、このような急ごしらえでは精々10ピン程の寿命しかないが、部屋にいる「ガーディアン」が、どのような反応をするのか探るのには充分であった。
「…行って。」
ディーの声に従い、飛び立つ人造生命。
ディーの思考によって、「ガーディアン」の周囲を円を描くように飛びながら近づいていく。
変化はない。
また近づく。
まだ変化はない。
あまりの変化のなさに、あれは実は置物なのでは、という疑いまで抱き始めた時、それは起こった。
人造生命が消滅した。
それが最初に知覚できたこと。
いや、最初は一瞬の光だったかも知れない。
次いで、何時の間にか「ガーディアン」の首が動いていたことに気づいた。
このメンバーに視認させない動きをする「ガーディアン」。
その事実が一行に凄まじい緊張感をもたらした。
※通常、人造生命を作るためには、実験室のような魔法的環境の整ったところでなければ難しい。即席でも迷宮の中で作ることができたディーの錬金術師としての腕を見て、シャリーは感心した。
次は戦闘の予定。
戦闘シーン、うまく書けると良いなぁ…。




