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⑧スウィートホームご紹介

 【その7】道の駅とパン屋紹介

(内容)畑紹介の続編として大地の作った農産品を売っているところを紹介できないか。


 「こらあ、注目回になっぺ!」意気揚々と大地が腕まくりする。「道の駅紹介だべ! もう、こら俺のスウィートホームと言っても過言ではねえ! おめえら付いてこい!」

 そう言って大地は三人を引き連れていく。

 店内に入るなり、「大地でねえが!」満面の笑みを称えた壮年の店長がやってくる。

 「どうした? さっき完売のメールさいったべ? 今日も昼前には梨完売してっと」

 「来たべ。いづもありがとう。今日は道の駅紹介の動画さ撮りに来た」

 「ほが、いぐらでも見てげー」

 大地はそう言って空になった棚を見せる。

 ポップには「平野大地さんが作りました」という言葉と共に、梨畑で脚立に乗って枝の剪定をしている大地の写真が添えられている。

 「見ろ、これ。俺が作ったって書いてもらってんだ。おかげでまいんち梨完売だ」

 「こっだの貼ってもらってんのか」ルアンが目を丸くする。「おめ、有名人でねえが!」

 「こっちも見ろ!」そう言って大地は意気揚々と米のコーナーへと案内する。

 そこにも田んぼで、実った稲を抱えながら笑みを浮かべる大地の写真と共に、同じく「平野大地さんが作りました」と書かれたポップが置かれている。

 「こっちも『平野大地さんが作りました』ってあっぺな」ルアンが大地の肩を叩いた。

 「こっちのルッコラも、こっちのピーマンも、こっちのキュウリもモロヘイヤも、全部『平野大地さんが作りました』だべ」

 「すげえでねえか!」ルアンは驚嘆した。

 「大地の作ったモンは売れ行きよぐでな。特に梨は並べた先から売れてぐ。土日になっと開店前から並んでる人もいんだ。大したもんだべ」店長が腕組みをしながらしきりに頷く。

 「売り切れっとメールが来る仕組みだべ。今日何個売れました、売り上げはいくらですってな」

 「ハイテクでねえか」ルアンは素直に瞠目した。

 「でも米作りは父ちゃんでねえが」大河が首をかしげる。「米んとこは『平野大作さんが作りました』、が正解でねえのが?」

 「だいだ、父ちゃんはもう押しも押されぬおっさんだかんな」

 ルアンが噴き出す。

 「おっさんの写真乗っけても売れねべ。やっぱ俺ぐれえ若々しいフレッシュな人でねえど」

 「おめ、フレッシュだったのが……」ルアンがぼそりと呟く。

 「それに俺も田んぼも手伝ってるしな。あながち嘘ではねえべ」

 「……ちょっとグレーな部分もあるようです」大河がこっそりカメラに語り掛ける。

 「でも、美味しいことには変わりはないです。ぜひお近くに立ち寄った際には買ってっでください」

 

 「さて次は……」大河がそう言いかけた時、そわそわしていた朱里がスマホの画面を見せつける。

 ーー私も紹介したい

 「何を紹介すんで?」

 ーー粉とクリーム

 「へえ」

 下妻で一番有名と言っても過言ではないパン屋である。朱里も幼少時からずっと親しんできたし、他三人も同じである。おそらく食べたことがないという下妻市民は一人もいないだろう。

 「たしかに、下妻一有名なパン屋だべ」大地は頷く。

 朱里の要望で今度は四人は粉とクリームへ向かった。

 カランコロン、と涼し気な鈴の音を鳴らしながら店内へ入っていくと、朱里は真っ先にケーキやパイの所狭しと並んだガラスケースへと向かった。

 スマホを大河に見せる。

 「ええと、……これが、朱里の大好物のチェリーパイだそうです。うーんと、……世界一美味しいって言ってます」

 「あ、こら何だべ!」ルアンがレジに貼られた色紙を発見し、指さす。

 ーー粉とクリームさんへ 世界一美味しいチェリーパイをありがとう IN YOUR FACE 朱里

 しかも丁寧にチェリーパイのイラストまで描かれている。

 「おめのサインでねえべが!」

 「何でこっだのあんだべ!」大地も驚嘆した。

 ーー先週色紙お願いされた

 朱里は嬉しそうにスマホにそう入力して見せる。

 「すげえべ……」ルアンは素直に感嘆した。「これ自慢したかったのか」

 「たしかに朱里はここのチェリーパイ昔っから大好きだべ。でも人気商品だかんな。昼前に売り切れっちまうこども多い。そうすっどバンドの練習終わった後だと買えねぐで、がっかりしてっこともあんだ」大地が説明を加えた。

 ーー昨日はおじいちゃん連れてきた

 「色紙自慢するためにが?」

 朱里は当然とばかりに大きく頷く。

 ーー一チェリーパイも買えた 昨日はママ その前は珠子さん(注:家政婦の名)

 「ほっだに毎日連れて来てんのが?」

 ーー貼られてから初めに連れてきたのはパパ 五日連続チェリーパイ買った

 「とんだ中毒患者だべ」ルアンがそう言って目を丸くする。

 ーー毎日おいしい

 「そら、……いがっだな」大地がぼそり、と呟いた。

 「朱里の大好きなチェリーパイの紹介でした。お店には朱里の色紙も飾られています。お近くに来た際には見でいってください」大河はカメラにそう呟いた。


コメント欄

ブラジル

「He's introducing the grocery store like it's his castle. 」

(城でも案内するみたいな勢い(笑)。)


イギリス

「Farmer pride. I love it.」

(農家としての誇りが伝わってくる。)


フランス

「I suddenly want those pears.」

(急に梨が食べたくなった。)


アメリカ

「THE PHOTO!!!」


韓国

「He's literally a local celebrity.」

(完全に地元スターじゃないか。)


セネガル

「I wasn't expecting merch...…It's vegetables.」

(グッズじゃなくて野菜だった。)


カナダ

「How many things does this guy grow??」

(何種類育ててるんだ(笑)。)


韓国

「Justice for Dad 」

(お父さんにも正義を(笑)。)


アメリカ

「Poor Mr. Hirano」


スウェーデン

「This man has unlimited self-esteem.」

(自己肯定感が無限。)


エジプト

「Taiga trying to fact-check him 」

(大河がちゃんとツッコミを入れてる。)


台湾

「She looks happier than during concerts.」

(ライブ中より嬉しそう。)


ノルウェー

「WAIT SHE HAS A SIGNATURE BOARD??」

(サイン色紙あるの!?)


ベトナム

「She looks so proud 」

(誇らしそう(笑)。)


カナダ

「The cherry pie drawing makes it even better.」

(チェリーパイのイラスト付きなのが最高。)


ベルギー

「She's making every family member visit the bakery 」

(家族総出で見に行ってる(笑)。)


アルゼンチン

「Next week, the neighbors.」

(来週は近所の人だな。)


チリ

「This is the cutest celebrity behavior I've ever seen.」

(こんな可愛い有名人気質は初めて見た。)


オーストリア

「Dad had to see it first.Obviously.」

(お父さんが最初なの、なんかいいな。)


ドイツ

「Her father was probably more excited than she was.」

(お父さんの方が喜んでそう。)


イタリア

「At this point the bakery should sponsor the band.」

(もうパン屋がスポンサーになっていい。)


オーストリア

「Travel checklist:

✔ Buy Daichi's pears

✔ Find Syuri's autograph

✔ Eat cherry pie」

(旅行チェックリスト完成。)


ポルトガル

「Forget Tokyo.I'm going to Shimotsuma.」

(東京じゃなくて下妻へ行く。)


フィリピン

「Every episode makes me want to visit more.」

(動画を見るたびに行きたくなる。)


スイス

「One member proudly shows the vegetables he grew. Another proudly shows the pie she loves. Neither of them is trying to advertise themselves—they're just genuinely happy to share the places and people that matter to them. That's why this channel feels so different from most band channels.」

(ひとりは自分が育てた野菜を誇らしげに紹介し、もうひとりは大好きなチェリーパイを誇らしげに紹介する。どちらも自分を売り込もうとしているのではなく、本当に大切な場所や人を紹介したいだけ。その自然さが、このチャンネルを他のバンドチャンネルとは違うものにしている。)

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