<二十九>
長かった…。
ようやく戦闘は決着?
フィリアは、半ば意識を失っていた。
目の前の情景がどこか希薄で非現実的に感じていた。
或いはそれは、精神が崩壊を防ぐための本能的な防御だったのかもしれない。
ただ、自分のせいで、アルフォード達が命を落としたこと、シィンと不死者の闘いの邪魔になっていることは朧気ながら理解していた。
(わたしはついてこなければ良かった…。)
そんな思いだけが、彼女の心の中に渦巻いていた。
(わたしがいなければ…)
そう思いながらも自分の身体は自由にならない。
不死者に捕らわれ、思うがままに振り回されている。
それはフィリアを間に挟んだ、不死者とシィンの死の舞踏。
(ここで死ぬんだ…)
それを定められた未来として、フィリアは受け入れていた。
(まだ、まだだっ!)
ちろちろと精神の中で燻る焦りと不安。その炎に焼かれながらシィンは闘っていた。
自分の能力上昇も後1ピン程で限界を迎える。
それを過ぎれば待っているのはこの場にいる全員の確実な死。
並の者なら、いや、一流の戦士でも押しつぶされるだろうプレッシャーにシィンは耐えていた。
シィンが待っているのは能力上昇の限界を迎える直前。
その瞬間にのみ不死者の精神に僅かな緩みが生じるはず。限界を迎えたシィンに抗う術はないのだから。
シィンはその一瞬だけを待っていた。
この戦闘に入った時から、ひたすらその一瞬だけを見つめて。
激昂してみせたのも、その一瞬に賭ける隙を生み出すため。
そして、その一瞬は訪れた。
(…フィリア!)
その時、シィンは躊躇うことなく小刀を突き立てた。
不死者はシィンが何か狙っていることは解っていた。
そして、それはおそらく自分の予想外のことだろうということも予想していた。
(…つくづく面白い奴)
今までの何度とない闘いの中で、そのことは十分に理解していた。
(No.32、成功例となるならこいつだろう…)
故に、シィンを嬲りながら、不死者は密かに愉しみにしていた。
何時、どのような攻撃を自分に加えてくるのか。
そして、その一瞬、確かにシィンは不死者の予想を超えた攻撃を仕掛けてきた。
シィンが狙っていた瞬間。
そう、シィンの能力上昇の限界が来る直前。
シィンは確かに不死者に一撃を加えた。
フィリアの身体ごと。
その一瞬、その場はまるで時間が凍り付いたかのように全ての動きが止まった。
カイト達は目を疑った。
まさか、シィンがフィリアを刺すとは思わなかったのだ。
不死者達の予想も超えていた。
シィンの性格から考えて、自分に敵対していない女性を刺す、というのはさすがに思考の埒外だった。
フィリアはその瞬間、一番最初に感じたのは灼熱のような温度だった。次に自分の腹部にある異物感。痛みを知覚したのは一番最後だった。
誰もが動きを止めた瞬間、シィンは更に予想外の行動に出た。小刀から手を離すと、右手でフィリアを抱きかかえ、空いた左手で、そのまま不死者の顔面を殴りつけたのである。
どうやら闘気を纏わせたらしいその一撃は、さしもの不死者をも2,3歩後じらせた。 必然的に不死者の腹から抜ける小刀。
フィリアの身体ごと、シィンはそのまま距離をとった。
-まさか、あのような真似をするとは、な。-
=さすがに予想できん。=
いつの間にか2人の不死者は、部屋の反対側にいた。
-やはり、第2段階で正解だったか。-
=予想以上の伸びだ。=
-では…-
=今回はここまでだな。=
そして、シィンの方を一瞥すると、そのまま消えた。
もう、其処には不死者が存在した痕跡すらなかった。
※シィンの最後の一撃は闘気術。闘気術とは、格闘術の一種。ザンデア大陸で盛んに学ばれている流派である。習得は非常に難しいが、極めると素手で武器を持った戦士と同等の攻撃力を発揮できる。また闘気は生命力を転化するため、不死者に対しても効果がある。
結局かっこよく戦闘描写できなかった。
文章力欲しい。




