<二十五>
戦闘前半です。
その場所は闘争の舞台であった。演目は2組の踊り手達が舞う死の舞踏。対価はお互いの命。舞踏が終わるとき、何れかの命の輝きは消えることになる。
シィンとアルフォード、ビロウズの闘いは、例えるなら「静」であろう。
相手の死角に潜り、攻撃をかわし、流し、剣を振るうアルフォード。
大技に頼らず、必要なときに必要な術を的確に使うビロウズ。
そして、その2人の弟子であり、相手の手の内をよく知るシィン。
両者の闘いは自然、相手の出方を探り、予測し、間合いを計る、そんな闘いになっていった。フェイントに次ぐフェイント。時にで相手の足を払い、魔法で動きを止める。
と思うと、睨み合ったまま互いに動きを止める。
それは、静かで激しい闘争だった。その場にあるのは互いの呼吸音と、時折唱えられる呪文。すぐ側で行われているもう一つの戦闘の激しい物音も、まるで聞こえていないかのようだった。
いや、事実聞こえていなかったのだろう。それほど両者は戦闘に集中していた。
客観的に見てシィンの戦闘力は驚嘆に値した。二つ名持ちであるアルフォードとビロウズを相手に互角に戦っているのである。これは個人の能力で比べれば、シィンがアルフォードもビロウズも上回っていることの証でもあった。
(シィンがこれほどとは…)
アルフォードもビロウズも心の中で舌を巻いていた。
弟子として鍛えてきた以上、ある程度その実力は理解しているつもりだった。
しかし、実際は想像を超えていた。
身体能力もさることながら、時折交えてくる古代魔法や見知らぬ闘技。自分たちが教えたことのない技術まで使ってくる愛弟子の姿は、確かに自分たちを超えていた。
(それでも、勝たねばならん。)
魂に刻まれた呪いがそれを強要する。
囚われたフィリアの存在がそれを訴える。
負けるわけにはいかない、その思いがアルフォードとビロウズの胸に、ある決意を芽生えさせていた。
カイト達とゴレームとの闘いは「動」であった。
圧倒的な力で敵を粉砕しようとするゴーレム。その動きも決して遅くはない。しかも、鋼でできたその身体は生半可な攻撃は弾いてしまうのだ。
それに対しカイト達はパーティとしてのチームワークで対抗した。
ゴーレムに対して有効な攻撃法を持たないケイトとファーサイトが牽制役。
メイスに武器を持ち替えたカイトとシャリーの魔法で攻撃役。
グレンは攻撃の補助と回復役。
瞬時にアイコンタクトで役割分担した後、ゴーレムとの戦闘に入った。
ケイトとファーサイトが互いの位置を瞬時に入れ替えながら挑発し、ゴーレムの標的を絞らせない。
カイトはゴーレムの注意がそれている隙に魔力附与されたメイスをゴーレムの足に叩きつける。
上がる金属音。
自分を攻撃したカイトに反撃しようとするゴーレムに、今度は側面から魔法の矢が突き刺さる。思わずのけぞるゴーレム。
すかさずグレンがゴーレムの右足首にバトルアックスの一撃を見舞う。
と同時に、ケイトとファーサイトがグレンが追撃されないよう、再び挑発を始める。
翻弄されるゴーレム。
戦闘の流れは「風追い人」のパーティが握っているようだった。
しかし、それは綱渡りのようなバランスだった。
少しでも攻撃が擦れば、ケイトやシャリーあたりなら即座に致命傷になりうる攻撃。
叩いても、魔法を打ち込んでもなかなかダメージを受けない鋼の身体。
少しでもタイミングが狂えば、逆に「風追い人」が追いつめられてしまう。
ゴーレムを破壊するのが先か、自分たちの体力が尽きるのが先か。
これはそういうデッドレースだった。
(サーヴァントとやり合って、夜の森の走破、そしてゴーレムとの戦闘…)
全体を見ているシャリーには、その危うさがパーティの誰よりもわかっていた。現在の「風追い人」はスタミナを消耗しすぎている。
(このままでは、負けるかも知れない…。)
何か、何か決定打は無いものか、必死で探りながら呪文を唱えるシャリー。
その切っ掛けは思いがけない方向からもたらされた。
切りがいいので、まずはここまで。
続きもできるだけ早く投稿します。




