第十六話 新たな道
地道の入口では、駐留する地衛軍の兵士たちが慌ただしく行き来していた。
そのとき、一人の地衛軍の兵士が、封鎖された洞窟の入口の前に一人の大柄な男が立っているのをふと目にした。
立ち退きを願おうと歩み寄りかけた時、相手の胸元で金色に燦然と輝く徽章が目に入った。
その瞬間、兵士は即座に片膝をつき、頭を垂れた。
「地王様!」
セリフェルはただ静かに頷くだけで、何も答えなかった。
セリフェルは振り返り、崩れた岩で埋め尽くされた地下道へと視線を向けた。
そして静かに手を掲げると、結界が地下道全体を包み込んだ。
「本日をもって、この地下道を封鎖する。」
「はっ!」
四人は封鎖された地下道を見つめていた。
カイロスは懐から依頼書を取り出したものの、何か言いたげに口を開きかけ、結局はその言葉を飲み込んだ。
セリフェルは肩を落とした四人を見渡すと、少し考え込んだ末に口を開いた。
「……すまない。」
四人は呆然としたまま顔を上げ、セリフェルを見つめた。
「依頼は……私のせいで。」
「い、いえいえ! そんなことありませんよ!」
エイノは慌てて両手をぶんぶんと横に振った。
「それに、A級魔獣を一体倒して、ゼラチン質も少し回収できましたし! これだけでも十分売れますよ!」
カイロスは笑いながら、背中に掛けたバッグを軽く叩いた。
セリフェルは二人のもとへ歩み寄ると、エイノとカイロスの肩をぽんと軽く叩いた。
そして、どこからともなく一つの袋を取り出し、二人へと差し出した。
転送装置を起動し、四人を中央神殿へと転送した。
「ちょっ、待って――せめてお別れくらい言わせてくださいよ!!」
そう叫ぶ間もなく、四人の姿は転送の光に包まれ、その場から消えていった。
セリフェルはその場に静かに立ち尽くしていた。
やがて、遅れて駆けつけた長老が彼の傍らまで歩み寄り、恭しく腰を折る。
「地王様、ご無事なお姿を拝見できて何よりでございます。先ほど、あなた様のご遺体が――……いえ、お身体が見つからなくなったとの報せを受け、皆がどれほど動揺したことか……。」
何もない空き地を静かに眺めていたセリフェルは、「ご遺――」という一言が耳に入った瞬間、無言で長老へと視線を向けた。
その視線を受けた長老は、背中を冷たい汗がつうっと流れるのを感じた。
――今この身から流れている冷や汗だけで、この地下道を水浸しにできるのではないか。
そんな馬鹿げた考えが、思わず頭をよぎった。
「ああ、目が覚めた。」
長老は、セリフェルの話し方にはとっくに慣れきっていた。
寡黙で、しかも話が噛み合わない――それこそが、セリフェルの特技なのだから。
だが、この二つの特技が同時に発動することは滅多にない。
そのせいで、長老は今、内心かなり焦っていた。
――助けてください。
――かなり急ぎです。誰か、今すぐお願いします!!
「戻った。」
セリフェルはそう告げた。
しかし、長老は何も答えなかった。
不思議に思ったセリフェルは、もう一度口を開いた。
「あっ! そうでした! 地王様はなぜ昏睡状態に陥られていたのですか?」
「魔力を取り戻した。」
(よかった……話が噛み合ってない。いつものセリフェル様だ。……で、私はどう返せばいいんだ?)
長老の全身から流れる冷や汗は、さらに勢いを増した。
――まずい。
本当に、どう返事をすればいいのか分からない。
四人は転送されると、視界が一面の白い光に包まれた。
やがて眩しさが薄れ、視界が戻ると――
彼らはすでに中央神殿の大広間に立っていた。
中央神殿の内部は荘厳にして神聖な空気に満ちていた。
高くそびえるステンドグラスから陽光が降り注ぎ、純白の大理石の床には、色とりどりの光が幻想的な模様を描き出している。
神殿全体は純白の大理石で築かれており、大広間だけでも、五人が手をつないでようやく抱えられるほどの太さを持つ巨大な石柱が十本、天井を力強く支えていた。
その壮麗なドーム状の天井は、五つの種族を象徴するステンドグラスによって彩られ、差し込む陽光を受けて神々しい輝きを放っていた。
四人は突如として大広間の中央に姿を現し、その場にいた神官や冒険者たちの視線を一斉に集めた。
彼らは何事もなかったかのように服についたはずのない埃を軽く払うと、平然とした足取りで神殿を後にする。
もっとも、よく見れば――
エイノだけは落ち着かない様子で、きょろきょろと辺りを見回していた。
中央神殿をこの目で見るのは、彼にとってこれが初めてだったのだから。
四人は神殿前の広大な広場を横切り、中央通りを進みながら光明市集を抜け、魔法師ギルドへと向かった。
「あ~あ、結局、魔力金鉱石を一つも採れなかったなぁ! 本当にもったいなかったなぁ!!」
カイロスは大きく伸びをしながら、名残惜しそうに嘆いた。
「次の依頼では、もうこれ以上トラブルが起きないといいわね。」
エイラは隣を歩きながら、淡々とそう答えた。
後ろを歩いていたコウシンは、何かを思い出したように隣のエイノへ視線を向けた。
「そういえば、あのときセリフェルさんと二人で、何か話してたの?」
「ん?」
エイノは一瞬きょとんとすると、少し記憶をたどってから答えた。
「うーん? 試練について説明してくれたくらいかな。それから……昔、自分も試練を乗り越えたことがあるけど、次の日の夜明けまでに星を各種族の誓いの台座へ返しに行けなくて、結局間に合わなかったって言ってたよ。」
前を歩いていたエイラは、不意にある言葉が引っかかった。
足を止めると、ゆっくりと振り返り、エイノへと視線を向けた。
「ちょっと待って。各種族の誓いの台座って……もしかして、この試練はどの種族にもあるってこと?」
コウシンも何かに思い至ったように、ぱんっと両手を打った。
「そうだ! 前に言ってたよね! 『五つ目の星が輝く時、光明神は再び帰還する』って。つまり、星は全部で五つあるってことだよね!?」
エイノは頷く。
「話を聞く限りだと、その解釈で間違いないと思う。」
四人の間に、しばし沈黙が流れた。
もし本当に星が五つあり、それぞれが五つの種族に対応しているのだとすれば――地族以外の四種族にも、それぞれ固有の試練が存在することになる。
だが、問題はそこではない。
そもそも試練がどのような条件で発動するのか、誰にも分からなかった。
今回、地族でなぜ試練へ導かれたのかさえ、彼らにはまだ見当もついていないのだから。
「まあ……そのうち五つの星を全部集められるんじゃない? せっかくだし、全部揃えたらどうなるのか試してみようぜ!」
カイロスはどこか楽しげに目を輝かせながら言った。
その言葉に、エイノ、エイラ、コウシンの三人は同時にカイロスへ視線を向けた。
(……考えることが単純すぎる。)




