<三>
ジュネの3日。シィンとの約束の日である。
シィンは約束どおり現れた。
「無事だったか。」
「ああ。」
カイトとシィンが言葉を交わす。言葉数の少ないやりとりだったが、それだけで互いの気持ちは伝わったようだった。
積もる話はありそうだったが、カイト達とシィンは宿の奥の小部屋に移り、依頼の話をすることにした。
(そう言えば、アル達とこの部屋で依頼の話をしたんだったな。)
そう思うと、カイトは奇妙な巡り合わせを感じた。
部屋に移って開口一番、ケイトが尋ねた。
「奴らの居場所がわかったの?」
わかり次第、今すぐ跳び出すような剣幕である。
それをなだめるような口調でシィンは答えた。
「いいや、まだだ。」
それから付け足すように、
「彼奴らの眷属とは二、三やり合ったが…。どこにいるかは掴めていない。」
と言った。
「そうなんだ…。」
とがっかりしたようなケイトを横目にカイトが尋ねる。
「それならなぜ来たんだ。情報交換ということでもないだろう?」
それにうなずくと、シィンが話し始めた。
「発想の転換だ。」
「というと?」
「探しても見つからない、なら、出て来てもらえばいい。」
「まさか、呼び出すのか?」
「そのまさかだ。」
「一体どうやって?招待状でも出すのか?」
ここで一旦シィンが会話を切った。
それから、直接関係のないことを話し始めた。
「彼奴らが俺を使って、何か実験しているのは憶えてるよな。」
「ああ。」
「その内容は?」
「確か、シィンの『強さ』を求めているような…」
「そうだ。」
「それで?」
カイトにはまだ話の流れがつかめない。
「だから、そういうことだ。」
「悪い、よくわからんのだが…。」
困ったカイトは、隣にいるシャリーに眼で助けを求める。(例によって他の面々は二人に話し合いを任せている。)
シャリーはカイトの後を受けてシィンに話しかける。
「間違っていたら済みません。彼らはシィンさんに『強く』なることを望んでいる。」
「そうだな。」
「だからシィンさんが『強く』なることで彼らの興味を引こうということでしょうか?」
「そういうことになる。」
そこで、ようやくカイトも納得できた、という顔をした。
「で、どうやるんだ?ザナスの闘技場にでも出場するのか?」
「それは、もうやった。」
冗談のつもりで言った言葉にあっさり頷かれ、思わず言葉を詰まらせるカイト。
ファーサイトがその横で
(…なるほど、動きに型があるようでなかったのはそのせいか…)
と呟いていた。
剣闘士は生き残るのが全てで、きれいな型、等というものは余り重視されない。もちろん基本はあるが、その合間に目潰し有り、蹴り有り、と何でも有りである。
シィンとアル達、そして不死者との闘いで、ファーサイドはシィンの闘い方が変幻自在だったことが印象に残っていたのだ。
「まあ、シィンさんの経歴についてはおいておくこととして。」
そう言ってシャリーが本筋に戻した。
「結局、どうやって『強く』なるんですか?」
「だから、カイト達に依頼に来たんだ。」
「私たちと訓練でもするのですか?」
「それも魅力的な案だが、今回は違う。」
そこで改めてシィンはカイト達全員を真剣な眼で見つめ、そして告げた。
「『還らずの迷宮』に一緒に潜って欲しい。」
※ザナス王国では武を重んじる気風がある。別名「剣の王国」。そのため、貴族同士の勢力争いでも、どれだけ優秀な剣闘士を抱えているかで決まることが多い。(それぞれの貴族の代理として決闘を行う。)剣闘士の闘いは非常に人気があるため大きな都市に闘技場があるのが普通である。特に王都の闘技場はエルシューン大陸で随一の規模を誇っている。ただ、剣闘士の闘いといっても、必ず相手を殺すわけではない。相手が気絶するか、降参するかで決着がつくのが普通である。
ちょっと短めですが切りがいいので。




