第二十八話 起源
次の攻撃が再び始まる。
九体の傀儡が同時に拳を振り上げた。
エイノはその動きを食い入るように見つめる。
一体、二体、三体――。
その瞬間、エイノの瞳孔が大きく収縮した。
すべての傀儡の拳が空中で止まった――その瞬間。
一体の傀儡だけが、真っ先に拳を振り下ろした。
続いて、残りの八体がほぼ同時に後を追う。
「こいつだ!」
エイノはすぐに手を伸ばし、その傀儡の顔へ素早く魔力の印を刻み込む。
これで、他の三人にもはっきりと見分けがつく。
「こいつだな!」
カイロスが興奮した声を上げ、前方に立ちはだかる傀儡を勢いよく蹴り飛ばす。
その勢いのまま、印を刻まれた傀儡へと真っ直ぐ飛びかかった。
デックもすぐ後に続き、巨大な剣を振り上げて横薙ぎに振り抜いた。
キィン――。
迫り来る他の傀儡たちを退け、カイロスの行く手を阻む傀儡たちを退ける。
鉄震も素早く前へ出る。
迫り来る鉄拳を身体を横へ逸らしてかわし、カイロスの隣へと駆け寄った。
「押さえろ! 俺がやる!」
鉄震はすぐにしゃがみ込み、片手で傀儡の顔を強く押さえつけ、魔力を注ぎ込んだ。
ヴゥン――。
魔法陣が瞬時に輝きを放つ。
しかし今回は、先ほどの傀儡とは魔力の流れが明らかに違っていた。
(やはり……こいつはさっきの奴よりも制御が難しい。)
鉄震はすぐに魔力をさらに強く注ぎ込む。
黄金の光が瞬く間に膨れ上がり、大広間全体が激しく揺れ始めた。
その傀儡もまた激しくもがき始め、鉄拳をカイロスの顔面めがけて真っ直ぐ振り下ろした。
「カイロス!」
エイノが後ろから叫ぶ。
「大丈夫! 俺のイケメンフェイスは健在だ!」
(そこ、心配するところじゃないだろ……。)
カイロスは身体を後ろへ反らして鉄拳をかわすと、そのまま傀儡の上に跨り、両足で傀儡の両腕をそれぞれ踏み押さえた。
魔法陣の光がますます強くなる。
しかし、それに伴って傀儡の抵抗も激しさを増し、カイロスは今にも振り落とされそうになった。
鉄震の腕が、かすかに震え始める。
(あと少し……)
その時、エイノも魔法陣の変化に気づいた。
「鉄震さん! 核心です! そこに魔力を集中させて!」
鉄震はその言葉を聞くと、すぐにすべての魔力を核心へと集中させた。
ヴゥン――!
魔法陣の中央から、まばゆい光が一気に弾け飛んだ。
傀儡もまた、その瞬間にぴたりと動きを止めた。
カイロスは呆然と目の前の傀儡を見つめる。
「と、止まったのか?」
鉄震はすぐには答えなかった。
それでもなお、傀儡の顔に浮かぶ魔法陣を強く押さえ続ける。
魔法陣の中を流れていた魔力が完全に止まったことを確認してから、ようやくゆっくりと手を離した。
「……成功した。」
その言葉が落ちると同時に――
大広間の反対側にいた八体の傀儡も、一斉に動きを止めた。
振り抜かれていた鉄拳が、空中で静止する。
次の瞬間、すべての傀儡の魔法陣が一斉に消える。
重々しい巨体が、一体、また一体と倒れ込んでいく。
ドォン! ドォン! ドォン――!
凄まじい轟音が、大広間に次々と響き渡った。
やがて、百鍊塔の大広間は再び静寂に包まれた。
カイロスはゆっくりと傀儡を押さえていた手を離し、足元で完全に動かなくなった傀儡を見下ろす。
「本当に……全部止まったんだ。」
デックも巨大な大剣を収め、長く息を吐いた。
「ようやく終わったな。」
その時――
大広間の奥から、突然、重々しい音が響いた。
ドォン――。
全員の視線が一斉にそちらへ向く。
何もない、滑らかな壁面に、ゆっくりと亀裂が走っていく。
続いて壁が左右へとゆっくり開き、その奥から隠されていた入口が徐々に姿を現した。
「扉……?」
見覚えのある人影が、扉の向こうからゆっくりと姿を現した。
「エイラ!」
エイラは顔を上げて皆を見渡し、最後にエイノへと視線を向ける。
そして、ゆっくりと手を掲げた。
固く握りしめていた手のひらを開くと、そこには一つの星が静かに収まっていた。
「試練に合格したんだな!」
エイラは小さく頷くと、星をエイノに手渡した。
それから鋼心の隣へ歩み寄り、何も言わず、静かに彼女を癒し始めた。
「これは何だ?」
鉄震は星を見つめ、怪訝そうに尋ねた。
「試練に合格した証の星だよ。地王が、夜が明ける前に各族の誓いの台へ返すようにって。」
「試練? 誓いの台?」
鉄震とデックが同時に声を上げる。
二人は、そんな話をまったく聞いたことがなかった。
「僕も知らない。」
エイノは首を横に振った。
「地族が星をセリヴァに渡した後、僕はそのまま転送されちゃったから。」
「俺もだ。」
カイロスも続けて頷いた。
「私も探してみた。」
背後から突然、鋼心の声が聞こえ、全員が一斉に振り返る。
そこには、エイラの腕の中に横たわる鋼心の姿があった。
先ほどまでの弱々しさはすっかり消えているというのに、彼女はいつまで経っても起き上がろうとしない。
「いつまでエイラに抱かれてるつもりだ?」
カイロスが真っ先に口を開く。
「気持ちいい。」
鋼心は当然のように答え、そのままエイラの腕の中に横たわっている。
エイラも、特に急かそうとはしなかった。
「はぁ……」
カイロスの口元がわずかに引きつる。
鋼心は気にする様子もなく、目を閉じてその心地よさを存分に味わっていた。
しばらくして、ようやく身体を起こした。
「戻ってきてから、私も探してみた。行こう。」
そう言うと、鋼心はようやくエイラの腕の中から立ち上がり、身体についた埃を軽く払った。
皆もそれぞれ身なりを整えると、大広間の外へ向かって歩き出した。
「それで、誓いの台ってどこにあるんだ?」
カイロスが尋ねる。
「『力は始まりの大地より生まれ、誓いは聖地へと帰る。』これは本の中で何度も出てくる一節よ。」
鋼心は歩きながら、鞄の中を漁っていた。
「力は始まりの大地より生まれる?」
カイロスは疑問に思ったように首を傾げる。
「うん。たぶん、それぞれの種族の力が最初に生まれた場所を指しているんだと思う。」
鋼心は鞄の中から、潰れて平たくなった棒付きキャンディを取り出した。
「あ……潰れてる。」
「金族は百鍊塔じゃないのか?」
「違う。」
鉄震が突然口を挟み、言葉を引き継いだ。
「木族は緑耀神樹、炎族は炎山、水族は星湖宮、地族は地宮。そして金族の起源は――安魂墓所だ。」




