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子どもって、“愛された分”だけ優しくなるのかも

運動会の翌日。


家の中は、ちょっと静かだった。


……いや。


正確には。


子どもたちは元気。


僕だけボロボロだった。


「いたたたた……」


階段を降りるたびに悲鳴。


太ももが終わってる。


唯ちゃん、朝から大笑い。


「筋肉痛すごいね」


「昨日の転倒ダメージも入ってる……」


優月なんて、完全に面白がってる。


「ぱぱ、おじいちゃんみたい!」


ひどい。


結愛まで真似する。


「よいしょー!」


腰曲げて歩いてる。


演技うまい。


その日の夜。


優月が、学校から一枚の絵を持って帰ってきた。


「みて!」


クレヨンで描かれた運動会の絵。


そこには――


転んでる僕。


「やっぱりぃ!?」


しかも。


めちゃくちゃ躍動感ある。


砂煙まで描かれてる。


優月、大笑い。


「ここ、むずかしかった!」


頑張るポイントそこ!?


でも。


よく見ると。


絵の中の僕は、ちゃんと笑っていた。


周りには、笑ってる家族。


応援してる結愛。


手を叩いて笑う唯ちゃん。


その絵を見ていたら。


なんだか、“失敗した瞬間”なのに、すごく幸せそうだった。


僕は笑う。


「いい絵だね」


優月は、少し照れながら言った。


「だって、たのしかったもん」


その言葉が、なんだか嬉しかった。


夜。


子どもたちを寝かせたあと。


僕と唯ちゃんは、温かいお茶を飲みながら話していた。


「優月、本当に大きくなったね」


唯ちゃんが静かに言う。


「うん」


「前は、自分のことでいっぱいだったのに」


今は。


結愛を気にかけたり。


僕たちを笑わせたり。


誰かの気持ちを、ちゃんと見ている。


僕は窓の外を見ながら言った。


「子どもって、“愛された分”だけ優しくなるのかもね」


唯ちゃんは、少し驚いた顔をして。


それから優しく笑った。


「じゃあ、いっぱい愛されたんだね」


僕は頷いた。


本当に。


優月も。


結愛も。


この家の中で、たくさん笑って、たくさん抱きしめられて育っている。


その時。


隣の部屋から。


ドンッ!!


僕と唯ちゃん、飛び起きる。


「結愛!?」


急いで部屋へ行くと。


結愛、またベッドから落ちてた。


しかも寝たまま。


「……ぷりん……」


二人、数秒沈黙。


そして。


同時に吹き出す。


唯ちゃん、笑いながら結愛へ布団をかける。


「夢の九割、食べ物だよね」


僕は、小さな寝顔を見つめる。


優月は静かに眠っている。


結愛は、ぬいぐるみ抱えて寝てる。


その光景を見ながら思った。


きっと。


“幸せ”って。


大きな出来事じゃなくて。


こういう夜を、“帰りたい場所”だと思えることなんだろうなって。


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