<三十二>
第1話終了です。
あれから2週間。
カイト達はフィリアをエルフの里に送り届けた。
アルフォード達の遺髪と、言霊の水晶と共に。
水晶には今回の事件の顛末。
シィンの追跡は無意味なので取り止めること。
フィリアの今後を頼むこと。そして…。
「フィリア、すまない。」
という言葉が記録されていた。
先に逝くことを謝ったのか。
それともシィンを連れ戻せなかったことを謝ったのか。
シィンと闘うことになったのを謝ったのか…。
その言葉を聞いたフィリアは、ただ黙っていた。
その瞳から一筋の涙を零して。
フィリアには里に来るまでに、シィンの呪いのことを全て話してあった。
その話を聞いた時にも、フィリアは黙ったままだった。
そして、同じように一筋、涙を零していた。
(強い娘じゃ。)
グレンはそう思った。
フィリアくらいの年頃なら泣き叫び、崩れ落ちても不思議ではない。
父親代わりと、師匠、そして好きな男との別れ。
それだけの出来事を、二筋の涙だけで耐えたエルフの少女を、素直に強い、そう思った。
(アルフォード、ビロウズ命を賭けた意味はあったようだぞ。)
心の中でファーサイドは2人に呼びかけていた。
フィリアはきっと前を向いて生きていくだろう。
森の若木がいつかは大きな木となるように真っ直ぐ。
2人の想いをフィリアが受け継いだことをファーサイドは理解していた。
カイトとシャリーは同時に同じことを思っていた。
(きっと、フィリアはシィンを追う。)
それは確信だった。
言葉に出さないフィリアの想い。
涙に込められた想い、それは2人にはフィリアがこれから歩いていく道標に見えた。
(フィリアの瞳は碧いんだ…。)
涙を零すフィリアの横顔を見てケイトは、ふと、そんなことを思った。
空の青ではなく、深い森の中に秘められている泉のような碧。
それは、とても悲しい色に想えた。
次の結も連続投稿です。




