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Watch ~監視者~  作者:
「悲しみの森」
34/98

<三十一>

闘い終わって…。

 「ところで…」

 ケイトが若干、険のある目で(フィリアを刺したことについてまだ腹を立てていた)シィンを見ながら言い出した。

 「フィリアのことはどうするの?」

 返答次第では許さない、という雰囲気がありありだった。

 「どうするとは?」

 「だから、フィリアは貴方のことがっ…」

 その言葉をシィンは右手を挙げて遮った。

 「お前達に話していないことがある。」

 「…何よ?」

 「俺にはもう一つ、呪いがかかっている。」

 暗い目をしたまま、言葉を続けるシィン。思わず無言になり、話を聞くカイト達。

 そして、今日最大の驚きを味わう。

 シィンは今までに不死者達と300年以上闘っているのだという。といっても「現在」のシィンは18才。不老不死というわけでもない。

 シィンは「転生リーンカネィション」を続けている、というのだ。死ぬと次の生が始まる。

 「まあ、不死者に殺されて、また闘って、の繰り返しだったよ。」

 淡々と告げるシィンの今までの歩みを想い、カイト達は言葉を無くした。

 今回と同じようなことを幾たびと無く繰り返してきた、そう告げているのだ。

 今まで、どれほどの親しい人の血でその手を染めてきたのか。

 「俺が…一番最初に殺したのは…恋人だったよ。」

 そういってシィンは語るのを止めた。

 ケイトはその言葉に込められている意味を覚った。自分の問いに対する答えなのだと。

 フィリアとは共にいられない。いれば、殺すことになるから。

 嫌いなわけじゃない、好きだから、離れるのだと。

 「その呪いは…解けるのですか?」

 シャリーが擦れ声で訊ねる。

 「方法は二つ。」

 あっさりシィンが答える。

 「一つ目は復讐を諦めること。そうすれば死ねる。」

 シィン以外にも何人か実験材料にされた者達はいるらしい。

 シィン自身、一、二度同じ境遇の者に出会っている。

 しかし、前回の生の時には不死者達が、シィンを含めて後2人だと告げたという。

 「残りは全て復讐を諦めた」と。

 「そしておそらく、今は俺一人だ。」

 なぜなら、今までとは違い、今回は闘いの場で人質をとるような真似をしたこと、そしてシィンを殺さずに去ったこと。それはシィン唯一人が残ったからだろうと。

 「もう一つは?」

 「二つめは奴らを滅ぼすこと。単純だろう?」

 確かに単純だった。復讐を諦めるか、復讐を成し遂げるか。二つに一つ。

 (…残酷な呪いです。)

 シャリーはそう考え、身震いした。

 自分の愛しい人間、家族、親しい仲間を殺された復讐を諦めるか。

 とてつもなく強大な相手を滅ぼすか。

 前者なら、諦めてしまう自分自身を呪いながら死ぬことになるだろう。

 後者なら、自分の手を愛しい者の血で濡らし続けることになるだろう。

 それでもシィンはここにいる。

 その精神の強靱さは瞠目に値した。



 シィンが立ち上がった。

 「もう、行くよ。」

 そう言うとカイト達に背を向け、出口に向かう。

 「アズルの『風の止まり木亭』だ。其処に連絡をくれ。」

 その背中にカイトが声をかける。

 シィンは、振り返らず片手をあげて答えると、そのまま去っていった。

 「フィリアが目を覚ましたら、俺たちも行くぞ。」

 カイトが仲間達に声をかける。

 (フィリアに何て言おうかしら…。)

 ケイトはそれを悩みながらも、うなずいた。

 とにかく、生き延びたのだ。ならば、前に進むための一歩を踏み出さねばならない。

 たとえ、それがどんなに辛い道だとしても。

 ケイトには、シィンの背中がそう言っていたように思えた。


戦闘も、戦闘の後も難しい…。


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