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③ルアンは何人?

(内容)外国人の風貌のルアンに、その出自はどこかと興味を持つファンは多いはず。そこをアピールするような動画を作ったらどうか?


 ルアンの母親は日本にいた頃はベトナム料理店を営んでいて、ルアンはその手伝いもしていた。家では弟妹のためにご飯を作ってあげることも度々あったために、ベトナム家庭料理は一通りできる。得意でもある。

 昨今ベトナムのサンドイッチとも言われるバインミーが流行していることもあり、ベトナム料理教室回を配信することとなった。アシスタントに立候補したのは、珍しくも朱里。しかし料理の経験は皆無である。家には専業主婦の母に加え、家事全般において有能な家政婦さんもいることから、包丁すら握ったことがない。

 「今回は俺のベトナム料理教室だべ! よぐ聞かれますが俺はベトナム人です。ほんで今日作るのはベトナムのサンドウィッチと言われるバインミーです。バインミーって言ってもな、正直色々ある。まあ、一言でいえば何でもありのベトナム風サンドウィッチってとこだべ。だから、家で余ったおかずがあらあ何でも作れんだ。今日は、豚肉とエビのバインミーを作るごどにする。こら、一番美味ぇかんな」

 凛々しくも腰巻エプロンを付けたルアンがそう語る。その隣でフリル満載のエプロンを装着した朱里が興味津々と言ったように、食材を覗き込んだ。

 「アシスタントは朱里です。今日は手伝いさしでもらいます。まずは、エビを茹でて殻剥いてくろ」

 朱里は心得顔に頷く。

 さっそく鍋に水を張り、そしてコンロの上に置く。じっと見る。

 「おめ、火点けねどあっためらんねえべ」

 朱里はきょとんとルアンの顔を見上げる。

 「火点けろって」

 メモに書く。

 ーー点け方わからない

 ルアンは目を丸くする。

 「おめ、いぐら料理やったこどねえにしても程があるべ!」

 しゃあねえなあ、そう言ってコンロの火を点けてやる。

 その間にルアンは手慣れた動作で人参と大根をみじん切りにし、レタスを洗い、油だの塩だの、レモン汁だのを入れたお手製ドレッシングを作り上げた。

 「量はいづもは適当だけど、よぐ計ってみたらこんな感じになりました」そう言ってルアンはメモをカメラに突きつける。

 「後で、概要欄に書いておくべ」カメラの向こうで大河が言った。

 「早く食いてえなあ」大地がほくほく顔で二人を見守る。

 湯が沸く。朱里がエビを一つ一つつまみながら投入していく。なぜ一匹ずつなのかと不思議に思いつつも、ルアンは今度は豚のロース肉への味付けをしていく。

 「玉ねぎとにんにく、こいづをみじん切りにして、ソースを絡めていきます。これはベトナムではよく使うマム・トムっつう味付けするやづな。エビ入れるならこれがいいんだけど、あんまここいらじゃ売ってねえかもしれね。そん時はニョクマムとか、ナンプラーでもいいけど、慣れねえうぢはちっとだけにしといた方がいいです。クセがあっから、日本人では苦手だっつう話もよぐきぐ。……おい、湯だったべ」

 赤くなったエビを見てルアンが言う。

 ーーどうするの? とでも言うように朱里はルアンを見上げる。

 「ざるだべ、ざる」

 そろそろ朱里が戦力にならないどころか、何もかもにおいて足を引っ張ってくる存在であることを確信する。

 ルアンは朱里に両手でざるを持たせ、そこに湯を流してやる。

 「エビを水で冷やして、ほしたら殻剥きだべ。包丁使わねからできっぺ」

 朱里は頷く。

 その間にルアンは味付けの終わったロース肉をフライパンに並べ、焼き始める。

 じゅうじゅうと美味しそうな音が鳴る。「美味そうだべ!」大地が身を乗り出す。

 「そら、美味いべよ。カスミ(注・スーパーの名)で一番いい肉買ってきたかんな!」ルアンが自慢げに言った。

 「食材は人参と大根はうぢで育てたやづ。あとの肉とかはさっきカスミで買ってきました」大河が説明を入れる。

 「おい!」ルアンの絶叫が響いた。「何やってんで、おめはー!」

 朱里の手からエビを奪い取る。

 「なんだべこら!」

 朱里はびくり、と肩を震わせる。

 「ほとんど千切っちまって! 肉が残ってねえべよ、もったいねーべ!」

 朱里は泣きそうな顔でルアンを見上げる。

 「ここも食える! 頭んとこここも、尻尾ギリギリのここも!」

 ーーそうなの? と言わんばかりに朱里は目を丸くする。

 「あははは!」大地が腹を抱えて笑う。

 「笑いごとであんめよ! エビ、腹んとこ、ちーっとしか残さねで! エビにごめんなさいしろ!」

 朱里は素直にエビに頭を下げる。

 「こうだべ、こう」ルアンがそう言って殻だけを器用に剝がす。つるりときれいにぷりぷりとしたエビの肉が残った。

 朱里はほお、とため息をつく。

 「しょうがねえべよ。砂沼でエビ捕れねえんだから」大地が妙なフォローを入れる。

 「そういう問題でねえべ」ルアンが呆れたように言った。

 ロース肉の焼けたいい匂いが漂い始める。

 「よし、できだべ。最後に具材をパンに挟んで完成だべ」

 ルアンはそう言って手際よくパンを真ん中で切り、そこになますと豚肉、そしてエビを挟んでいく。

 一つ、二つ、三つ、四つと完成させてそれぞれ皿に盛る。

 「美味そうに出来上がりました」大河が言った。

 「それではみんなで食ってみんべ」大地が早速手を伸ばす。

 『いただきます』

 四人は一口を頬張って、すぐに感嘆してみせた。

 「美味い!」と大地。

 「うんうん、この肉のタレの味なんとも言えねーべ」大河も讃嘆してみせる。

 「ほだっぺ。こら、うぢの味だ。母ちゃんから仕込まれた味だべ」

 朱里も頷きながら満足そうに食べた。

 「美味しいバインミーが完成しました。ぜひ皆さんも作ってみてください」大河がそう言って締めた。

 これはアップした当初からなかなか人気の高かった回である。

 ルアンファンが普段とは違った姿に惚れ込んで、何度も見返したものと見える。

 しかしヴァッケン終了後、海外の朱里ファンによってさらに視聴回数が爆増する。


 コメント欄


ベトナム

「やっとルアンのルーツを知れた!」


アメリカ

「ずっと気になってた。こういう話を本人から聞けるのは嬉しい。」


フランス

「自分の家庭の味を紹介してくれるのって素敵だ。」


スイス

「え、プロレベルじゃない?」


カナダ

「料理動画として普通にレベルが高い。」


イギリス

「ライブではブラストビート。キッチンでは包丁さばき。」


ドイツ

「Wait...SHE HAS NEVER TURNED ON A STOVE?」

(コンロを点けたことがないの!?)


ノルウェー

「This explains so much about her.」

(なんだか今までの朱里の雰囲気に納得した。)


韓国

「She's not pretending.She genuinely doesn't know.」

(演技じゃない。本当に知らないんだ。)


日本

「ルアンの絶叫で飲み物吹いた。」


日本

「『エビにごめんなさいしろ』←今日一番好きなセリフ。」


ブラジル

「She apologized to the shrimp.I'm crying.」

(本当にエビに謝った(笑)。)


チリ

「彼女が素直に頭を下げるのがかわいすぎる。」


ベトナム

「お母さんの味を大切にしてるのが伝わってきて嬉しい。」


中国

「She never argues.She just keeps trying.」

(言い返さず、一生懸命やろうとしているのがいい。)


オーストリア

「When she apologized to the shrimp,my heart melted.」

(エビに謝ったところで心を撃ち抜かれた。)


アメリカ

「She has probably never needed to cook.But she clearly wants to help him.That's sweet.」

(今まで料理をする必要がなかったんだろう。でもルアンを手伝おうとしているのが微笑ましい。)


台湾

「ルアン、怒ってるようで、ちゃんと教え直してる。」


フィリピン

「料理になると完全にお兄ちゃん。」


ギリシア

「母親から受け継いだ味を誇りに思っているのが伝わる。」

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