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Watch ~監視者~  作者:
「精霊の迷宮」
39/98

<二>

 「そういえばお前らに話があるんだが…」

 ギドが、そう声をかけたのは、カイト達の食事が一段落付いたころだった。

 「ん、なんだ親父。恋愛相談か?」

 「んなわけあるか!そうじゃなくて依頼の話だ。」

 「え、今回はちゃんと依頼は果たしたぞ?(ケイトの暴走も止めたし)」

 「(よくやった)そうじゃなくて新しい依頼だ。」

 「何よ、もう働かせる気?それと、今2人とも何か余計なこと言ってなかった?」

 「気のせいだ。」

 「何も言っておらん。と、それより名指しの依頼が来て、な。」

 カイトがごまかし、ギドが話題の転換を図る。この辺は長年の付き合いによる連携がとれている。

 ケイトは納得しきれないようだったが、「名指し」という所がより気になったようで、ギドに問い返した。

 「誰からなの?正直、今はあんまり長期のは受けたくないし…。」

 「ん?ここん所、そんなことばかり言ってやがるな、何かあったか?」

 「…ええ、少し。」

 シャリーがギドに答えた。実は、この所「風追い人」は依頼の合間を縫って『彼ら(不死者)』のことを調べていたのだ。

 今回の依頼も、商団の護衛という「風追い人」の実力から考えれば役不足ではあったが、行き先が王都、ということもあり、向こうで調査することも兼ねて出向いたのであった。

 しかし、実際は殆ど収穫がなかったところに重なって、依頼人がネチネチと絡んできたこともあり、ケイトは大荒れなのであった。

アルフォード達の最期を知り、更にカイト達の気性もよく知っているギドは、

 (止めても止まらねえだろうな。…)

 とため息一つ付くと、

 「無茶だけはするなよ。」

 と声をかけた。

 もちろんカイト達も、ギドの気遣いには気づいている。

 「わかってるよ。」

 そう、笑いながら返した。

 「それで、話というのは?」

 さりげなくシャリーが軌道修正を図る。

 この辺の気遣いができるところも、シャリーの人気の一つである。

 先日も立て続けに3人ばかり交際を申し込んできた冒険者がいた。もちろんカイト一筋のシャリーの前にあえなく轟沈していたが。

 ギドも暇ではないので、シャリーの軌道修正にのった。

 「おう、昨日の朝、まだ宿も開けてないうちにそいつが来てな。」

 「そんな早くから?よほどの急ぎか?」

 珍しくファーサードが口を挟む。

 「風追い人」はお人好しの集まりであるが、周囲からはファーサイドは例外と見られていた。実際の所は周囲がお人好しすぎるので、ファーサイドが仕方なく警戒役を務めている、というのが実情である。(カイトに任せておくと依頼料を半額にしてしまったり、ケイトなどは金にならない依頼を受けたりする。)

 この獣人は見かけによらず結構情にもろく、苦労人だ、と言うのがパーティ内及びギドの評価である。だからといってファーサイドの苦労が減るわけではないが。

 (ケイト曰く、「好きでやっているから良いのよ」グレン曰く「誰かがやらねばならぬ苦労だからの」で丸投げされている。)

 しかし、宿が開く前から駆け込んでくる依頼となれば、ファーサイドならずとも緊急かつ重大な依頼ではないか、というのは十分予想できることだったので、カイト達も特に何を言うこともなく、ギドの次の言葉を待った。

 「いいや、急ぎじゃねえぞ。」

 だから、パーティ全員がこの言葉に肩すかしを食った気がしたのは仕方がないだろう。

 「何だ、心配して損した。」

 ケイトが全員の気持ちを代弁して呟いた。

 「朝早く来たのは、お前達が他の依頼を受ける前に押さえたかったからなんだと。」

 言われてみれば、確かに名の通っているパーティを押さえようと思えば、誰よりも早く依頼すれば良い、というのは当たり前である。そのことに思い至らない所に「風追い人」というパーティのお人好しな部分が表れていた。

 (だから、こいつ等から目を離せないんだよなぁ。)

 内心でギドはそう嘆いていたが、それを表情には見せず、

 「それで、依頼に出ている、と伝えたら、ジュネの3日にもう一度来るとさ。」

 「今日はマイムの30日よね。じゃあ後3日待たなきゃいけないの?」

 「先に準備を済ませてくる、とかいってたぞ。」

 「まるで、俺たちがもう依頼を受けたような口ぶりだな。」

 カイトが不機嫌そうに呟く。

 ギドはその瞳に何か面白がっているような色を浮かべて、

 「ああ、俺が受ける、と返事しておいたからな。」

 「ちょっと、何、勝手なことをっ…」

 ケイトが立ち上がって文句を言いかけるが、ギドが放った次の言葉で続きを飲み込んだ。

 「前金で1万、成功報酬でさらに倍額。こんだけあればお前達の1年分のツケが消える。」

 ツケを持ち出されると、何も言えなくなる。

 お人好しであるが故に、ギドに対して溜め込んでいるツケもまた多い(依頼料を取りはぐれるため)のだ。

 カイトは溜息をつくと、

 「…で、依頼の裏は取ってあるんだろうな。」

と、ジト目でギドに聞くと、これまた、人を食った答えが返ってきた。

 「いいや、取ってねえぞ。」

 「金に目が眩んだのかよ…。」

 がっくり肩を落とすカイト。

 その様子をニヤニヤ笑って見ていたギドが、最後に爆弾を落とす。

 「依頼人の名前は『シィン』だと。」

 それを聞いて「風追い人」のメンバーはそれぞれ驚きの声を上げた。


※12ヶ月はそれぞれ昼と夜、光と闇を司る「エリダンテ」の子どもにちなんで順に、

「ジャイニ」「フェア」「マール」「アイプ」「マイム」「ジュネ」「ジュール」「アルガ」「セイプ」「アクト」「ノル」「ディズ」と呼ばれる。ちなみにジャイニとフェア、マールとアイプなど、それぞれが男性と女性の双子である。日にちは「ジャイニの3日」というような呼び方をする。


いよいよストックが無くなってきた。


更新が遅めになりそうです。

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